こういう仕事をしていると「芸能界の黒い噂」がどうしても耳に入ってくる。正直あまり興味はないのだが、先日、知り合いの芸能関係者から「今回だけはあまりにも黒い」と相談を受けたので話を聞いてみることにした。
待ち合わせ場所は、東京赤坂のホテルニューオータニ。どうやら芸能界の超大御所から直接話があるらしい。やはりこういう仕事をしている以上、黒い交際は避けて通れないのだろう。こうなったら驚愕の黒い秘密を暴くしかねぇぇえええ!
これまでに味わったことのない異様な緊張感に包まれながら、指定された部屋の前で待っていると……
超大物「待たせたね……」
いや待て待て待て。
松崎しげるさんが登場したんですけど……
ってか、黒過ぎィィイイイイイイイイイ!
・松崎しげる登場
扉から現れたのは “歩くメラニン色素” こと松崎しげるさんだった。「今回だけはあまりにも黒い」とは、松崎しげるさんのことだったのか。たしかに黒い。3月とは思えない肌の色。「常夏のビーチへようこそ」と言われているような気分である。
松崎しげるさんといえば、国内外の音楽祭で受賞の実績を持つ超実力派。年間数多くのステージをこなし「ディナーショーキング」の異名を持つエンターテイナーだ。
・黒い話
一方で、あまりにも黒いため、日本記念日協会から9月6日を「松崎しげるの日」と認定されているのは有名な話である。まさにレジェンド中のレジェンド。想像以上のオーラにビビって立ち尽くしていると……いきなり黒い話が始まった。
松崎しげる「やっぱり僕たちはアグネス・ラム時代でね、小麦色のマーメイドというか、小麦色に憧れ……今、美白が流行っている時代だけど “小麦色の健康的な美しさ” っていうのをもう1回取り戻したいよね」
たしかに小麦色の、いや焙煎後のコーヒー豆のように黒くなりたいものだ。そんな松崎さんは体調を崩すと「もっと黒くなる」という。そんなことより今回は、松崎しげるさんがどうしても伝えたいことがあるらしい。
松崎しげる「今日はいい話を聞かせてあげるよ」
ヤバい。超カッコイイ。
・東京国際音楽祭
松崎さんが向かったのは『東京国際音楽祭』の制作発表記者会見。聞けば、さまざまな音楽ジャンルの国内外のトップクラスが集い、音楽の振興と文化を次世代に継承・普及させるイベントらしい。そんな会見に密着させてもらった。
簡単にいえば「戦後の日本の歌謡界は、このコンサートを見るだけで分かる」という。ちなみに松崎さんの他には、由紀さおりさんや伊東ゆかりさんらも出演予定。音楽祭は2024年5月5日に大田区民ホール・アプリコ大ホールで行われるそうだ。
・松崎しげるさんと音楽
会見の場で松崎しげるさんは、少年時代の音楽との原体験について語った。
「僕が生まれたのは1949年、昭和24年です。紅白歌合戦が始まった年で、白黒の世界をカラーにしてくれたのが音楽だった。とくにアメリカの音楽を聞いた時に、当然ながら色はついてないわけですが……カラーに思えたんですよね」と回想。
「音の刺激を与えてくれた白黒の時代、スパーク・ショーという番組ではミッキー・カーチスさん、伊東ゆかりさん、さまざまなお兄さん、お姉さんが外国語の音楽を日本語に直して教えてくれた。当時は音楽にあふれていたんです」
そして「東京国際音楽祭では、その時代を象徴する歌、シャボン玉ホリデーの『スターダスト』を絶対に歌います」と力強く宣言。音楽にあふれていた黄金時代にタイムスリップできるような歌なのだとか。とてもいい話だ。
「デビューから54年、前立腺をやったり目や耳が悪くなったり、さまざまな変調はありますが、マイクを持つと誰よりも大きくハキハキと歌える。ステージに立っている時は74歳には見えないと思いますよ」
今年は昭和99年、来年は昭和100年……「ステージに立ったら年齢は関係ない。音楽ってそういうエモーションを与えてくれる」と音楽への思いを語った。素晴らしい会見だった。
・会見後
会見後、松崎しげるさんに直接お礼を伝えると……
「僕の役割はね、素晴らしい楽曲を後世に歌い継いでいくことだと思うんですよ。たとえば、僕は坂本九さんの1番いいところを見て育ったんですよね。坂本九さんは幕のギリギリ見えなくなるまで坂本九さんなんです。楽屋に帰っても坂本九さんのままなんですよ」
「すごい先輩はいっぱいいたけど、坂本九さんは自分の大ヒット曲を惜しげもなく一緒に歌おうと言ってくれた数少ない先輩かな〜。そんな九さんの曲も歌い継いでいこうという気持ちになっています」とのことでした。
──そんなわけで、松崎しげるさんの会見に密着した感想は「こういう黒い交際なら最高」の一言。まさに舞台裏でも松崎しげるさんは松崎しげるさんだった。
それがやはり、いつまでも応援され続ける理由だろう。黒さも人柄もレジェンドそのもの。松崎しげるさんが出演する『東京国際音楽祭 奥田宗宏 & ブルースカイ創立90周年記念 “戦後、歌謡曲はジャズだった” 2』は5月5日開催。興味があればぜひチェックしてみてほしい。
参考リンク:東京国際音楽祭 奥田宗宏 & ブルースカイ創立90周年記念 “戦後、歌謡曲はジャズだった” 2
執筆:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.