カプセルトイを集めていると、当然ながら “ダブり” が出る。欲しい人とのトレードやフリマアプリもあるが、もっとも手軽なのは街のリサイクルショップに売る方法だろう。しかし、売られた商品はどうなるのだろうか。

月の新商品が250種とも300種ともいわれるカプセルトイ市場。1つだけバラで店頭にあっても、買い手がいるとは思えない。ぶっちゃけ、何年も売れ残るんじゃないだろうか。あるいは、ものすごいお宝が眠っている可能性も……?

そこでリサイクルショップにはどんな商品が並んでいるのか、実際に購入してみて「いつ頃の」「どのメーカーの商品なのか」を追跡してみた。


・投げ売りされていた

筆者の経験上、ホビー系のリサイクルショップでは1個からカプセルトイを買い取りしてくれる。しかし、先述のとおり商品の種類や販売時期にあまりに幅があるため、在庫の正確な管理や、タイトルごとの陳列は実質不可能と思われる。

筆者の訪れた店舗でも、全種が揃った「コンプ品」は別として、「よりどり○個で○円」などと投げ売りされていた。個別にきれいに包装はされているものの、商品名もない。

値札がすっかり黄ばんでしまっているところから、売り場に置かれていた時間の重みを感じる。この商品たちがどこから来たのか、ルーツを探ってみよう。


・エントリーナンバー1

ぱっと見、キャラクターのフィギュアのようである。内袋は未開封。これは気持ちがいい。


組み立てるとレトロな漢服を着た女性のフィギュアで、手には子豚の丸焼きをもっている。


なかなかの美人である。リアル寄りの顔立ちなので、特定のアニメ作品のキャラクターではなさそう。


実のところ、このアイテムの特定は簡単だと踏んでいた。よくカプセルに同封されている、解説ペーパーが残っていたからだ。動物なら血統書、骨董品なら箱書があるようなもの。この勝負、もらった。

同梱のシートから「中国宮廷料理フィギュアコレクション 満漢全席」の「No.11 給仕の女性」であること、超有名メーカー「海洋堂」の作品であること、原型製作が松本栄一郎氏であることなどが次々と判明した。

あとは販売元と、流通時期が判明すればミッション終了である。しかしペーパーの最終ページに、なぜか見慣れた「サントリー烏龍茶」の商品説明がある。なんかイヤな予感がする……。


インターネットで調べると、2006年に配布された「サントリー烏龍茶」の販促商品であることが判明した! おそらくペットボトルのキャップにかぶせて販売する、あの「おまけ」である。

カプセルトイじゃなかったぁぁぁ!


しかもよく見本と見比べると、真下に垂れ下がるはずの髪飾りが、重力に逆らうように跳ね上がっている! 長年の保管でクセがついてしまったのか……。もちろん15年のあいだ店にあったわけではなく、自宅で保管していた所有者が最近になって手放したのかもしれないが。

ちなみに筆者のものは人型フィギュアだが、それ以外は「金勾翅湯(フカヒレとナマコのスープ)」「乾焼大蝦(大エビのチリソース煮込み)」など中華料理のミニチュアで、全13種もあったらしい。「さすが海洋堂!」という仕上がりに見える。


すごーーーく欲しくなってきた。メルカリで全種4000円か……。


・エントリーナンバー2

気を取り直してエントリーナンバー2。高さ3cmほどの小さな小さなスプレー缶である。「Mushiyoke」「DANGER」などの文字がある。

「EN PRIME」の意味はわからなかったが、裏を見ると英語で「BONUS」とあるので「15%増量中」といったところだろう。外国製の虫除けスプレーであることは明らかだ。

金具の部分は、残念ながらサビが浮いたように白濁している。いつの商品かはわからないが、経年劣化は否定できない。

解説シートがないので難航するかと思われたが、敵はここにも大きなヒントを残していた。アイテムの側面に「©2016 HTB」と著作権表記があるのだ! 北海道テレビ放送(HTB)に違いない。

というのも、HTBが販売する『水曜どうでしょう』フィギュアは現在「其の17」まで続く人気商品で、10月には新作プレミアムフィギュア(全7種)の発売も決定しているほどなのである。

BOX売りだとすればカプセルトイとはちょっと違うが、中身がわからないブラインド商品であることは同じだし、シークレットもあるので、セーフとみなしてインターネットで検索……

DVD予約特典だったー!!!!


