新宿、大久保、池袋に店舗を構える老舗喫茶店の亜麻亜亭(カフェ・アマティ)が2023年12月25日で全店閉店する。
ひょっとしたら店名だけ聞いてもピンと来ないかも知れないが、新宿駅や池袋駅を使ったことがある人は見覚えがあるはず……。駅ナカとは思えない落ち着いた空間で、いつも賑わっていたお店だったのだが……突然の知らせに喫茶店好きの間で衝撃が走っている。
最後の1店舗となる池袋店と、在りし日の新宿ルミネ1店を紹介したい。
・約100年の歴史を誇る老舗喫茶
亜麻亜亭(アマティ)は、1927年(昭和2年)に創業した老舗の喫茶店で、100年近い歴史があるお店である。
本店は大久保駅前にあったが、店舗は新宿駅の駅ナカや駅ビルに集中しており、赤い屋根と白い壁、U字型の窓が目印で、乗り換えのときなどに前を通ることが多かった。
京王新線・都営新宿線の乗場前にあった京王モール店は2023年3月15日に、小田急エース南館店は7月31日に、そして新宿ルミネ1店・ルミネ2店は10月末で閉店したという。
新宿駅の風景に溶け込み、あまりにも「そこにあるのが当たり前」すぎて、閉店していることにも気づかなかった。しかし、場所柄いつも混んでいたし、閉店するというのが信じられない……。
・最後の1店舗「亜麻亜亭」池袋店
さて、最後の店舗は池袋駅の地下街・東武ホープセンターにある「亜麻亜亭 池袋店」である。ここは1989年にリニューアルオープンしたそう。
店の入り口には12月25日で閉店する旨を書いた貼り紙があった。
店構えは他の亜麻亜亭やカフェ・アマティと似たような、白壁にアーチ型の窓が印象的な造り。
ランプの灯りの下にダークブラウンのテーブルにベロア張りの椅子でクラシカルな印象。
ドリンクメニューが豊富でアレンジコーヒーやアレンジティーが多い。
人気があるのはケーキ類。この日は閉店が報じられた次の日だったからか、夕方にはほとんどのケーキが完売していた。
残っていた季節のケーキ「スイートポテトタルト」とブレンドコーヒーのセット(1070円)を注文。
コーヒーを1杯ずつ淹れてくれるような喫茶店でケーキとコーヒーがセット1070円は安い気がする。しかもカップアンドソーサーやお皿は業務用ではなく、ウェッジウッドやナルミといったブランドものである。贅沢〜。
さらに……亜麻亜亭では他のメニューを注文した人が追加で100円〜200円でトーストやサラダなどを追加注文できるシステムがある。「シナモントースト」(190円)を追加してみたら……。
5枚切りの食パン1枚分くらいのかなりしっかりしたものが出てきてビックリ。バターが染みたトーストにシナモンシュガーがきいてて美味しい。
ちなみに、お手拭きやコースター類もお店のロゴ入り。
ちなみに、店名のアマティは17世紀の著名なバイオリン製作者ニコロ・アマティが由来らしく、お店のロゴもバイオリンが描かれている。それもあってか、店内ではクラシックが流れている。
手作りのケーキと淹れたてのコーヒー、こだわりの茶器にBGMはクラシック。落ち着いた空間ながら、全体的に気前がいいな……。いつも人がたくさん入ってたのも納得だった。個人的には店内に小部屋のような場所があるのが、隅っこ好きにはたまらない。
・すでに閉店したルミネ1店
JR新宿駅の南口から都営新宿線・大江戸線のコンコースの途中にあったルミネ1店は、ファッションビルの中とは思えないほど落ち着いた店で、間口の小ささとは裏腹に席数が多いお店だった。調度品やインテリアがレトロさが印象的で、たまたま写真を撮っていたので、在りし日の姿を紹介したい。
こちらも赤いベロア張りの椅子や丸テーブルの雰囲気が素敵。
ランプはエミール・ガレ風。
ハーブティーを頼んだら、ナルミのカップアンドソーサーで、はちみつを添えてサーブされた。ポットサービスでたっぷり3杯分くらい出てきたので驚いた。
他のアマティもそうだが、店の中に壁と小窓があって、個室みたいな雰囲気になるのもよかった。駅ビルのテナントなのに一軒家みたいなのだ。
駅ナカにあるアマティは、電車で帰る前に「ちょっとお茶する」には居心地のいい喫茶店だった。駅のすぐそばという場所柄、ここで沢山のドラマが生まれたに違いない。
池袋の亜麻亜亭は12月25日まで。こだわりがありながら、庶民的でもある名店だったと思う。こうした昔ながらの居心地のいい喫茶店が減ってしまうのは本当に惜しい。
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.
▼ショーケースのケーキ見本
▼カップアンドソーサーが飾られている
▼U字型の窓からは地下街もドラマティックに見えるから不思議
▼平成、令和を見守ってきた机や椅子。キズにも歴史を感じる。