
2022年8月に勃発した大家(管理会社)VS 私の立ち退きバトル。立ち退き料を支払わずに部屋から出て行ってもらいたい大家(管理会社)と、相場に見合った立ち退き料を受け取りたい私との間の争いについて、これまで第1話(絶望)・第2話(ブチギレ前夜)と紹介してきた。
今回は第3話。いよいよブチギレ編だ。といっても、キレたのは管理会社の方。まだ私はキレてない。まぁ近いうちに私もキレるのだが、あのときは平和的解決に向けて外交努力を続けていた。こんな風に……。
・前回のおさらい
第1話・第2話を知らない人だっているだろうから、最初に軽く前回までのおさらいをしておこう。
以前の内容と重複する部分もあるので、「知ってるよ〜」って人は記事をスクロールして『まとめると』の見出しあたりまで飛んでもらってOKだ。また、「何があったのかよく知らないが管理会社からのメールを早く見たい」って人も同じようにスクロールしてくれ。
まず最初に言っておきたいのだが、立ち退きバトルシリーズに登場するのは4人。私(和才)、私の相談に乗ってくれる弁護士のFさん、マンションのオーナー(大家)、マンションの管理会社の担当者である。
中でも管理会社がクセもので、仲介しているのかと思いきや全くもって中立ではない。完全に大家サイドに立っている……というか大家の代理人のような存在だ。
そんな管理会社から、2022年の8月に「おおむね6カ月を目処に部屋を出て行って欲しい」という旨のメールが私あてに送られてきた。
理由としては、大家(オーナー)が住みたいからとのことで、私がトラブルを起こしたわけではない。以降のやり取りを矢印でつなげてみるとこんな感じだ。
・流れ
管理会社から私のもとに退去依頼のメールが来る
↓
私が弁護士のFさんに相談したら「納得できる金額の提示がなければ退去要請に応じる必要はありません」との助言
↓
立ち退き料の交渉をすべく管理会社に連絡してみると、担当者からは「私が話をまとめましょう」との心強い返事。しかしメールの下の方に「立ち退き料は家賃の2〜4カ月分プラスαで打診する」との記載が
↓
立ち退き料の提示額を管理会社に勝手に決められて焦った私は、返事を保留。同時に弁護士のFさんに相談すると「今回のケースの場合、感覚的には家賃の6カ月分から交渉スタートで、そもそも大家さんが自分で部屋を使用する必要性が認められない可能性を踏まえると、さらなる上乗せが必要という感覚」とのお返事。
↓
管理会社と弁護士で意見が合致しないので、私が管理会社に「『立ち退き料は家賃の2〜4カ月分プラスαで打診』と記載されてましたが、なんで2〜4カ月なんですか?」とメールで聞いてみる ← 今回ここ
・まとめると
早い話が、私の認識としては「立ち退き料は最低でも家賃の6カ月分で、実際はさらなる上乗せが必要。ソースは弁護士のFさん」って感じ。一方の管理会社は「立ち退き料は家賃の2〜4カ月+α」との主張。
初っ端から見解が違うので、交渉を始めることさえ出来てないという状況だ。
このように意見の相違があった場合、溝を埋めるためには相手の言い分を聞かねばならない。なので私は管理会社の担当者に「なぜ立ち退き料は家賃の2〜4カ月分プラスαとお考えなのですか?」と下手(したて)に出て聞いてみた。
すると……
管理会社の担当者から結構な長さのメールが送られてきたのだが、私は書き出しを見て思わずビビってしまった。なぜなら、最初のメールとは雰囲気が全く違ったからだ。
以前にはあった「◯◯(マンション名)のご利用ありがとうございます」といった文面もなければ、ビジネスメールの定番「いつもお世話になっております」とか「ご連絡ありがとうございます」といった挨拶もなし。
「私の見解だけ先にお伝えをしておきます」から始まる文面は、明らかにキレていた。あまりにもブチギレているからか、管理会社の担当者自身が提示してきた立ち退き料に関して「根拠はない」という。開き直り方がすごい。
そして何より私がビビったのは……
「ケースによっては(立ち退き料を)まったく請求できないことも多数です」
「(立ち退き料が)0円となる可能性もゼロとは言えません」
──という文言。え? マジ? このケースで立ち退き料が0円とかあるの? もし0円になったら大損なんですけど。そうなると最悪だから、管理会社の言う「2〜4カ月+α」で妥協しといた方が賢いのかな?
