やった……! ついに立ち食いそば放浪記が300回を達成した……!! 私(中澤)がこれほどまでに感無量となるのには理由がある。
ウマイそば屋を探して色んな町を放浪する立ち食いそば放浪記。このシリーズは私がロケットニュース24の記者になって始めた最初の連載企画にして1本目の記事であった。その時に、佐藤記者に言われた目標が300回だったのである。
苦節7年。書くのが嫌になったこともあったし、良い店が見つからないこともあった。もちろん、食べた店の数は300店どころではない。でも、やり遂げた。今、全て振り返った時、「ここは外せない」と思う都内の立ち食いそば屋が9店あるのでご紹介しよう。
・『韃靼 穂のか』小川町
シンプルにそばそのものに着目するなら『韃靼 穂のか』は外せない。オススメメニューは韃靼そばで、のど越しの良いそばが、辛めのつゆでさらにキレキレとなる味はぜひ1度味わってみて欲しい。
ここまで本格派で並盛(300g)が税込み500円というコスパも魅力。そばのウマさに関して、私はここよりウマイ立ち食いそば屋を知らない。オススメを聞かれたら、まず名前をあげる店である。
・『がんぎ』茅場町、三田など
オススメを聞かれたら、まず名前をあげる店パート2が『がんぎ』だ。濃厚な甘辛さのあるつゆもウマイのだが、特徴はなんと言ってもその食感にあると言えるだろう。口の中でプチッと弾けるような食感はパスタのようですらある。
しかしながら、味はそばの風味に彩られており、分類するならやっぱりそばだから脱帽だ。麺に関して、私はここまでオリジナリティーのある立ち食いそば屋を知らない。もりそば税込み400円というコスパも◎。
・『よもだそば』日本橋、新宿、名古屋など
そばに関して言うなら上2つがズバ抜けて印象的だが、必ずしも武器がそばだけではないのもまた立ち食いそば屋。『よもだそば』の武器はインドカレーである。繰り返す。立ち食いそば屋の武器が本格インドカレーだ。
それに代表されるように、そばメニューも「チーズそば」などインパクトのあるメニューが多く、天ぷらも一風変わった品揃え。しかしながら、今では名古屋にも出店しており、ある大手そばチェーンの関係者いわく「最も西に進出した立ち食いそばチェーン」なのだとか。
・『豊しま』飯田橋、春日など
『よもだそば』の件でも分かると思うのだが、立ち食いそば屋って、町のそば屋とかこだわりのそば屋とはまた違う存在だ。そば自体の質が高いことをそば屋の王道とするなら、邪道と呼べるような方法で力を獲得している店も結構ある。そんな邪道の代表が『豊しま』だ。
「元祖厚肉そば」はそばの上にホロホロに煮詰められた分厚い豚肉が乗った一品。噛むと、甘辛さが染み出す肉塊は有無を言わさず暴力的に味覚を支配してくる。
しかしながら、その肉の旨みが染み出したつゆはそばつゆらしからぬジャンキーなコクも兼ね備えている。まさしく、立ち食いそば界の大仁田厚と言えるのではないだろうか。
・『会津』綾瀬
肉がデカイと言えば『会津』も外せない。丼にフタをするような一枚肉は「肉そば」というシンプルなメニュー名からは想像がつかない。少しでも話題になろうという邪念があったら「超肉そば」とか命名してしまいそうだ。しかしながら、そういう邪念の無さも立ち食いそば屋の良いところ。
肉の味は『豊しま』と違いステーキっぽい噛み応えがある。ゆえに、肉の旨みも強めで、ガシガシした肉が好きな人にはこちらの方がオススメ。ちなみに、店は駅から離れているが、ロードサイドに佇む外観は夕日に映える “味” があり、立ち食いそばの哀愁が集約されていると言えるだろう。
・『そば政』六町
駅から離れているが外せない名店と言えば『そば政』である。足立区の南花畑4丁目にあり、近所に住んでいる人以外は電車とバスを乗り継ぐ必要があるこの店。おまけに、営業時間も気ままなので、入店難易度はかなり高めである。この辺りの詳細は実際に行った記事を読んでいただきたい。
しかしながら、その味にはハードルを乗り越えた価値があった。振り返ると、こういう道のりも味だったと言えるだろう。なにせ、立ち食いそば放浪記だしな。放浪したい人はチャレンジしてみてもいいかもしれない。確実に思い出にはなるだろう。
・『一〇そば』駒込
と言っても、やはりハードルが高すぎると通えない。「通える」という部分に着目したら、息をするのにすら気を使うようなこだわりの店もダメ。このちょうど良さも立ち食いそば屋において重要なファクターだと思うが、『一〇そば』はまさに通える名店。
フラッと入って食べたら安定のウマさと温もりがある。おまけに、鶏天がガッツリしているという楽しみも。誰が行っても心の隙間をちょっと埋めてくれるスベらない店と言えるだろう。
・『川一』秋葉原
そういったスベらない店の激戦区が秋葉原から御徒町周辺だ。『みのがさ』『かめや』『鶏だし そばうどん』と揃いも揃ってスベらんな~。だが、そんな中、私がオススメしたいのは『川一』である。
コロナ禍で休業していた時は心配になったものだが、再び営業を再開した時はガッツポーズしたものだ。名物が「いかそば」なのだが、そのコク深いつゆの味はまさに癖になる味。1度食べたら明日も食べたくなるようなスルメ感がある。イカだけに。
・『桂庵』水道橋、東銀座など
最後に、そば屋で忘れてはならないのが丼物だと思う。そば屋で食べるかつ丼ってなぜか美味しく感じるんだよね。そんな丼物において、ある特定の層に響く味なのが『桂庵』だ。
なんと、この店、新宿のインディーズ牛丼店として知る人ぞ知る『たつ屋』の系列。ゆえに、丼物は『たつ屋』のDNAを感じる味で激ウマである。そばも毎朝本店で打っているとのことで、キリッとしまった冷しでもイケる味。これぞ二刀流。1000円未満のセットメニューで、ここまで満足度の高いそば屋を私は知らない。
──以上、300店書いた中で、特に印象深かった都内の9店をあげさせてもらった。立ち食いそば屋というものを考える時、外せない要素を持つ9店だと思う。
もはや、北は北海道から南は屋久島まで放浪している立ち食いそば放浪記。ここまで続けられたのも読んでくれた読者の皆様のおかげと言える。そこでこの場を借りてお礼を言いたい。いつも本当にありがとうございます。
さすがに、都内は深刻なネタ不足に陥りつつあるが、見つかり次第更新するのんびりスタイルで今後も続けていけたらこれ幸い。目指せ前人未踏の400店。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.