社会人になりたての頃、酒が入ると「腕相撲」をやりたがる先輩がいた。別の先輩が審判員となり、ギャラリーが集まり……気がつけば職場内で “勝ち抜き戦” が始まるのだ。体育会系組織の悪しき風習だろう。何も知らない新人は、泣く泣く片腕を献上することになる。

毎回 “腕自慢の先輩” が片手でビールをグビグビ飲みながら、新人をヒョイッとブチ倒し、憎たらしい顔で「それでもチカラ入れてるんかァ〜弱いのォ〜」と腹立つセリフを吐く……クソッ、こいつだけは必ずブチのめす。そう心に誓った。十数年前の話だ。

数年後、先輩方と対等に勝負できるようになった……という話をしたいのではなく、飲み会の度に調子に乗っている連中はまだまだいるに違いない。そこで今回は、被害者を救うべく、日本チャンピオンが在籍するアームレスリング教室で “腕相撲の勝ち方” を教わってきたぞ。

・俺だって弱くはないはず

やってきたのは、東京都小平市の『USKアームレスリングクラブ』。西武鉄道「一橋学園駅」から徒歩約10分の場所で、週2回活動しているアームレスリングチームだ。日本チャンピオンや各大会優勝者が多数在籍する名門クラブらしい。ほほー、腕が鳴るぜ。

というのも、こちとらガチガチの体育会系組織で長いこと鍛錬を重ねてきたスポーツマン。そこそこ勝負できる……どころか、道場破りをしてしまう可能性だってあるだろう。約束時間の21時過ぎ、明かりが灯っている道場をチラッとのぞいてみると……


ええと………



怖い怖い怖い。


あれれ、間違えてアメリカの刑務所に来てしまったようだ。だったらスグに引き返さないとね。どうも失礼しました〜。って、待て待て待て……


みんなアームレスリングやってるぅぅうううう!

雰囲気的には「全米一恐ろしい刑務所の自由時間」だが、どうやら本当に名門アームレスリング教室らしい。でも……怖ぇぇえええええええ! 

──いや、もしかしたら見掛け倒しかも。ここはいっちょ挨拶代わりに勝負しておくか。こっちだって元職場の先輩連中を葬ってきた実績がある。強さを見せつけたら名門クラブにスカウトされるかもね。よし……やってやんぜ。


レディ……


ゴー……

ウソだろおい。


ただのバケモンじゃねえか。アメリカのギャングも引くレベルの圧倒的パワー。ドラゴンボールZのフリーザ編で恐怖と絶望に涙を流したベジータの気持ちがなんとなくわかった気がする。これぞ真の恐怖と決定的な挫折……


フ、フリーザさん強ぇぇええ。


・練習に参加

しかし、瞬殺されても気分は晴れやか……これが競技としての腕相撲なのか。ビールを片手に強さを見せつける輩など1人もいない。スポーツマンシップにのっとった腕相撲、それがアームレスリングなのか! よし、このまま……


練習に参加させてもらおう。

その後、約1時間半ぶっ通しで「アームレスリング」を体験したのだが……いわゆる初心者と競技者の間には決定的な違いがあることがわかった。とりあえず今回は、アームレスリングの教科書1ページ目に書いてあるような基礎的な考え方や姿勢等を共有したい。

とは言っても、私もまだ1回教わっただけの超・超初心者なので、間違っている部分もあるかもしれない。参考程度にしてもらえたら幸いであります。


・腕相撲だけど「腕」の勝負ではない

ざっくり結論を言うと、アームレスリングは腕だけで勝負するものではない。脇をギュ〜ッと締めて相手に正対したら……握った手・ヒジ・肩の後ろをギチギチに固定する。


んで、基本的に目線はずっと拳(上級者は違うみたい)で、そのまま真横に倒れるイメージ。

腕だけで相手を倒さない。構えた姿勢と同じ姿勢のまま倒れるのだ。


ちなみに腕力に自信がある方の多くは、競技中に肩が前に入ってしまうらしい。すると握った手から肩までの固定が解けてしまい、腕だけのチカラに頼ることになる。ケガにもつながるから要注意だ。

最初のうちは、意識的に右肩を少し引いて構えるといいかも。自然と正対するだろう。


握り方にもコツがある。親指の付け根(ふくらんでいる部分)を思いっきり包むようにギュッと握るのが基本。


そして、小指側にチカラを入れて巻くのではなく、人差し指側にチカラを入れるイメージで倒すと相手が嫌がる(押し返しづらい)らしい。

他にも足を置く位置や練習方法など……お伝えしたいことは山ほどあるが、とりあえず上記のポイントを抑えることで、いわゆる “ただの素人” から抜け出すことができるだろう。さらに上級者を目指すならアームレスリングクラブへ。私ももっと強くなろうと思う。


・今回ご紹介したスポットの詳細データ

名称 USKアームレスリングクラブ
住所 東京都小平市学園西町1丁目19-13
時間 21時〜(火曜日・土曜日)

執筆:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.
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