Appleの店員さんが「修理費用の見積もりはこれくらいになります」と言って電卓の数字を見せてくれたとき、私は周りの音が何も聞こえなくなった。しばしの思考停止。なぜなら、想定していたより0が2つほど多かったからだ。
誤解なきように言っておくと、私はなにも「Appleさん、高すぎますよ」的なことが言いたいわけではない。ただ、自分の無知を痛感しただけ。同時に、商品を丁寧に扱うことがいかに大事か身をもって知ったので、以下で紹介したい。
・Powerbeats3のゴムがちょっと破れた
問題のイヤホンは、Powerbeats3ワイヤレスイヤホンの耳掛けタイプ。数年前にAppleストアで購入したときの価格は、2万ちょいだったように記憶している。
自分で言うのも何だが、結構お高めのイヤホン。それだけに、使い勝手も音質も抜群に良かった。少なくとも、私のイヤホン歴の中ではTOPに君臨する王者的存在だ。
そんな愛用イヤホンにちょっとしたトラブルが。耳掛け部分のゴムが少しだけ破れてしまったのだ。その割れ目から白い線的なものが見えており、ルックス的によろしくない。
ただ、音はまったく問題なく聞こえるから大した故障ではない。というか、これくらいじゃあ故障とも呼ばないだろう。人間のケガで言えば、膝をすりむいた程度なのでは?
なので、当初は自分で直そうかと思っていた。ボンド的なものを買ってきてくっつければ、いけそうな気がする。
でもまぁ、どうせならプロの手でキレイに仕上げてもらいたい。幸いにも職場の近くにAppleストア新宿があるので、見てもらうべく商品を持ち込んだ。
そのとき私が考えていたことを書き出すと、以下のような感じ。
「外側のゴム的なものをくっつけるだけだから、修理費なんて数百円じゃないの? なんなら、0円って可能性も十分あるよな。
まぁもしかしたら耳掛けのゴムを全部替えなくちゃいけないかもだけど、ゴムの部分なんてたかが知れてるから、メチャクチャお金がかかっても1000円ちょいでしょ」
甘い。甘すぎる。お前はAppleをナメとる。イヤホンの世界、音響機器の世界をナメとる。……今になってみればそう思うが、あのときの私はあまりにも無知で楽観的だった。
・修理費用
さて、引っ張るほどのことではないから店員さんに提示された金額を発表しよう。Apple純正イヤホン・Powerbeats3のゴムがちょっと割れた際の見積もり修理費用は……
約1万3000円……!!
──本来は端数もあったのだが、正確な数字は覚えていない。電卓の数字を見た瞬間に脳がショートしてしまったからだ。かろうじて聞き取れたのは、「この場合は外側のパーツだけじゃなくて、内部のコードなども全部替える必要があるんです」という店員さんの説明。
いや、でも音は全く問題なく聞こえるんですよ、ゴムを替えるだけじゃダメなんですか? と自分の見解を店員さんに述べる余裕はない。ただただ、無言で打ちひしがれているだけ。
そんな私を見かねたように、店員さんが色々と声をかけてくれた。「これだけ費用がかかると新しく買うっていう選択もアリですよね」とか「耳掛けタイプだと、BOSEさんやSHUREさんのも人気ですよね〜」とか。
この状況で、他社のイヤホンを選択肢として提示してくれる懐の深さよ。だからまたAppleの商品を買いたくなるんだよな……と思うと同時に、「修理費くらいでビビっている自分には買う資格がないのでは」と思わなくもない。
どちらにせよ、私が混乱していることは間違いない。その状況で判断しても後悔しそうだから、修理するかどうかという判断を保留してAppleストアを出た。
あれから数日たったのだが、結局修理には出していない。冷静になればなるほど、1万3000円があまりにも痛すぎる出費に思えたからだ。
こうなったら、いっそのこと修理せずにどこまで使えるか試してみようかな……とセコいことばかり考える毎日である。
参考リンク:Apple「Appleの修理」
執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.
▼ちなみに店員さんによると、私の愛するPowerbeats3ワイヤレスイヤホン(耳掛けタイプ)は現在生産していないらしい