みんなは「三国志」を知ってるか? 物語の出だしで劉備が母親のためにお茶を買いに行くんだけど、当時のお茶の葉(茶葉)はそれはそれは高価だったらしいよ。気軽にお茶が楽しめる時代に生まれてきて本当に良かったーーー! ラブ・お茶!!

……と、今日も大好きなお茶を飲んでいたところ、当サイトのYoshioが声をかけてきた。なんでも『伊藤園』の人に会ったそうで「摘みたての茶葉からお茶を作ってみないか?」と誘われたらしい。ふーむ、別にいいけど……アレ? 作り方が全く浮かんで来ないやん……!!

・作り方がわからない

お茶が大好きな私、P.K.サンジュンは、茶葉からお茶が出来ることは当然知っている。実は緑茶も紅茶も烏龍茶も同じ茶葉からできることも知っていたが「茶葉からお茶を作る方法」はサッパリわからない。天日干し? 焙煎的な? 普通にわからねえ……。


Yoshio「そうそう、お茶の作り方って実は知らないよね。伊藤園のカツノさんって人が教えてくれるらしいから行ってみれば? なんかわざわざ挑戦状をくれたよ。俺も知らないから一緒に行こうかな……アハハハハハ!」


キング・オブ・アホ上司は放っておくとして、挑戦状に記されていたのは日本屈指のお茶の名産地として名高い、埼玉県狭山市にあるお茶農園。しかも伊藤園の人が教えてくれるなら、ちゃんとしたお茶が作れるに違いない。よっしゃ、待っててくれよ、カツノさーーーん!

・カツノ登場

というわけで6月某日、狭山市のお茶農家さんにやって来た。都心から1時間ほどとはいえ、のどかでいい所だなぁ。勝手なイメージだけど、お茶農家の人も伊藤園の人も温厚なイメージがあるよね。カツノさん、今日はよろしくお願いしまっす!


あれ……。


めっちゃキレてるやん?


お茶農家さんの入り口で仁王立ちしていたのは、坊主頭の男性。Yoshioによるとカツノさん本人であることは間違いないようだが、以前会ったときは柔和な人だったとのこと。あれ、千利休が憑りついちゃったのかな? いや、利休だってこんなに怒ってないよね、たぶん。

それはどうでもイイとして、ここまで来ちゃったんだからやるしかあるまい。私も片言の英語で初見のアメリカ人とキャッキャやれるくらいのコミュニケーション能力は持ち合わせている。さあ、さっそくお茶を摘みに行きましょーーー!

・レッツ茶摘み

で、無言を貫くカツノさんとまずやってきたのは茶畑。お茶農家さんに摘み方を教わりつつ、1つ1つ丁寧に茶葉を摘んでいく。摘みたての茶葉はプリッとした弾力があり、手のひらからも鮮度の良さが伝わってきた。


ご主人:「いま両手いっぱいに茶葉をお持ちですが、それでちょうどお茶1杯くらいですかね。重さで言うとだいたい1 / 5くらいになっちゃうので、手摘みは本当に大変なんですよ」

サンジュン:「えええ! これだけあって1杯ですか? なんかお茶がメッチャ贅沢な飲み物に思えてきました。茶摘みのバイトとか絶対やりたくねえ。中腰だから早くも腰がヤバい」


普段は何も考えずに飲んでいたお茶が、まさかこんな贅沢品だとは。その後もお茶農家さんからお茶にまつわるトリビアを聞きながら楽しく作業していると、


カツノが来た。


私の目の前に立ちはだかるカツノさんは相変わらずキレており「カツノさんはどうして伊藤園に入社されたんですか?」「やっぱりお茶がお好きなんですか?」などと声をかけてもひたすら無言。見た目が鬼軍曹だし普通にこわいよ。

のどかな茶畑なのに地獄のような空気の中、茶摘みは無事に終了。茶葉は摘んだ瞬間から酸化が始まるため、美味しいお茶を作るにはスピードが超重要なんだとか。伊藤園も鮮度には特別なこだわりを持っていて、全国各地に「お~いお茶」専用の茶畑があるらしい。

だったら、今すぐ摘んだ茶葉をお茶にしなきゃ! この茶葉はもはや俺の子も同然──。待ってろカワイイ茶葉ちゃんたち! パパが美味しいお茶にしてあげるからね!!

・お茶作りスタート

というわけで、作業場をお借りしてお茶作りを開始! ホットプレートやら電子レンジやらが一式置いてあるが、まず何をすべきかさえわからねえ……。ちょっとカツノさん、そろそろ口を開いてくださいよ。というか、日本語がわからないのかな?


