一時期、有名ラーメンチェーン「天下一品」の「赤い円に白い一文字が引かれたロゴマーク」が、車の運転支援システムに「一時停止マーク」に誤認されるというニュースがネット上で話題になった。

確かに似ている。が、しかしこのマーク、車にとっては接近を阻む記号であっても、「天一」ファンにしてみれば極上の蜜のごとき抗いがたい吸引力を有するものにほかならない。

そういうわけで、筆者はローソンのレンジ麺のコーナーにこのマークがずらりと並んでいるのを目撃した時、思わず商品棚に身体ごと突っ込みそうになった。ついに、とうとう発売されたのである。「天一」のレンジ麺が。

改めて説明すると、2024年2月26日よりローソンは大規模な「天下一品」コラボを開始している。26日午後からは「天下一品監修 こってりラーメン(646円)」が、27日からは「こってり天津チャーハン(592円)」や「からあげクンこってり味(259円)」などが発売されている。

詳しくはローソンの公式サイトを確認してもらうとして、やはり最も注目すべきは上でも触れた「こってりラーメン」だろう。「天一」のカップ麺や冷凍食品は既にリリースされている一方で、レンジ麺だけは産声を上げることなく時が過ぎ、このたび世界初の登場となる。

てっきり「天一」のレンジ麺は現代の技術では実現不可能なのかと思っていたが違った。もっと言えば、「天一」のレンジ麵の登場と人類の火星移住はどちらが先かと心中で賭けを催していたくらいなので、こうして生きている間に誕生に立ち会うことができて嬉しい限りである。

公式サイト曰く、「『天下一品』の監修を頂きながら完成に約1年半を要した商品」とのことだ。ローソンに惜しみない拍手を送りつつ、さっそく筆者は実物を入手し、調理を始めた。無論、購入したものをそのままレンジアップするだけである。


そして完成したラーメンは、見た目においては限りなく「見慣れたこってりラーメン」であった。やや細めの麺と、ポタージュ感のあるスープ。その上に乗るネギ、メンマ、チャーシューも馴染み深い。

さすがに「辛子味噌」や「にんにく薬味」といった調味料は付いていないが、しかしローソン側の気合を十分に窺わせるビジュアルである。肝心の味はどうか。

箸を手に取り、麺をすする。半端に偽ったところで自分も読者の方々も裏切ることになるので忌憚なく書かせてもらうと、美味しいには美味しい。だが今一つパンチが足りないと感じた。そう、あともう一歩が届いていないように思う。

麺に絡みつくスープは「天下一品的」ではあるものの、ざらつくような喉越しを期待していると少し肩透かしを食らう。味わいも旨味豊かながら店舗で出てくるものよりは淡白で、塩味がやや強めだ。例えるなら、とろみのある鶏白湯ラーメンを食べている感覚にも近い。

確実に、筆者の舌に備わった「天一細胞」のドアをノックしてはいる。そのまま中に入ってきて大いに躍動してほしいのだが、ひとしきりノックしたあとに帰られてしまうような、痒い部分の周辺をひたすら掻かれているようなもどかしさがある。

店舗の「こってりラーメン」よりも食べやすく万人受けすることは間違いないとはいえ、「天一」に飢えた「天一」ファンがこれを食べて満足できるかどうかは、正直なところ保証しかねる。筆者と同じく、さらなる濃厚さを求める人が多いのではなかろうか。


と、何だかんだ偉そうなことを書きつつ、気付けばスープをほぼ完飲していた。繰り返しになるが、美味しいという事実は揺るぎない。ローソンに限らず、コンビニのレンジ麺の中でも個人的にはかなり上位に来る。

ゆえに、何だかんだ落胆などはしていない。この際もっと偉そうなことを書かせてもらうなら、気合は伝わってくる商品だからこそ、今後のブラッシュアップに期待していいのではないかと思わされる。いや、きっとローソンの挑戦はここで終わるまい。道半ばのはずである。

より完璧な「天一」のレンジ麺の登場を、密かに楽しみに待つとしよう。それこそ全ての「天一」ファンに、店舗の「こってりラーメン」と誤認されてしまうような、そんな話題性抜群の商品の誕生を。

参考リンク:ローソン ニュースリリース
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.
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