
人はなぜ澄んだものに心を奪われるのだろうか? 私(佐藤)にはその理由がわかる。いや……その理由というのは、私においての話。すべての人に当てはまるとは限らないか……。私は心のよどんだ人間だ。少なからず、よどみを持って生きている。そうであるがゆえ、澄んだものに憧れを抱かずにはいられないのである。それがたとえ、豚骨ラーメンであってもだ。
今年出会ったあの豚骨ラーメンを私はいずれ思い出すだろう。「あの夏、いちばん澄み切った豚骨ラーメン」として……。
・クリア豚骨
今年の夏の暑さを「異常」と表現しても差し支えないだろう。「災害級」とさえ言われており、国際機関が「観測史上もっとも暑い」と伝えていたのだから正常ではなかったはずだ。きっと誰もが「2023年は暑かった」と振り返るに違いない。
その日、私はゴディバのパンを買うために3時間も並んでいた。整理券が配布されたおかげで、午前11時からの行列からようやく解放されたのを思い出す。昼食を摂っていなかったのだが、腹が減っているかどうかわからない。暑さのせいで、疲れているのかもわからなくなっていた。
このまま空腹をやり過ごすこともできそうだったが、とにかくお腹に何かを入れておいた方が良さそうだ。そう思いながら、銀座の街をブラついていたのである。
そういえば透明な豚骨ラーメンを出すお店があることを思い出した。店の名は「銀座月や」。2023年4月ギンザシックスに出店した、博多に本店を持つ豚骨ラーメンのお店だ。以前は広尾にお店を構えていたそうなのだが、広尾から移転し、それにともない食材を見直して、銀座限定「クリア豚骨」と呼ばれる一杯を完成させたという。
豚骨スープといえば、白濁色のものが当たり前。そのセオリーをぶっ壊したという一杯を味わってみたい。そう思って店を訪ねた。
私の腹具合は、正直なところラーメンを欲していなかった。少なくとも豚骨ではない。できれば、冷麺や冷やし中華で軽く済ませるつもりだった。だが、クリア豚骨が気になる。本当に濁っていないのだろうか?
ちなみにメニューに記載された使用食材を見ると、麺や豚だけでなくほぼすべての食材が福岡県産。器や酒器に至るまで福岡にこだわっている。地元に対する強い愛情がうかがえる。
メニューには「おすすめの召し上がり方」も細かく記載されている。まずはスープをそのまま、次にネギを、次に海苔を、次にチャーシューをといった具合。最後に「安心してスープを飲み干してください」とある。最後まで気を抜けないな……。
・真っ白なキャンバスに
これがクリア豚骨(税込1320円)。いわゆる素ラーメンだ。後のせの具材があるとはいえ、丼にはスープと麺しかない。やはり素ラーメンと言えよう。
パッと見た印象としては、無色透明ではない気がする。強いていえば、黄金色といったところだろうか。黄色ではない、茶色でもない。少なくとも一般的な豚骨スープのような白濁色でないことはたしかである。
具材はネギ・海苔・チャーシュー・かぼすの4種。先ほどのメニューの手ほどきの通りの品々である。
レンゲでスープをすくい上げてみると透明だ、これはまさしくクリアである。すすってみると、驚いたことに豚骨テイスト。食材にこだわり手間と時間をかけると、ここまで澄み切ったスープに仕上がるのか。
一見薄味のように思えるけど、しっかりと豚の旨味・甘味、そして深いコクがある。それでいて後味はあっさり。「まずはそのまま」と言いたくなる気持ちがわかった。最初のひと口は何も加えずに飲むべきだ。
ラーメン専用小麦「ラー麦」を使用した細麺は、歯ざわりがしっかりとしていて、あえて例えるならパスタのアルデンテに近い。すすりあげると麺とスープが同時に口の中に飛び込んでくる。2つの味が調和していて、洗練された味わいだ。
食べ方に従って、まずはネギを入れる。スープの味がしっかりしているので、ネギの青みのアクセントが際立つ。
次に海苔。有明海産の焼きのりをスープに浸すと、「海藻」であったことを思い出したかのように、静かに磯の香りを漂わせている。
そしてチャーシュー。使用しているのは、福岡のブランド銘柄「糸島豚」。脂質の甘さが魅力とのことだが、このチャーシューはとても甘い。散らした黒コショウでその甘さがさらに引き立っている。肉質が繊細で上品な味だ。
そして最後にかぼすをひと搾り。
……すると、弾けるような香気が豚骨スープをより一層クリアにしてくれる。柑橘系の香りが加わったことで、味がより立体的に感じられる。
最後に卓上の紅生姜でさらに味変。いまだかつて、これほどまでに品のある紅生姜を食べたことがないかも。真っすぐでクセのない酸味が、スープの甘さに慣れた舌をリセット。そのおかげで、ラーメンの美味しさを追体験している気分だ。
クリア豚骨。たしかに色も臭みもない。それはまるで真っ白なキャンバスのようなもの。その上に具材の色彩(味)で絵を描いていく。出来上がった絵は平面ではなく、味の枝葉があちこちに伸びた大きな樹のようであった。
「あの夏、いちばん澄み切った豚骨ラーメン」、私は何度も思い出すだろう。夏だけでなく秋も冬も、そして春も。何度も通って、すべての季節で澄み切った豚骨ラーメンを思い出すことだろう。
・今回訪問した店舗の情報
店名 銀座月や
住所 東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 6F
時間 11:00~16:00(L.O.15:30) 17:00~23:00(L.O.22:00)
定休日 なし(施設に準ずる)
佐藤英典














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