同世代の人ならば「甲本ヒロト」をご存じない方はいないハズ。あえて “ヒロト” と呼ばせてもらうが、ヒロトとは「ザ・ブルーハーツ」「ザ・ハイロウズ」を経て、現在は「ザ・クロマニヨンズ」でボーカルを務めるあのヒロトのことである。
つい先日のこと。山中湖のほとりで開催された夏フェス「SWEET LOVE SHOWER 2023(スペシャ)」にて、クロマニヨンズのライブを観る機会に恵まれた。結果的に私はステージに登場した瞬間から、1秒たりともヒロトから目が離せなくなってしまったのである。
・ハイロウズまではわかるけど
ブルーハーツが解散したのは私が高校2年生の頃。兄も姉もいなかったためブルーハーツの存在に気付くのはやや遅かったかもしれないが、それでも一時期はブルーハーツのアルバムを聞きまくっていた。
私が好きなアルバムは「STICK OUT」と「DUG OUT」で、1番のお気に入りは『月の爆撃機』である。余談ではあるが後年になってマキシマム ザ ホルモンが『月の爆撃機』をカバーしていたときは「だよな!」と深い感動を禁じ得なかった。
なので一通りはブルーハーツの曲は体に染みついているし、ハイロウズも多少はかじっている。特に1枚目のアルバム「THE HIGH-LOWS」は鬼ほど聞き込み、当時の地元・市川文化会館で開催されたハイロウズのライブにも出かけたクチだ。
……が、申し訳ないことに「クロマニヨンズ」の曲やアルバムを聞いたことは1度も無い。もちろんクロマニヨンズの存在は知っているが、私の生活とクロマニヨンズが交わることがこれまで1度も無かったのである。
・およそ30年ぶりのヒロト
というのも、私が毎年のように足を運んでいる「ROCK IN JAPAN」には、(私が訪れたときに)なぜかクロマニヨンズは出演したことがない。結果的に私にとってクロマニヨンズは “知っているのに縁遠い存在” となっていた。
そんな中、訪れたスペシャで初めてクロマニヨンズを観る機会。生ヒロトを拝むのは、およそ30年ぶりだ。当時は30歳を少し超えただけだったヒロトも、現在は60歳。高校生だった私も45歳になっている。そして私がヒロトに抱いた印象はというと……
「赤ちゃんになっている」だ。
誤解を恐れずに言うと、ヒロトは当時よりも赤ちゃんになっているのではなかろうか? 赤ちゃんがボール遊びを心の底から楽しんでいるように、ヒロトは音楽を心の底から楽しんでいるように見えた。
MCはほどんどなく「どんどん行こう」とひたすら歌い続けるヒロト。相変わらずガリガリの上半身をさらけ出し、ステージ上でのたうち回りながらも歌うことをやめないヒロトは、完全に音楽で遊ぶ赤ちゃんである。
また「歌え!」「騒げ!」「飛びまくれ!」などと観客を煽ることは一切なく、手拍子を求める素振りすら1度も無かったことには衝撃を受けた。私も多くのバンドを見てきているが、これはかなりレア。その間もヒロトは自分が全身全霊で音楽を楽しんでいるのだ。
・音楽のもののけ
ステージに登場したその瞬間から、ステージのライトが落ちるまで、私はヒロトから目が離せなかった。およそ30年ぶりのヒロトはヒロトのまま……どころか、より純粋な何かへと変貌を遂げていた。
ヒロトはやはりすごかった。紛れもなく “音楽のもののけ” であった。いずれアルバムを聞き込んでから、改めてクロマニヨンズのライブに足を運んでみよう。最後に1度だけあったヒロトのMCを紹介して、この記事を終わりにしたい。
「君たちは夏の自由な時間、何をしてもいい時間、わざわざこのステージを選んでくれてどうもありがとう」
参考リンク:ザ・クロマニヨンズ公式サイト
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
▼スペシャ公式インスタの5枚目の写真を見てみて。私が言っている意味がわかるハズだ。