一億総カメラマンなどと呼ばれる現代。気がつくとスマートフォンの写真フォルダは数万枚の写真で埋め尽くされている。撮影者の自分でさえ、いつどんな写真を撮ったのか忘れていることも多いと思う。

そんなときに役に立つのが写真の「検索」機能なのだが……iPhoneのAIの挙動がいろいろとおかしい。


・iPhoneの写真検索機能

ご存じのとおり、iPhone標準の写真アプリでは撮影日や撮影場所(位置情報の利用を許可している場合)から写真を探せる。

また、人物を自動識別して集めてくれる「ピープル」や、勝手にエモい音楽をつけて結婚式のムービー仕立てにしてくれる「メモリー」など、ときに「いらぬお世話だ」と思うような機能もある。すべてのiPhoneユーザーが、思い出はプライスレスのリア充だと思わないでいただきたい。

ともかく、いずれも過去に撮った写真を死蔵させず、簡単に探したり活用したりできる工夫と言えるだろう。

検索窓に「キーワード」を入れて写真を探すというオーソドックスな方法もある。筆者は仕事柄「いつ撮ったか忘れたけれど、手巻き寿司の写真がいますぐ必要!」といった曖昧な探し方が多い。

iPhoneでは “デバイス上の知能”、つまりAIを使って「あらかじめ分類していなくてもキーワードに当てはまる写真を自動で識別」して表示してくれる。

事前に設定しておかなくてもOKというのがポイント! iPhoneが勝手に「この写真、猫でしょ」「カレーライスでしょ」と分類してくれるのだ。すげー、賢い!

……と思っていたのだが、AIは完璧じゃない。人間だったら幼稚園児でも間違えないような誤りを犯すのがAIなのだ。


・バグってる

人間との認識のズレはまだまだある。「ハンバーガー」を検索したらスシローの寿司皿が出てきた。なるほど、丸いお皿がコンピューターにはバンズに見えたんだな。たしかに似ていなくもない。


ほかにも「魚」を検索したら……


生物としての魚だけでなく、姿を変えた魚料理も出てくるのは優秀。ただしやたらと昆虫が混入してくるほか、コーラ缶チキンの途中の生々しい鶏が出てきた。もしかして「グロいもの=魚介類」という認識なのか?


まだまだある。「鳥」を検索したら……


唐揚げが大量に出てきた。まぁ、間違ってはいないけれども。


「鹿」を検索したら……


よしよし上手く出たな、と思っていたら飼い猫の巨大なお尻がどーんと! お前たち、鹿なのかー!!


これはすぐに理由が判明した。「鹿」の関連ワードで「葦鹿」がサジェストされていることを発見。初めて見たのだけれど “アシカ” と読むのだそう。猫の豊満な下半身がコンピューターにはアシカに見えたんだな。

漢字の国の日本人でさえ思いつかない抽象的かつ高度な関連づけをやってのけるiPhone。かえって真実から遠のいている気がする。


どんどんいこう。「動物」を検索したら……


国民的猫型ロボットが……! まぁ、ある意味では動物と言えなくも……


同じく「動物」を検索しようとしたら、関連ワードで「単殻軟体動物」という言葉が出てきた。ここにワードが出るのは、少なくとも1枚はフォルダ内に該当の写真があるという意味。事実、20枚も保存されていることがわかる。

しかし断じてそんな写真は撮った覚えがないし、そもそも「単殻軟体動物」ってなにさ。



二枚貝だった。


最後によくある検索ワード「食べ物」を検索したら……


お食事中の方には見せられない汚物が! なんでそんなもの撮影してるんだと思われるだろうが、決して変態だからじゃない。愛猫の健康管理に必要なのだ。


ちなみに検索ワードは完全でなくてもいい。部分的に入れるだけで予測表示してくれるし、「あ」「か」など1文字でもいい。言ってみれば “iPhone任せ” のチョイスになるのだが、予想外のワードが飛び出てくる。

さ、されこうべ!? 確認したら過去記事で作った骨格模型だった。


「ぶん回し」とは……語感から想像するに技の名前、もしくは武器の名前だな。勢いをつけて人を投げる物理攻撃か、遠心力で人を殴る「こん棒」みたいな。(コンパスの和名だそうです。知らん)


やたらと「赤なす」をサジェストしてくるのが疑問。絶対撮ってない。

と思ったらトマトのことだった。なぜか全体的に使われている言葉が古風で、ほかにも「あけぼの(朝日や夕日の写真)」「おさじ(スプーンの写真)」「ぶどう酒(ペットボトルやグラスの写真)」といったサジェストが出てくる。


「ち」の予測表示で「わんちゃん」「ウサちゃん」はさすがに無理がある! 猫ちゃん、タラちゃん、お嬢ちゃん……無限に作れるだろ。


「いたずら書き」……すいませんね、渾身の塗り絵ですよ。


「ばったんこ」ってなに? シーソーのこと?


・実は便利な機能

Apple社の名誉のために記しておくが、メジャーなキーワードならかなりの精度を発揮してくれる。上記のような不可解な反応は一部で、賢さにびっくりすることの方が多い。

いますぐお手持ちのiPhoneを取り出して、「寿司」「ラーメン」などと入れてみよう。自分がこれまでに食べた(撮影した)ほぼすべての寿司やラーメンが登場する。

もしずーっとiPhoneユーザーで、写真を代々引き継いできたなら、かなり前までさかのぼれるはずだ。ある種のライフログとも言える。

AIは信用できん、自分だけの検索カテゴリーを作りたい! という場合もある。

もしmacOSの入ったパソコンをお持ちなら、「キーワード」機能を使ってタグを付与できる。たくさんの写真を一度に選択して「ブログ用」「仕事関係」などと独自の分類ができるので便利だ。いつも同じキーワードで統一しておけば、たとえば仕事用に撮影した写真だけをズラッと一覧できる。

iPhoneの場合はキーワードの代わりに「キャプション」(見出し、説明文)を追加して検索に活用できるのだが、パソコンに比べると利便性は少々落ちる。

前述のとおり、AIを活用した検索には事前のキーワード設定もキャプションも不要だ。実用目的だけでなく、適当に検索してみても楽しいので、ヒマつぶしにぜひお試しあれ。

なお、記事内で使用したのはiPhone 12 Pro Max(iOS15)&MacBook Air(macOS Monterey)。お手持ちの機種で再現できない場合はどうかご容赦願いたい。


執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.