久しぶりに行動制限のないGW。海外旅行とまではいかなくとも、国内で遠出をした人も多かったのではないだろうか。
かくいう筆者も連休を北海道・東北地方で過ごした。暑くも寒くもなく、観光には最適な気候。とりわけ夜の「上着なしだとちょっと肌寒いかな?」というくらいの気温は、筆者の車中泊スタイルには大変都合がいい。
今年は春が早かった。北海道南部も東北地方も桜のピークは過ぎていたが、各地で春の花が咲き乱れ、もうすぐ木々がいっせいに芽吹くだろうという陽気だった。あの瞬間までは……
・まさかのカーナビゲーション
連休最終日、青森県から岩手県の県境を越え、宮城県に向かって車で走行していた筆者。
行き先を示すカーナビゲーションの画面に、不穏なマークを見つけた。「雪」を示すピクトグラムに、タイヤのチェーンらしきイラスト。
車外に目をやると「冬タイヤ装着」という電光掲示板と、車内に響く「この先、雪のため50km規制です」という無機質な音声。
おいおい、まさか。
いかに東北地方でも、5月初旬ともなればスタッドレスタイヤは履かない。高価な冬用タイヤを摩耗させたくないので、もう路面が凍るほど冷えないと判断すれば、なるはやでノーマルタイヤに戻してしまう。
おまけにここは「春季開通したばかりの○○ライン」とか「踏破困難な山岳地帯」とかではない。北へ向かう車がみな通る、天下の東北自動車道なのである!
注意喚起の意味合いがあるのだろうが、予報というのは往々にして大げさなもの。通過してしまえば「どこよ雪www」となるはずだ。なるはずだ……
※撮影は助手席の乗員が安全に行っています(以下同)
ウソだろぉぉぉぉぉ雪だぁぁぁ!
周囲の山々をおおう白いヴェール!
フロントガラスに吹きつける雪つぶて!
情報パネルに表示される外気温は1℃!
まだ水分が凍るほどの気温ではなく、道路に落ちた雪が瞬間的に溶けてシュワシュワしているのがわかる。しかし、路面はシャーベット状だ。もう何度か気温が下がったら危ない。
表示される外気温、路面の見た目、タイヤの接地面から聞こえてくる音……リスクを判断すべく、すべての情報を統合してフル回転する筆者の脳。
スリップ事故というのは本当に怖い。筆者はこれまで自分が事故を起こしたことはないが、事故現場の目撃や、車の横滑り、ABSがガガガガと始動する瞬間などは何度も経験がある。凍結路で制動力を失うのは、一瞬でも本当に恐怖だ。
さらに、高速道路や幹線道路で立ち往生を起こして大渋滞の原因となるのは、たいがい気候を楽観視した車なのだ。
このとき筆者はたまたま、本当にたまったま、スタッドレスタイヤを履いていた。何年か乗ったタイヤを廃棄して買い換えようと思っていたので、いつもの時期にタイヤ交換せずにいたのだ。
しかしこんな幸運はそうそうあることではない。例年なら確実にノーマルタイヤに戻していた。そうなったら “詰み” だ。天候の回復まで待つか、あるいは強行突破しようとして命を危険にさらしていたかもしれない。
・雪国をなめていた
降雪区間はほんの数十キロのことで、すぐに天候は雨に戻った。地面に落ちた雪は瞬時に溶け、おそらく道路に積もることもなかったと思う。しかし久しぶりにゾッとする出来事であった。
報道によるとこの時期に同エリアで雪が降るのは異例だそうだが、「桜と雪が同時に存在する」北国の怖さを思い知った。油断は禁物だ。みなさんくれぐれも安全運転を。
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.