近畿大学は何を隠そう私(中澤)の母校である。通っていたのは20年くらい前だが、当時は全身トロのマグロの養殖に成功したことが話題になっていた。赤門を入った右手の池にいたコバンザメを見ながら同級生のI田君と「近大マグロ食べてみたいな」と話した記憶がある。

とは言え、学食で食べられるわけでもなく、せっかく近大が話題になっていて近大生なのに見れないというのがなんか悔しかった。一介の学生はお目通りさえかなわなかったのである。そんな近大マグロ様が……あの近大マグロ様が……東京駅で食べられるだとッ!?

・近大の養殖魚専門店

そのことを知ったのは大阪に里帰りする時のこと。新幹線に乗る前に駅弁を買おうとしたら、東海道新幹線の改札に1番近い駅弁屋がほぼ売り切れになっていた。そこで駅弁を探してその一帯をぐるりと回ってみたところ、見つけてしまったのである。

『近畿大学水産研究所はなれ』を。


近大の養殖魚専門店だという『近畿大学水産研究所はなれ』。その見た目は寿司屋みたいな感じだ。今って近大マグロこんなフランクに食べられるの!?

・出世魚

しかもここは東京駅構内。近大マグロの出世に胸が熱くなった。近大生の茶飲み話のレベルからこんなところに店を出すまでになって……近大マグロよ、お前もコツコツと頑張ってきたんだな

ならば、味を確かめねばなるまい。養殖とは言え、世間の荒波に20年間もまれたその味を。というわけで、入店して「近大紅白手桶寿司(税込み2200円)」を注文してみた。

・近大づくし

近大養殖のマグロ、マダイ、シマアジが敷き詰められた「近大紅白手桶寿司」。他のメニューにおいても基本的に使われている魚はこの3種のみのようだ。

魚の種類は寿司屋ほど多くはないが、味噌汁が赤だしで近大マグロの中骨エキスが入っていたり、シャリが赤酢だったり、食へのこだわりは負けていない。ちなみに、このシャリも近大農学部監修の「金賞健康米」である。

・いただきます

それにしても、ついに20年前話していたことが現実として目の前に現れたわけだ。あとは私が箸を動かしさえすれば食えるのである。あの近大マグロを! それでは、心していただきます!! パクリ


普通だ……!

普通すぎて逆にビックリした。そりゃそうか。近大で養殖されたというだけで、このマグロは別にウマさを求めたものじゃないんだから。なんならスシローのマグロの方がウマイ。うん、それは間違いないんだけど……

なぜだろう? もの凄く味わい深く感じてしまうのは。ひと噛みごとにフラッシュバックするように思い出されるうだつの上がらない日々。「マグロ食いてー」ってだけの話でゲラゲラ笑えたあの頃。20年……思えばずいぶん遠くまで来たものである。赤門 -I田と僕と、時々、マグロ-


というわけで、近大マグロは近大に関係ない人には普通の味かと思われるが、マグロ以下だった元学生にとっては激ウマであることが判明したのだった。全俺が泣いた。I田くん、元気かなあ。

・今回紹介した店舗の情報

店名 近畿大学水産研究所はなれ グランスタ東京店
住所 東京都千代田区丸の内1-9-1 グランスタ東京1F
営業時間 10:00~21:00
定休日 不定休

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼ちなみに、銀座と大阪にもある模様