ここ最近、私の自転車はほぼ毎朝びしょ濡れだ。本来は濡れなくて済んだマイチャリ。それが何者かの悪意によって、びっしょびしょになっている。

いや、本当に悪意なのか? もしかしたら悪意ではないのかもしれないが、犯人が分からないので確かめようがない。何もかもが謎。だからこそ気持ち悪いのだ。

同時に腹も立っているのだが、心を落ち着けていま起こっていることを話そう。

・新居に引っ越し早々起こったこと

2022年の年末、私は現在住んでいるマンションに引っ越してきた。新居での生活が始まってまだ半年ほど。特に困ったことはないのだが、唯一「勘弁してくれ」となっているのが駐輪場でのルーティーンである。

その駐輪場というのがちょっと特殊で、きっちりと整備されたものではない。いちおう屋根があるものの、駐輪場の一部をカバーしているに過ぎない。駐輪場の半分ほどは屋根がなく、そこにチャリを停める場合は野ざらしとなる。


早い話、私が住むマンションの駐輪場は「屋根のあるゾーン」と「屋根の無いゾーン」に分かれている。当然ながら誰もが屋根のあるゾーンにチャリを停めたいと思うだろうが、それが出来るかどうかは運次第。

私の場合、入居後1週間くらいで屋根ゾーンに駐輪できるチャンスが来た。朝はギュウギュウだった屋根ゾーンが、帰宅時には結構ガラガラだったのだ。ラッキーと思い、そこに停めた。ところが……


翌朝になって駐輪場に行くと、なぜか私のチャリが屋根のないゾーンに置かれていたのである。まるで泣いているかのように、夜露に濡れながら。

それを見た瞬間、私は混乱した。やがて誰かが自分のチャリを屋根ゾーンに置きたくて私のチャリを動かしたということを理解したものの、理由は全く分からない。

このあたりは人によるかもしれないが、私の感覚では他人のチャリを軽く押し込むくらいなら理解できる。「もうちょっと詰めたら自分のチャリも屋根の下に置ける」となったら、隣のチャリをギュっと押し込みたくなるだろう。それをやられるとチャリを出すときに大変な時もあるのだが、まあ気持ちは分かる。

だけど、屋根の下にある他人のチャリを出して、露天ゾーンに移動させる心理は全く理解できない。そんなことをしたら、「どけや!」と言っているようなものではないか。傲慢にもほどがある。

なお、私のマンションの駐輪場は「◯◯号室はココ」と決まっているわけではない。駐輪場のエリアがざっくり指定されているだけで、「みなさん好きなところに停めて下さい」というスタイル。

なので、屋根の下にチャリを停める権利は私にもあるはずなのだが、同じマンションの住民(あるいは近隣)の誰かがそれを許さないのである。



いやいや、考えすぎかもな……と最初は思った。たまたま、何かタイミングが悪くてチャリが動かされていただけかも。と考えるようにしたのだが……。

それ以降、私が屋根の下にチャリを停めると毎回必ず屋根のないエリアに出されているのだ。まるで、「新参者は屋根の下にチャリを停めるな!」と言っているかのように。


私としてもささやかな抵抗をしたかったので、「朝になったら移動させられているんだろうな」と思いながらも(屋根エリアに空いているスペースがあったときは)根気強くそこに停め続けた。

そして犯人は私のチャリを移動させ続けた。1月も2月も3月も4月も5月も6月もず〜〜〜〜〜〜〜っとである。特にハードだったのが6月で、梅雨の時期だけに露天ゾーンにチャリを置かれると高確率でびしょ濡れになる。

これがマジで困った。「夜に雨が降りそうだから屋根の下に停めておこう」と思っても犯人は問答無用で移動させてしまう。天気予報が「夕方に激しい雨が降りますのでご注意下さい」と言ってても関係ない。

おかげで朝に余計な作業が発生して面倒くさかったのだが、先日、いつものように濡れたサドルを拭きながら思ったのだ。


これって……


チャリをイタズラされ続けてるのと同じじゃないの?


もちろん、私のチャリがびしょ濡れになっている直接的な原因は雨。犯人がバケツで水をぶっかけているわけではないが、「この天気で屋根の下から出したらびしょ濡れになるの分かりますよね?」という状況でも移動させ続けているのは一体誰か?

例えるなら、トラックがガンガン走っている道路の真ん中にスマホを置くようなもの。スマホはそのうちボコボコに壊されるが、トラックのドライバーは何も悪くない。

誰が悪いかと言ったら、道路にスマホを置いたヤツだろう。「そんなところにスマホを置いたら壊れる」と誰もが予測できるのに、やってるのだから。


つまり、何が言いたいかというと……


犯人がやっていることは軽い犯罪なのでは?


──ってこと。だとしたら、法律を盾に反撃できる。まぁ私としてはこの程度のことで裁判沙汰にしようとは全く思ってないが、「ナントカ法◯◯条に触れる可能性あり」みたいなことが分かれば、色々と交渉がしやすくなる。

法律的な武器を使わずに解決できるに越したことはないものの、おそらく犯人はスゲー面倒くさいヤツ。「それ、犯罪ですから」という一撃がないと何も変わらないかもしれない。

──と思った私は、約1年前に立ち退き要請を食らったときメチャクチャお世話になった弁護士のFさんに連絡を取った。

これで勝ったも同然。もうサドルを拭き続ける生活は終了だ。待ってろ、犯人。これからマジで反撃していくぞ。


・弁護士に相談

──Fさ〜〜〜〜〜ん、上のようのケースって、犯人は何かの罪になるのでしょうか?


Fさん「今回のケースでは、和才様(のみならず全ての入居者)において、自転車置場の『特定の場所』に駐輪するという権利がありません。ですので、駐輪スペースの範囲内で無断で移動されたとしても、そもそも民事上の損害賠償請求権を発生させる権利侵害がないということになります。

また、移動させることのみをもって刑法上の行為に該当するということもありません。したがって、法的な対応には馴染まず、あくまで道義的な問題ということになります


……


……


……


反撃不発……!!!!


お、終わった……。


・サドルを拭き続ける生活は続く

となると、一体どうしたらいいのか。やっぱり、まずは犯人を特定するところからだろう。監視カメラを使えば分かるかもしれないが、そうしたら全く関係ない住民の方も勝手に撮影する形になってしまう。

なにより、無許可で駐輪場に監視カメラを設置すると、それはそれで問題になりかねない。記事のネタとしては面白いかもしれないが、ことを荒立てすぎる。

なるべく波風立てずに解決できるのが理想。そう思って1週間くらい前に管理会社に相談メールを送ったけど、音沙汰ないしなぁ。だったら自力で駐輪場を見張ってる? そんな暇、あるわけないよなぁ。うーん、どうすればいいのだろう…………

と悩みながら、私は今朝もサドルを拭いていたのであった。

執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.
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