3月……それは一部の人達にとって師走以上に忙しくなる季節。そう、確定申告である。売れっ子ミュージシャンにとっては切っても切り離せない義務。しかし、ミュージシャン歴20年くらいの私(中澤)は確定申告をしたことがない。なぜか? 答えは簡単である。
音楽での収入がないから。別の仕事で生計を立てているミュージシャンは多いと思うが、その場合、音楽での稼ぎは雑所得になる。そして、雑所得は20万円を超えないと申告の義務がないのだ。
結果、生計を立てている会社の年末調整で事足りてしまうのである。そんな売れないバンドマンの私だったが、今年は確定申告をしてみようと思った。
・コツコツやってた結果
というのも、昨年2022年の音楽著作権使用料が19万6318円だったから。ギリギリ20万円はいってないが、来年は超えるかもしれない。スゲエ!
ここで音楽著作権使用料って何じゃいと思う人もいるかもしれないので説明しておく。これはざっくり言うと印税だ。自分が創った曲や歌詞がどこかで流れたりすると、それに応じて入って来る権利収入である。
・印税19万になった理由
では、なぜ、2022年CDを1枚も出していない私が19万6318円も収入があったのかと言うと、ライブで演奏された場合でも音楽著作権使用料が発生するから。以前の記事で地下アイドルに作詞したことをお伝えしたが、提供した曲をアイドルがライブでやるごとに作者に収入が入るのである。
つまり、この収入はアイドルがライブを頑張ってくれたおかげというわけ。マジでありがとう。これからも応援してる。で、こういった作者としてあるべき報酬を調査して集めて還元しているのがJASRACなどの著作権管理団体。
仮に、著作権管理団体に委託していない場合、これらは作者が自分で集める必要がある。ちなみに、ライブや配信における著作権使用料を払っているのは基本的にはアイドルサイドではないが、この辺はかなり込み入った話で脱線してしまうため、本気で自分で集めようという方は自分で調べてください。
・確定申告してみよう
そんなわけで、私の場合、年間の支払い調書もJASRACから送られてきた。と言っても、冒頭で述べた通り、確定申告をしたことがない私。一応、調べてみたのだが、ケースバイケースすぎて、まずどの書類が必要なのかすら分からない。というわけで、JASRACに行ってみた。
実は、JASRACではこの時期、会員向けに税務相談が開かれている。JASRACお抱えの税理士さんが確定申告の手助けをしてくれるわけ。もちろん無料である。
・税務相談した結果
予約して行ってみると、JASRAC3階の会議室に通された。講習会的なものではなく、税理士さんと向き合って一緒に申告書を作る感じのようなので、まず必要な書類を聞いてみたところ私の場合は以下の3点であった。
・著作権使用料の支払い調書
・会社の源泉徴収票
・株の年間取引報告書
このうち今回持ってきているのは著作権使用料の支払い調書だけ。というわけで、リスケしてもらい、会社の源泉徴収票と株の年間取引報告書を取得。株取引は興味本位で暴落株とか倒産株を買ったりすることがあるので、確実にマイナスかと思いきや9万4191円プラスだった模様。マジかよ。
・初めての確定申告終了
で、2度目の税務相談で10分くらいで申告書が完成。書類はネットで出力できたし、初めての確定申告は超簡単に終わった。どうやら環付される税金は1万6121円らしい。
なお、確定申告についてはe-Taxも導入されているが、今のところ、税務相談に訪れるミュージシャンの数は変わっていないのだとか。ミュージシャンはフリーランスも多いし、状況が千差万別なので、確定申告が煩雑になる人も多いのかもしれない。
ネットではなぜかハチャメチャに悪と言われるJASRAC。潜入してから4年が経ったが、実際かかわってみて感じるのはネットの声と現実の温度差である。
音楽の未来を潰す? 本当に? 少なくとも、売れないなりにいちミュージシャンを続けてきた者として見たことをそのまま言わせてもらえるなら、普通にミュージシャンのサポートをしてるよ。あの人たちは。
絶対悪はない。ゆえに、絶対正義というものがないのもまた事実。立つサイドによっては悪にでも正義にでもなりえるのが現実なので、特に、ミュージシャンで生計をたてることを目標とするなら実情を知った上で自分の考えで判断すべきだろう。そんなわけで来年は義務で確定申告したいものである。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.