ここ一ヶ月、冷しラーメン業界が揺れに揺れている。セブンイレブンが「冷し醬油ラーメン」を発売し、ファミリーマートが「元祖冷しラーメン店」監修の商品を繰り出し、日清食品が「冷しラ王」を誕生させ、そしてこのたび、とうとうローソンが名乗りが上げた。

激震である。もはやこれは奇妙な偶然でもなければ、宇宙から「冷しラーメン波」のようなものが降ってきて、各企業がそれを受信した結果などでもない。流行りそうで流行らない冷しラーメンという開拓地の覇者、それを決する闘争の火ぶたが切って落とされたのである。

2024年7月30日、新たにローソンから参戦した商品の名は「天下一品監修 冷しこってりラーメン」。文字通り、あの有名チェーン店との「コラボ冷しラーメン」である。


前述の激動をつぶさに追い続けてきたほどには冷しラーメン愛好家である筆者は、同時に「天下一品」をこよなく愛するファンでもあった。同商品の発売を知った時、かつてない使命感に身を貫かれた。

あの「天一」の「冷し」とは、一体どんなものなのか。何があろうと確かめなくてはならない。仮に近場のローソンを支える地面が唐突に数十メートルほど隆起して断崖絶壁になったとしても、それを登り詰めて入店するくらいの気概はみなぎっていた。

実際には何事もなく実物を入手できたわけだが、価格は税込697円と少々高めであった。経験上、コンビニで買える冷しラーメンの中では強気な部類に感じる。

とはいえ開封してみると、価格に見合った凝り具合が待ち受けていた。キムチ、鶏チャーシュー、メンマ、煮卵やネギといった豊かな具材たちが並ぶ。

さらに目を引くのが、何やらゼリーのような質感の調味料である。ローソンの公式サイトによれば、これは同店と「天一」が共同開発した「こってりジュレ」というものらしい。あまりに興味深い。ジュレの名前を見ただけで心拍数が跳ね上がったのは生まれて初めてである。

極めつけに、何とも馴染み深い色合いをしたスープがこちらの自制を失わせてくる。冷しラーメンとしては突出した不透明度だが、この濁りこそ「天一」である。「冷し」と言えども、これが無くては始まらない。

そのスープと麺を混ぜ合わせ、具材やジュレを乗せ、調理を終えた筆者は興奮に突き動かされるがままに麺をすすった。そして、うなった。

流石にオリジナルの「天一」ほどの塩気や粘り気はない。しかしそれらの要素が「天一」らしいこってり感は損なわない程度に絶妙に削がれているゆえに、味わいが「冷し」という器に過不足なく収まっている。清涼かつ爽やかでいて、爪痕を残すように濃厚なのである。

鶏ガラと野菜の出汁が溶け込んだスープの仕事ぶりもさることながら、やはり鍵を握っているのは「こってりジュレ」の存在に違いない。

「天一」のゼリー状エキスと表すべきか、スープ以上に旨味が凝縮されたそれはニンニクの風味までも抱え込んでおり、「ひんやりした天一」を演出する上で大いに役割を担っている。他ならぬこのジュレによって、初めて食べた「冷し」に親近感さえ抱かされている。

正直、このジュレ単体でも売ってほしいくらいである。つるりとして歯切れの良い中華麺との相性も抜群だが、そば、うどん、そうめんなどのあらゆる冷たい麺類に振りまいたとしても何ら悪影響はないどころか、振りまいたそばから「天一」が美しく咲き乱れると確信できる。

ともあれ、そうした魔性の存在を含め、本商品は魅力とクオリティをしっかりと兼ね備えているため、自信をもって皆さんにお勧めしたい。筆者と同じく「天一」を愛している方はもちろん、オリジナルの「天一」は重く感じるという方にも是非手を伸ばしてみてほしい。

夏の暑さは例年にも増して激しくなっている。ローソンと「天一」は、そんな「炎天下」においても輝く「一品」を新たに創り出したと言えよう。これからも冷しラーメン業界から目が離せない。

参考リンク:ローソン 公式サイト
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.
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