日本の喫茶店文化を、陰で支えているのはルノアールにほかならないだろう。どれだけスタバをはじめとする海外発祥のコーヒーショップが販路を拡大しようとも、あの居心地の良さには勝てない。なぜなら、フラペチーノではくつろぎを得られないからである! おっさんの私(佐藤)には、スタバの注文が難しすぎるんじゃいッ!!

という訳で今回は、ルノアール中野北口店について紹介したいと思う。

・3店集中「ルノアールトライアングル」

JR中野駅周辺に、ルノアールは3店舗もある。北側に2店舗、南側に1店舗だ。それらが概ね半径500メートル以内にあり、3店舗を線で結ぶと3角形になることから、私は「ルノアールトライアングル」と呼びたい気分になる。実のところ、中野駅周辺にはドトールコーヒーがない。南口に以前あったが、なんと閉店してしまったのである。

ちなみに駅周辺には、スタバもベローチェもコメダもあるが、ルノアールの勢力はこのトライアングルでガッチリ守られている。


・中野の要衝、北口店

もしもこの3店舗で戦局を乗り切りなら、今回紹介する中野駅北口店が「本陣」ということになるだろう。なぜなら圧倒的な広さを誇るからである。中野サンプラザ前店が席数48席、南口店が64席であるのに対して、北口店はなんと114席もある。2つの店舗の席数がまるまるこの北口店に入ってしまう。席数を戦力と見るなら、北口店の戦力は絶大だ。


・最強の喫煙席

なかでも このお店が素晴らしいのは喫煙席だ。店内に入ると中にもうひとつ自動ドアがあり、その奥が喫煙席となっている。店の中に店があるような状態、完全分煙化されており、気兼ねなくたばこを吸うことができる。


喫煙者はもちろんハッピー。非喫煙者も煙が流れてる来る心配が、まったくといって良いほどない。これぞ次世代の喫茶店。喫煙不可で、喫煙者を完全に締め出すお店とは大違いである。


・黒糖と間違える

さて、今回注文したのは、アイスの黒蜜カフェ・オーレ(750円)だ。柔らかな甘さとコーヒーの苦味、そしてミルクのコクを楽しめる一品。40代も半ばに差し掛かった私は、これを注文する時にいつも間違える。「あの黒糖のヤツ」と言ってしまうのだ。


黒糖を使ったミルクコーヒーを提供しているのは、上島珈琲だ。それにもかかわらず、お店のスタッフは必ず「黒蜜ですね」と優しく訂正してくれるのである。きっと間違うのは私だけではないのだろう。その優しい接客に毎回ホッとしてしまい、次に来た時にもまた間違う……。


・悲喜こもごも

この日は台風直撃直後。電車のダイヤは大幅に乱れ、駅は大混雑していた。少し出社時間をズラすつもりでお店に入ったが、幸い電車を待つ人の姿はほとんどなかった。喫煙席では私と同じように電車をやりすごしてパソコンを開き、仕事をしているサラリーマンの姿が見える。


私の向こう側のテーブルでは、2人の男性が、客と思しき1人の男性に対して、謎の情報商材について説明している様子。「ほぼ100パーセント儲かる」という、ホットなワードを繰り出しているではないか。このご時世で、そんな勇気の要する言葉を繰り出せる営業マンは優秀に違いない。

そのすぐそばでは、80代と思われる2人の老人が、リーマンショックの影響でいくら損したかを、まるで自慢気にひけらかしている。きっと2人が損をしたのは、リーマンショックの影響ではないだろう。なぜなら、損失の額を競い合っているようにさえ聞こえるからだ。


そんな人生の悲喜こもごもを、一度にしかも一瞬で味わえるのがルノアールの魅力でもある。


私は出されたお茶をグイっと飲み干して、パソコンを閉じて席を立った。さあ、電車は動いているだろうか? 今日も仕事、がんばろう

・今回紹介したお店の情報

店名 ルノアール 中野北口店
住所 東京都中野区中野5-61-2 立見ビル2F
営業時間 7:30~23:00 土日祝 8:00~23:00

Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24