あなたの傍で~♪ ああ暮らせるならば~♪ 辛くはないわ~♪ この東京砂漠ゥゥゥウウウ! 上京して渋谷のスクランブル交差点を初めて見た時、私(中澤)の脳裏には、まともに聞いたことがない『東京砂漠』が流れた。「辛くはないわ」と言うことで、逆に辛さがにじみ出ているような歌詞である。
そう思う間にも、対岸から押し寄せる人の波にただただ圧倒される。心も体も嵐の海に浮かぶ木の葉のようだった。辛くはないわ。辛くはないわ。と、ここで素朴な疑問を覚えた。東京出身者って、初めてスクランブル交差点を見た時ビビらないんだろうか?
・予想
15年前くらいに覚えたこの素朴な疑問。今であればこう思う。そりゃビビるだろ、と。私の地元である大阪も大都市として数えられる街で大きいスクランブル交差点もあるが、渋谷のスクランブル交差点はハッキリ言って格が違う。
さらに、テレビで見るのと、実際そこに立つのとでは迫力も段違いだ。外国人が記念撮影するくらいだから、世界レベルで見てもあの規模と人ゴミが珍しいことが分かる。辛いと思うかどうかはさて置き、あの迫力にビビらない人はいないのではないか。
・中目黒生まれの回答
ふいに思い出した疑問から、そんなことを考えていると、タイミングの良いことに編集長のGO羽鳥が編集部に戻ってきた。GO羽鳥は中目黒生まれである。そこで初めて渋谷のスクランブル交差点を見た時のことを聞いてみたところ、以下のような回答が返ってきた。
GO羽鳥「特に何も思わなかった」
──嘘でしょ? いくら中目黒とは言え、あれ見てビビらないことあるんですか? むしろ、近いとその分見る年齢若いでしょ?
GO羽鳥「う~ん、正確には、渋谷に歩いていけるとこに住んでたから、小さいころから、父ちゃんととんかつ食いに行こうぜ的なノリで渋谷に行ってたのよ。だから、物心ついた頃には当たり前になってたんだよね」
──シティーボーイすぎて話にならねェェェエエエ!
・練馬区民の回答
GO羽鳥の話に地味にカルチャーショックを受けヘコんでいると、ロケットニュース24の創始者であるYoshioがやって来た。しめた! Yoshioは生まれも育ちも練馬区である。少なくとも、歩いて渋谷に行ける距離ではないはずだ。
そこで、それとなくYoshioに幼い頃のことを聞いてみたところ、テレビで見るような東京には別世界のような印象を抱いていたそうだ。渋谷のスクランブル交差点に初めて行ったのは中学生くらいの時とのこと。
いくらアホと名高いYoshioでも中学生の頃には物心ついているはず。で、どうでした? 初めてスクランブル交差点を見た時の印象は?
Yoshio「特に何も思わなかった」
──え? 練馬なのに!? 規模とか人ゴミにビビらなかったんですか?
Yoshio「まあ、こういうこともあるかーって」
感受性仕事しろやァァァアアア!!
Yoshio「っていうか、むしろ今ビビってるよ」
──なんでですか?
Yoshio「俺が初めてスクランブル交差点行った頃って、今ほど人いなかったんだよね。コロナ禍前まで、どんどんスクランブル交差点に集まる人が増えていったイメージ。昔は、外国人観光客を見かけるのも珍しいくらいだったから。もちろん、ハロウィンとかワールドカップとかで人が集まることもなかったし」
──とのこと。練馬区民は一周回って今渋谷スクランブル交差点にビビっていた。昔を知っているからこその衝撃。渋谷スクランブル交差点もまた変化しているようだ。
上京した当時、東京の冷たさの象徴のようだった渋谷スクランブル交差点。あの怖さは何だったのか? ひょっとしたらそれは、見知らぬ都会を鏡に自分の姿を見ていたのかもしれない。もう辛くはないわ。東京砂漠。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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