
私は、ピザに対して不誠実な人間である。いきなり珍妙な懺悔を始めてしまったが、少し説明させてほしい。ピザが嫌いなわけではない。むしろ大好きである。割と頻繁に「ああピザを食べたい」と思う。しかしいざ食べ始めると、濃厚さのためか急速に飽きやすい。
むろん例外はある。例えば今まで何度かピザのレビュー記事を書いたが、それらについては幸いにも飽きの来ないものに出会えたと言える。だが大抵は食べ始めてから2、3口目で、最悪の場合1口目で「だいぶ満足したな」となりがちなのである。
そのたびに、罪悪感が募る。己の手のひら返しぶりを呪う。私はこのまま暗い人生を歩むほかないのかと思っていたところ、2023年4月21日、光明が差した。なんとあのピザハットから、「ディップソースをつけて食べるピザ」が新発売されたのである。
その新商品の名は、「Hut Melts(ハットメルツ)」という。本国アメリカで2022年11月に発売され、新しいスタイルとして人気を得た「Melts」を、日本人向けにアレンジしたものだそうだ。ちなみに一人用の商品となっている。
トッピングにはベーコンポテマヨ、マルゲリータ、スパイシーチキン、ミートラバーの4種類が用意されており、それぞれに特製トマトソースとワカモレ(アボカドソース)が付属する。2つのソースを適宜ディップすれば、自由に「味変」が楽しめるというわけだ。
この「Hut Melts」ならば、飽きずに食べられるのではないか。食べる前は渇望していたにもかかわらず、食べ始めるや愛想を尽かす、今風に言うならばピザの蛙化現象とも呼ぶべき我が悪癖を、この商品ならば打破できるのではないか。
そんな期待を胸に、筆者は今回ベーコンポテマヨ味の「Hut Melts」を注文した。価格は持ち帰りが880円、デリバリーが1180円となっている。詳しくは公式サイトを参照してほしい。
ボックスから中身を取り出してみると、そもそもソース以前に、ピザそのものが独特であることに気付く。薄いクリスピー生地で具材を挟んだような構造だ。確かに生地に具材が乗っただけの通常の仕様だとディップ時の苦戦が予想されて余りあるので、これは合理的と言えよう。
まずは何もソースを付けず、そのままの状態で食べてみる。サクサクとしたクリスピー生地とポテマヨのクリーミーかつ濃厚な味わいが見事にマッチしており、正直この時点で「おっ」と思わされるほどには美味しい。完成度が高い。
高いが、しかし緩やかに、悪癖が鎌首をもたげている感覚があった。確実にそうなるなどとは言うまいが、このまま食べ進めていけばムクムクと悪癖が増長し、やがてそのどす黒い悪癖が首に巻きつき喉を締め上げてくるかもしれないという、不安めいた予感があった。
そんな時こそディップである。救いを求めるようにトマトソースにピザを差し込み、食べる。
涙が出た。いや、涙が出たのはさすがに嘘だが、何か偉大なものに出会ったような、深い感動が湧いた。トマトの酸味と旨味が颯爽と登場した瞬間に、それまでとは景色が一変し、気付けば悪癖は逆にトマトに首根を押さえつけられ、屈服させられていた。
これほど変わるものかと思うが、変わるのである。ただソースを付けるだけで全く別物で、シンプルながら効果は絶大だ。そしてシンプルとはいえ、少なくとも筆者の知る限り、日本の大手ピザデリバリーでは「ありそうでなかった」ピザゆえに、そういう意味でも新鮮だ。
同じようにして、今度はワカモレに付けて食べる。またさらに景色が変貌する。とろみのあるアボカドの甘さがたまらない。一気に風味が南国の様相を帯び、まるでメキシコ料理だ。
ワカモレを適度に堪能したら、再びトマトに戻る。このループが実に巧妙で、何ら弾みを失うことなくピザを口に運べてしまう。個人的には、具材の少ない耳の方に至ったとて、ソースを付ければ味わい深く食べられるというのもポイントが高い。
あえて苦言を呈するなら、ソースの容器についてだ。口がやや狭いのである。ディップに適したピザであっても、なかなかソースを全てすくい取ることは難しい。スプーンか何かが必要になる。
スプーンか何かが調達できない環境で食べることを想像すると、その時に容器に残るソースを想うと狂おしい。対策を講じてほしいところだ。
ともあれ、こうして我が儘を言ってしまうのも、それだけこのピザに夢中になれたという証左にほかならない。期待通りに新感覚のピザであったことが喜ばしい限りだ。もし皆さんの中にも筆者と同種の方がいたら、ぜひ召し上がってみてもらいたい。
本当に、今まで出会った多くのピザも、この「Melts」スタイルであったらと思うくらいだ。やはり私はピザに対して不誠実な人間だろうか。いや、それでもいい。「Melts」スタイルがもっと広まることを、厚かましくも願う。
参考リンク:ピザハット 公式サイト
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.
▼ボックスにはフライポテトも付いている。地味にこれも美味しい。
西本大紀











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