文学好きなら間違いなくハマる神アニメとして、私が胸を張っておすすめしたい作品が「四畳半神話大系」である。
原作は森見登美彦先生による小説。2005年に太田出版から描き下ろしが刊行され、2008年には角川書店より文庫版が刊行された。そして2010年にはノイタミナ枠(フジテレビ系深夜アニメ枠)でアニメが放映されていた。
・癖の強い登場人物
まずは何を隠そうこの私、原作はもちろん、DVDや限定グッズを買い漁り、聖地巡礼までしちゃうほど筋金入りの大ファンなのである。1人でも多く四畳半ワールドの虜にしたいので、全力で紹介させていただく。途中退席は認めない。
キャラクターデザインを務めるのは、アジアンカンフージェネレーションさんのCDジャケットなどで有名なイラストレーター、中村佑介さん。見慣れた絵柄も親しみを持ちやすいポイントである。
物語の舞台は京都。主人公は大学生3回生の “私” 。今にも倒壊しそうな四畳半下宿に住んでいる冴えない文学青年である。
1回生の頃に黒髪の乙女との薔薇色のキャンパスライフを夢見てテニスサークルに入会するが、悪友 “小津(左)” や、私が密かに思いを寄せるヒロイン “明石さん(右)” を中心とした個性豊かなキャラクターの登場により、理想とはほど遠い生活を送ることになる。
・他にはないアニメの展開
実は各話が独立していて、毎話最後に話が巻き戻り、次回には1回生に戻って違うサークルに所属した私の未来が描かれる。2話では映画サークル、3話では自転車サークル、といった具合だ。
1回生に戻って心機一転、全く違う人生を選択したはずなのに、そこにもやはり小津がいて自分に関わる人物は変わらない。一見くだらない青春群像劇なのだが、人生における「あの時ああしていれば」「こっちにしておけば」というifの未来が幾通りも展開していく平行世界が水面下で動いていくのだ。(DVD裏参照)
そんな平行世界の先で主人公が得たものは何か。それこそが四畳半神話大系の真髄である。最終話でどんどん繋がる見事な伏線回収も見どころ。
・圧巻の長尺セリフ
ストーリーはもちろん、小説を音読しているかのような超絶長台詞や、圧倒的な文字量も他のアニメにはない魅力である。深夜に何気なくテレビを観ていた私は一瞬でこの四畳半劇場に飲み込まれてしまった。
しかも全編早口でもうひたすらにしゃべくり倒す。倍速で見ようものなら何も聞き取れぬほどの文字量。恐ろしく声優泣かせな作品である。
主人公 “私” 役を務めた浅沼晋太郎さんには原作ファンからは「よくぞやってくれた!」と感無量のコメントが相次いだ。
・以下アニメより一部抜粋……
「弱者にむち打ち、強者にへつらい、怠惰で天邪鬼。もし彼と出会わなければきっと私の魂はもっと清らかだったであろう(私)」
「太陽を目指さず地上でのうのうと暮らして何がイカロスか。それではただの羽が目障りなオトコではないか(自転車サークルにて)」
「可能性という言葉を無限定に使ってはいけない。我々という存在を規定するのは、我々がもつ可能性ではなく、我々がもつ不可能性である(師匠)」
日常会話ではまずお目見えすることのない小難しく毒のある言い回しの数々。そうかと思えばハッとさせられてしまう学びもある。
全11話、すべてのエピソードが文学好きの脳を刺激して止まない。オシャレに相手を言い負かす粋な言葉遊びが随所で見られる。完全日本語のアニメだが、是非とも字幕ありで視聴していただきたい。
また、作中で登場する京町は縁結びの神様で知られる下鴨神社を始め、鴨川デルタ、賀茂大橋など実在する名所が多いので、見終わったあと聖地巡礼に訪れるのも乙である。
あなたもきっと四畳半下宿に住みたくなる。是非1度ご覧あれ。
参考リンク:四畳半神話大系公式サイト
執筆:こいずみゆか
Photo:RocketNews24.