環境への負荷が少ない植物由来の食品、いわゆるプラントベースフードが注目を集めている昨今だが、このような売り出し方は個人的に初めて見た。何の話かと言えば、2023年7月4日にローソンから発売された「食べ比べ! 2種のスクランブルサンド」の話だ。

この商品、鶏卵を使ったスクランブルエッグサンドと、豆乳加工品ベースの代替卵を使ったそれがセットになっており、名前の通り食べ比べができるのである。「代替卵にトライしてもらいやすいように」とのことだが、その品質に相当な自信がなければ難しい売り出し方だ。

そして、そういう「いかにも自信ありげな商品」には、往々にしてネタを求めてさまようウェブライターが邪悪な舌なめずりをしながら寄ってきやすい。例えば、筆者である。

そもそも、何故それほどに自信があるのか。言ってしまえば、もし代替卵の品質が本物の鶏卵より劣っているようなら、露骨に差がわかってしまうわけだが、そんな挑戦的な売り出し方ができる理由の一つには、ローソンの「今までの歩み」が挙げられるだろう。

2017年の時点からナチュラルローソンにおいて大豆ミートを使用した弁当などの販売が開始され、2020年からは全国のローソンでも同様に大豆ミートを使った商品が売られている。ローソンのプラントベースフードへの取り組みは、かなり早い方だと思う。

つまりは、その積み重ねが自信を支えているに違いない。決して「ぽっと出」のサンドイッチではない。であればこそ、こちらも安心して真っ向からトライすることができるし、真っ向から舌なめずりをすることができる。

さっそく筆者は「お手並み拝見といこうではないか」とばかりに税込322円を支払い、実物を入手した。価格はローソンで売られている他のサンドイッチと大して変わらない。それよりも購入段階で気になったのは、見た目の色合いだ。

画像で言えば、左側が鶏卵のスクランブルエッグとハムレタスを挟んだサンドイッチ、右側が代替卵にポテトやハム、きゅうり、玉ねぎを合わせたサンドイッチである。

代替卵は鶏卵よりも色が明るい。事前知識があるからかもしれないが、見た目の「人工感」が強い。鶏卵の方が食欲をそそられるように感じる。しかし、あくまで重要なのは味だ。



まずは鶏卵のサンドイッチから食べてみる。非常に、シンプルに美味しい。上品かつクリーミーな卵の味わいとハムの塩味がマッチしている。レタスのシャキシャキ具合も良い。ただただひたすらに質の高いスクランブルエッグサンドだ。

次に、代替卵の方に手を伸ばす。さて、どんな仕上がりなのか。いかに自信アリの商品とはいえ、極小の粗くらいはあるだろう。その粗を、決して誹謗中傷などにはならない程度に、優れた点のあとに控えめに書き添えてやろう。

そんな小悪党のマインドとともに舌なめずりをしながらサンドイッチを頬張った筆者だったが、すぐにその表情は無に帰した。

真顔だった。許容量以上の感服が、脳天から舌先までを貫いた結果、神妙に口の中のものを噛み締めるほかなかった。美味しさに破顔する余裕さえなかった。

何せ、限りなく鶏卵なのである。鶏卵のサンドイッチは先ほど胃に収めたはずなのに、また鶏卵のサンドイッチを食べているのである。それくらい、卵の味わいが酷似しているのである。

とろみも、甘みも、ほぼほぼ鶏卵。若干、きゅうりや玉ねぎに風味をごまかされている気がしないでもないが、ともあれ大豆特有の香りが全く出張ってこないし、全く違和感がない。具材は違えど、鶏卵のサンドイッチと比べて遜色なく美味しい。

本当に「豆乳加工品ベース」なのかと思うし、どんな魔法を使ったのかと思わずにいられない。いやはや、恐れ入る。代替卵と言われずに目隠しして食べていたら絶対に気付かなかったはずだ。鶏卵の株を奪わんとするほどの見事な仕上がりである。



往々にして、ネタがもたらす衝撃に打ちのめされたウェブライターは、心震えるがままにノーブレーキで筆を走らせがちだ。が、こればかりは許してほしい。何も嘘を書いているわけではないのだ。

このサンドイッチについて、あえて「書き添えるべき粗」などない。それこそ、自信をもって、そう言い切れる。

参考リンク:ローソン 公式HP
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.
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