「猫の手も借りたい」という言葉があるが、猫の手より先に考えるべきは己の足を活用することではないか。そう言わんばかりのPCデバイスがこのたび登場した。その名も「USBフットペダル」である。

サンワサプライより2024年3月6日に発売された本商品をPCと接続すれば、足でPCを操作することが可能になる。備え付けられた3つのペダル型スイッチに、キーボードのキーなどの機能を専用ソフトによって割り当て、PC作業の効率化を図るという代物だ。

価格はサンワサプライのオンラインショップにて5280円と少々高めだが、さっそく筆者は初体験するべく購入することにした。猫の手を借りたいほど多忙というわけでは全くなく、前置きを台無しにするかのように興味本位である。以降よりざっと緩くレビューしていきたい。

実際の使用感を述べる前に、最初に「どんな機能を割り当てられるか」について補足説明しておく。最も需要の高そうな機能から紹介するなら、前出のキーボードのキーがそれに当たるだろう。

例えばペダルに特定のキーの役割を持たせることは当然可能だし、複数キーの同時押し状態、つまりキーボードのショートカットを1つのペダルで再現することもできる。同様に、マウスの左右クリックやホイールクリックの機能を組み込めたりもする。

また、「最大38文字までの英字入力」機能が備わっているのも面白い。さらにはPC音量の設定やマイコンピュータの呼び出しといった、本商品独自のショートカット機能も用意されている。それぞれの機能については、後でもう少し詳しく掘り下げるつもりだ。

実のところ、世の中にはPC用のフットペダルは他にも既に存在しているわけだが、本商品において特徴的なのは「3つのペダルに」「今挙げたような様々な機能を」「専用ソフトによって簡単に」割り当てられる点かと思う。

加えて、割り当てた機能は商品内部のメモリに記憶されるため、一度設定すれば別のPCでもすぐにペダルを使える。割り当てにはWindowsPCが必要で、Macでの使用は保証対象外であることには注意してほしい。

では、ここからは実物に触れてみて抱いた感想を書いていく。まず開封した時点で目を見張ったのが、商品のコンパクト具合だ。

数値上の寸法は幅約37.5cm・奥行14cm・高さ4.8cmとなっている。しかし筆者は数値から実物の寸法を想像することが壊滅的に不得手だったので、実際に相対して「テンキーの無いキーボードと同等かそれ以下」程度のサイズとわかるや、想像よりも一回り小さいことに驚いた。

その小ぶりな本体から直に伸びるUSB Type-Aケーブルを、筆者の手持ちのWindowsPCと接続したのち、専用ソフトを公式サイトからダウンロード・インストールして機能設定を開始する。ケーブルの長さは約1.95mと十分長く、余裕をもって接続できた。

そして機能設定の方だが、こちらも実にスムーズに行えた。やることと言えば「割り当て先のペダル」を選び、「割り当てたい機能」を入力するくらいだ。キーボードのキーを割り当てたいなら該当するキーを押せばよい。開封から設定まで15分もかからなかったと思う。

試しに全てのペダルに「PageDown」キーを割り当ててみたところ、どのペダルを踏み込んでもウェブページが下にスクロールしていくので感動してしまった。そういうデバイスだから当然なのだが、なにぶんPCとは手を介した付き合いが長かったため、あまりに新鮮すぎた。

俗に「銃を乱射することに幸せを感じる人」のことを「トリガーハッピー」と呼ぶらしいが、筆者はあまりの楽しさに危うく「ペダルハッピー」になりかけた。この感覚はフットペダルを初体験した人にしかわかるまい。

ともあれ、購入前は「ペダルの上に足を待機させている間にスイッチが暴発しないか」と心配したりもしていたが、触ってみるとそれも杞憂だった。足の前半分を乗せるような姿勢を取ればスイッチは作動せず、逆に作動させたい時はそのまま足先に少し力を入れるだけでよい。

全ペダルを「PageDown」で埋め尽くしていても実りが乏しいため、今度はスクリーンショットを撮れる「Windows+Shift+S」や、タスクマネージャーを呼べる「Ctrl+Shift+Esc」といったショートカットを割り当てたところ、これらも問題なく機能した。

複数の指を使う必要のあるショートカットを足踏み一発で済ませられるというのは、実際かなり便利である。ついでにかなり爽快である。PC作業だけでなくPCゲームなどでも活かせそうだし、キーボード機能には広大な探究の余地があるように感じる。


一方、個人的に活用が難しかったのがマウス機能だ。大体の場合、マウスクリックをペダルに任せるよりも直接マウスをクリックした方が早いのである。

例えば「PCを使って音楽やグラフィックを制作する際、楽器やペンで手がふさがってしまう」といったケースにおいては役立つ可能性がなくはない。

上では言及していなかったが、あらかじめX・Y座標を指定しておけば、ペダルを踏むことで「マウスカーソルを指定した分だけ動かしてクリック発動」なんてこともできる。

ただ、できるにはできるが、この座標指定が正直泣きそうなほど難しい。どの程度の数値を入力すればどの程度カーソルが動くかを手探りで把握せねばならず、思い通りに操るには相当な修練を要する。一朝一夕で会得しようなどという甘い夢物語は捨てた方がよい。

とはいえ、明確に「扱いが難しく感じる機能」はこれだけである。上で挙げた「英字入力機能」も、一見すると「英字だけならソースコードの入力くらいにしか使い道がないのでは」と思われそうだが、「全角ローマ字入力」時にペダルを踏めば日本語入力も可能なのだ。

例えば「itsumoosewaninatteorimasu」と前もって打ち込んでおき、ペダルを踏んで変換すれば「いつもお世話になっております」と出力される。怒涛のごとく連打すれば「いつもお世話になっております」で文面を埋め尽くすことさえ可能である。

連打したい場面がそんなにあるかと言われると困るものの、よく使う文言を仕込んでおいてペダルで一発出力するライフハックは大いにアリだろう。これも非常に「使い道を考えるのが楽しい」機能だ。

最後に、この商品独自のショートカット機能も忘れてはならない。ペダル2つに「PC音量プラス」「マイナス」を割り振っておくだけでも意外なほど便利である。PCで計算をすることが多い人は「電卓の呼び出し」を設定しておくのもよいだろう。

ちなみに「PCのシャットダウン」や「スリープ」といったショートカットも設定することができるのだが、この「シャットダウン」は本当に問答無用で間髪入れずPCをシャットダウンさせるため、ペダルをうっかり踏みそうな人は控えた方が無難だと思う。筆者は控えている。

さて、ここまでつらつらと使用感を語ってきたが、いかがだっただろうか。個人的な総括としては、「必需ではなくとも、PC生活を確実に豊かにする」といった感じで、かなり満足の行く買い物だった。

「両端のペダルに足を待機させていると中央のペダルを踏むのがやや面倒」だったり、「PC使用時に足を組むクセがあるとやや大変」だったり、まだ書き足りない所感はあるが、割とどうにでもなる部類ではあるのであえて強調はしないでおく。


何にせよ読者の方々には当レビューを通じて、このフットペダルというアイテムに「便利そう」「楽しそう」と親近感を抱いてもらえたら幸いである。そして実際に手に入れて、足を置いて、フットペダルに秘められた可能性を大いに開拓してほしい。

PCを扱うのが得意な人はもちろん、苦戦している人であっても、この商品を使えば文字通り、「手も足も出る」ようになるはずである。

参考リンク:サンワダイレクトPR TIMES
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.