……と数秒悩んだのだが、よくよくメールの文面を読むと、「怒り」と同時に別の感情を感じなくもない。それはズバリ「焦り」。
「0円になっちゃいますよ〜」という脅し文句の裏側でうごめく “ヤバい” という感情 。その焦りが特に爆発しているのが、最後の「この話が流れた場合、互いの反目により和才様が住み続けるに居心地が悪くなる可能性です(原文ママ)」の部分だ。
「交渉が上手くいかなければ あなたが住みにくくなりますよ〜」とほんのり脅してきているのだが、そもそも私は「立ち退き料が家賃の2〜4カ月分プラスαとお考えの根拠は何ですか?」と聞いただけ。
それだけで、「立ち退き料が0円になるかもだぜ〜」「住みにくくなるぜ〜」とまで言ってくるのは過剰反応すぎる。では一体なぜ過剰に反応するかといえば、焦っているからではないか。
高額な立ち退き料を請求されたらどうしようという不安。賃借人(私)が素直に従ってくれないイラつき。物件の管理を任されている大家(オーナー)の機嫌を損ねるのではないかという恐れ。
そのあたりが “焦り” を生んでいるのだろう……と考えた私は、「立ち退き料が0円になるかも」という部分はブラフ(ハッタリ)だと読んだ。ただ、確信は持てない。
そして、確信を持てないってのが管理会社の狙いでもある。ポーカーや大富豪と一緒で、相手のカードを見ないことには本当のところは分からないわけで、そうなると「立ち退き料が0円になるリスクが少しでもあるなら管理会社の言う通りにして……」と考えがちだからだ。
そもそも私がこんな事案に対応したのは人生初であり、対する管理会社は不動産のプロ。自分には経験がなくて相手は百戦錬磨だと思えば、不安だって大きくなるもの。
しかしながら、私には最強の味方がいる。弁護士のFさんだ。今回のケースで本当に立ち退き料が0円になることがあるのかFさんに直接聞いてみれば、いわば相手のカードを見られるようなもの。
というわけで、またしてもFさんに声をかけてみた。Fさ〜〜〜〜ん、管理会社の担当者が「(立ち退き料が)0円となる可能性もゼロとは言えません」と連絡してきたんですが、これって本当なのですか?
Fさん「立ち退き料が不要というケースは、ほとんどが賃借人の支払状況や使用状況に問題が認められるケースです。今回のケースで0円というのはほぼあり得ないと思います(何ごとも可能性があるという意味であればゼロとは言えませんが……)」
はい、予想的中! 管理会社の提案に乗らなくて良かった〜! とホッと胸をなでおろしたのだが、それにしても相手の言い方は巧妙だ。
メールの文面をよく読むと「可能性がある」と言っているだけで、たしかに嘘はついてない。だがそれを言うならば、「明日地球が爆発する可能性がある」ってのも嘘じゃないし、「誰かが間違って私の銀行口座に20億円ほど振り込む可能性がある」ってのも嘘じゃないし、「私がグラミー賞を受賞する可能性がある」ってのも嘘じゃない。すべて可能性の話だからだ。
なにごとも言い方ってのは大事だけど、こういう方向で工夫しているとは……と妙に感心してしまうが、同時に管理会社への不信感は増大してしまった。
この管理会社とまだ交渉を続けなくてはいけないことを考えると、決して良い状況ではない。正直に言うと、ウンザリする。その気持ちを見越してか、Fさんからこんなアドバイスが。
Fさん「相手方の言い分については、立ち退き料算定の客観的な基準があるわけではないので、何か不自然というよりも単に見解の相違に近いともいえます。ただ、それならば立ち退き料が家賃の2〜4カ月という根拠は何かということをもう1度確認されてはいかがでしょうか」
なるほど。ただ見解が違うだけだったら、意外とあっさり解決するのかも。その相違ポイントを探るためには、もう1度相手が主張するところの根拠について聞いてみるしかないか。
──と思い直して、もう1度管理会社の担当者に質問のメールを送ってみたら……結果的に相手はさらにブチギレることになった。もはや火に油。
どうなったのかは次回またお伝えしたいと思う。長くなってしまったので今回はここまで。来週またお会いしましょう! それでは皆さん、良い週末を〜!
執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.
▼私が管理会社に送ったメール。見にくくて申し訳ないが、全文を確認したい人は拡大してどうぞ
▼私のメールを受けて、管理会社が送ってきたメール。明らかにキレてる……
和才雄一郎














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