2023年6月16日から9月3日まで、東京国立博物館 平成館にて開催される特別展「古代メキシコ マヤ、アステカ、テオティワカン」(以下 古代メキシコ展)。

マヤ文明、アステカ文明、テオティワカン文明にフォーカスしたもので、約140点の出土品が展示されるというもの。

そのメディア向け内覧会がひと足先に実施された。これはヤバい気がすると思って私も参加したところ、想像を超えたヤバさであることが発覚! これはとんでもない展示ですよ皆さん。仕事とか辞めて見に行った方が良い

・メソアメリカ

トップの写真は平成館に入ってすぐの光景。展示はエスカレーターをのぼった先で行われている。現時点では、個人利用に限り会場内の全作品が撮影OK。驚愕の対応だと思う。


上白石萌音さん(ナビゲーター)と杉田智和さん(雨の神)の音声ガイドも必聴だ! 私も聞いたが、これは当展覧会に関心を持つであろう色んな方面の人に対し、高い水準でそれぞれの需要に応える良い音声ガイドだと感じた。

展示は全4章の構成。第1章ではメソアメリカ(今回のメインとなる古代文明が栄えた領域一帯のこと。伝統は今も継続している。)最古の文明とされるオルメカ文明について触れ、本番前の下準備をさせてくれる親切設計。


ここで大体の地理的な位置関係や、各文明に共通する情報などを把握する感じ。


・テオティワカン

第二章はテオティワカン。内覧会では、日本人のメソアメリカ考古学の専門家として間違いなく最強格である杉山三郎教授による解説を聞くことができた。

何十年にもわたるテオティワカンでの発掘調査などが認められ、今年の春に政府から瑞宝小綬章を授与されたばかりだ。

早々に「テオティワカン……日本では、まだまだ知られていないということで」と知名度の低さに触れる杉山教授。


最近ソーシャルゲームなどでテオティワカン関連がピックアップされ、突発的に一部の層からの注目度が高まるインシデントが見られたが、今回のマヤ、アステカ文明と比べると知名度は劣るかもしれない。世界史Bに入るまで、ろくに学校で扱われないし。

この文明は未だに何の民族の都市だったのか、どんな言語が話されていたのかなど、基本的なことが不明でロマンに満ちている。

今回の展示では、テオティワカンにある三つのピラミッド(太陽のピラミッド、月のピラミッド、羽毛の蛇ピラミッド)の内部から出てきた貴重なものをメキシコから借りてきたそう。

余談だが、少し個別に質問する時間を頂けたので、言語が未解読な文明の神の名(例えば下の写真の「羽毛の蛇神」等)をどうやって把握したのか伺ったところ、実はテオティワカンでどう呼ばれていたかは分からないとのこと。


形状などから素性を推測し、他の文明で判明している呼び名を借りているのだそう。今後の調査次第では名前が変わる可能性もあるそうだ。ヒュー! 未知までの距離の短さから、展示物の最先端感が伝わってきてやべぇ!!


・マヤ

第三章はマヤ文明で、一番広い展示スペースを与えられている。ここでも最強格の日本人考古学者が登場した。猪俣健教授……!(暗くて写真は失敗した。)

2020年にLiDARという技術を用いた空からの測量で、日本人率いるチームが長大なマヤ文明の建造物を発見したといったニュースが、SNSでもバズっていたのを覚えているだろうか。その日本人が猪俣教授だ!

教授によると、特におススメなのはパレンケ遺跡から出てきた「96文字の石板」だそう。かなり大きく、レギュレーションの都合上、解説とイラストの写真の一部のみ掲載する。本物は自分で見てくれ!


・赤の女王

マヤ文明のエリアでぶっちぎりの存在感を放っているのが「赤の女王」。本展覧会のポスターのど真ん中にある緑の仮面もその一部だ。目玉と言っていいかもしれない。

赤の女王とは、パレンケの「碑文の神殿(パカル王墓)」の隣にある「13号神殿」で発見された遺体のこと。発見当時は真っ赤な辰砂(しんしゃ)で覆われていたことから、そう呼ばれるようになったそう。王妃だと考えられている。

本展覧会ではその墓の出土品を、赤の女王に見立てた赤いマネキンに装着し、発見当時の石室をイメージした空間で展示されている。気合の入った “埋葬感” ある演出がエグい! ここで足を止めない人はいないだろう。


・アステカ

そしてラストの第四章。アステカ文明だ。ここは昨今のソーシャルゲームをきっかけにこの辺りの文明に興味を持った方にとって、最も関心が高い場所となるだろう。

「トラロク神の壺」や、「テスカトリポカ神とウィツィロポチトリ神の笏方飾り」などが展示されている。個人的にはこのエリアにある「チャクモール像」の顔が、高いミーム力を秘めているように思えて仕方なかった。


展示の紹介は以上。あとはご自分の目で見て頂きたい。それにしても古代メキシコのレジェンド級の宝物がこんなにも日本に集まるのは、本当に凄いことなのではなかろうか。展示品の戦闘力が圧倒的すぎて、鶯谷はもう今日で終わりだろう。明日からは地名を古代メソアメリカにしていい気がする。


・図録はガチ

最後は物販。ぶっちゃけ展示を見る前に真っ先に物販に寄った方が良いかも知れない。これはちょっとした予言だが、図録はすぐにヤバさが知れ渡って売り切れると思う。

図録というか、もはやマヤ、アステカ、テオティワカンに関する Archeology 101のクラスの資料集兼テキストというレベルだ。2800円とか実質無料。アメリカの大学だと、もっと貧相な教科書でも70ドルくらいする。

昔の発見から比較的最近の研究(猪俣教授の2020年のやつも載っている)まで、初心者にもわかりやすく解説されており、今回の内覧会でも登場したお二人のコラムだけでなく、他にも多数の著名な研究者による解説が載った豪華仕様! しかもカバーを3種類から選べる。


どこで開いても本のノドいっぱいまで開ける綴じ方なのもグッド! パタンと抵抗無く180度にページが開くので読みやすい。


他にも色々グッズが多数展開されているぞ。展示品は減らないが物販の在庫は減っていくので、図録と何か良さげなグッズをおさえ、心穏やかに展示を回るのが良いのではなかろうか。


参考リンク:古代メキシコ展
執筆&写真:江川資具

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