「水曜どうでしょうDVD第24弾 ユーコン川160キロ~地獄の6日間~」の予約特典「虫よけスプレー ストラップ」であることが判明した。

そうか……。はためには優雅なユーコン川の川下りだが、水辺にヤブとくれば、大量の虫が発生する。当然トイレなどもないので、排泄は大自然の中である。あのときのスプレーだったか。


2つ連続して「カプセルトイではない」という結果だったが、店頭ではたしかに値札も売り場もカプセルトイを示していた。しかし店員さんは悪くない。似たようなトレーディングフィギュアは食玩や付録など、星の数ほどもある。1つ1つの買取品を、メーカーまで調べて査定はしないだろう。


・エントリーナンバー3

最後に登場したのは、たぶん「石」である。解説シートは同梱されておらず、クレジット表記も一切ない。今回1番の大物感を かもし出している。

ゴツゴツ、ザラザラとしたゴジラの肌のような質感。直径5cmほどの丸いかたまりで、ストラップがついている。カバンなどにつけるのだろう。

しかし押すとプニプニと弾力があり、その素材はゴムである。製造されてからどれくらいの年月が経ったのか、ちょっとベタベタするような気が……。

画像ではわかりにくいが、テーブルに触れた部分にも、ほんのり染みができている。


最近では「ただの石」を模したカプセルトイが発売されたりもしているから、きっとネタ系のアイテムだろう。さっそく検索していこう。検索ワードは「石」「キーホルダー」である。

ああ、違う違う! おしゃれな天然石アクセサリーがたくさん出てきてしまった。筆者が検索したいのは、宝石ではなく川原にあるような石ころである。


「石 カプセルトイ」「岩 おもちゃ」「石 ガチャガチャ」「岩 キーホルダー」など検索ワードを変えてみたが出てこない。


これがカプセルトイだとすると、色違いやテクスチャ違いなど複数パターンを展開しているはずで、どれか1つでも画像が表示されれば「これだ!」とわかる自信がある。しかし似たものも一切ヒットしないのである。

こうなったら奥の手、Google画像検索である。手持ちの写真をアップロードすると、インターネット上から似た画像を探してくれるシステムだ。メーカーの商品画像がヒットする可能性も高い。

世界中から「石・岩のキーホルダー」の画像が集まってきた。たしかにそっくりである!

お気に入りの岩石に金具をつけてアクセサリーにするというのは世界中で行われているようで、どれもシャレている。しかし「未読はありません」という最下部までスクロールしても、目的のものは見つからなかった……。


そういえばカプセルトイは、「こんなの出た」と人に見せたくなる特質があるから、SNSと親和性が高い。Twitterの画像検索をしてみるが該当なし。until検索をしてみても、「溶岩」「隕石」などと検索ワードを変えてみてもダメ。

さらにクレーンゲームなどの景品、いわゆる「プライズ」である可能性や、「一番くじ」などの賞品である可能性も考慮。まぁ、筆者なら1回1000円近くのクジを引いて賞品がこれだったら泣くが、作品に関連する超重要アイテムの可能性も捨てきれない。


しかし、現物はおろか、似たものもまっっったくヒットしないのである。万策尽きた……。


「ギブアップである」と記事を閉じようとしていたところ、筆者は突如、雷に打たれたように天啓を得た。そもそも「石」という前提が間違っているのでは? 「恐竜のうんこ」とか「海苔で全包囲したおにぎり」とか、まったく別のアイテムなのでは? 石という先入観を取り除き、くもりなき眼(まなこ)で見れば、アレに見える。


そしてついに……筆者は発見した。


脳裏にひらめいた「アレ」をキーワードに入れたら1発でヒット


これは2011年発売、NATURE TECHNI COLOUR MONO「キノコ ソフトストラップ2」の……


トリュフである!!!!


・結論

結論。リサイクルショップで投げ売りしていたカプセルトイ3種の正体は、飲み物のおまけ1点、DVDのおまけ1点、トリュフ1点である。

あなたや私が売ったカプセルトイも、10年後、20年後にこうして発掘され「なにコレ???」と誰かを困惑させるのかもしれない。まさに歴史の積み重ねである。その辺に置いておくとベタベタとゴムが溶けてきそうなトリュフを、筆者はそっとビニール袋にしまった……


執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
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