「……作って……みろ」


クララが立った! ……じゃないや、カツノが喋った!! でもそれだけかよ! 本当に伊藤園の人なのかも怪しくなってきたが、カワイイ茶葉ちゃんたちをこのまま放置するワケにはいかない。こうなりゃ自力で美味しいお茶を作ってやるぜぇぇぇえええ!

・完全にノーヒント

カツノは去り、ソロプレイで始まったノーヒントでのお茶作り。まずはホットプレートで茶葉を煎ってみることに。高温だとお茶の香りが飛んでしまう気がしたので、保温くらいの低温で少しずつ少しずつ茶葉の水分を飛ばしていく。

時おり香りを確認すると、確かに奥の方で緑茶の香りがするではないか。方向性は間違っていない……が、ホットプレート作戦は時間がかかりすぎる。そこで目を付けたのが電子レンジだ。

電子レンジで水分を飛ばしてしまえば、意外とあっさりカリカリのお茶になるのでは? その後も試行錯誤を繰り返しつつ、孤独なお茶作りは続く。そして終盤、ふと目をやると……


カツノが見てる。


普通におっかねええぇぇええええええええ!!


どうやら私が気付かなかっただけで、カツノさんはお茶作りの一部始終を見ていたらしい。それはそうだ、たぶんカツノさんも伊藤園の人だもの。並々ならぬ “お茶愛” があるに違いない。やがて1時間が過ぎようとした頃、P.K.サンジュン完全オリジナルのお茶が完成した。

・飲んでみた

ポイントは水分を飛ばしてカリカリになった茶葉を、すりこぎで粉砕したこと。するとどうだろう? これまでとは比較にならないほど、お茶の香りが立ってきた。こりゃ意外と一発正解あるんじゃないか? というわけで、お湯を入れて飲んでみることにした。すると……。


苦い。


めっちゃ苦い。


正直、ギリ「飲めなくはない」といった感じで、せっかくの新鮮な茶葉を活かし切れたとはとても言えない。すまん、俺のカワイイ茶葉たちよ……。自力で答えを探したら4年くらいかかりそうだぜ……? はい、迷うことなくギブアップです。

・カツノが動く

すると、おもむろに立ち上がったカツノさんが正解らしきお茶を持ってきた。私が作ったお茶とは見た目がずいぶん違うが、これは……? そのお茶を急須に入れ、丁寧にお茶を入れるカツノさん。ぶっちゃけ “緑が鮮やか” とは言い難く、絶対的に色が薄い。え、これが正解なの?

差し出されたお茶は、やはり色が薄い。それでもカツノさんの無言の圧を受け、一口だけお茶をすすってみることにした。すると……。


超ウマい♡


・感動的なウマさ

色こそ薄いものの、柔らかな香りと口当たりは、まさにフレッシュそのもの。茶葉の甘みが口いっぱいに広がる「宇宙で1番優しいお茶」である。ありったけの記憶を辿ってみたが、こんなに美味しいお茶を飲んだことが無い。

カツノさん、めっちゃ美味しいです! 自分ちょっと感動しちゃいました!! さあ、カツノさんも飲んでみて下さいよ!



「おいちい♡」


出会ってからおよそ180分、ついにカツノの笑顔キターーーー! カツノが笑った!! カツノが笑ったぞ!!!! てっきり笑顔のスイッチがぶっ壊れているのかと思ったが、お茶が見事にカツノの笑顔を取り戻してくれた! お茶のパワー偉大すぎィィィィイイイイ!!

・どうやって作ったのか?


──カツノさん、正解を教えてくださいよ。というか、本当にここにある道具だけで作ったんですか?

「ええ、そうですよ。電子レンジを使ったのは正解です。まずは茶葉をラップに包み、電子レンジで1分ほど加熱して蒸します。」

──3分もやっちゃったよ。

「苦みが強くなったのはそのせいですね。次に、蒸した葉をキッチンペーパーの上に重ならないように広げ、団扇(うちわ)で仰ぎながら冷却します。お茶の水分をふき取ったら、ようやくホットプレートの出番です。ホットプレートでゆっくりと熱を入れ乾燥させます。保温くらいの温度だったのは正解でした」

──だけど、ホットプレートだと全然水分が抜けていかないんですよね。

なので最初に電子レンジなんです。次にキッチンペーパーの上に取り出して、茶葉を手で揉みます」

──あ、茶揉みか!

「そうです。茶葉から味と香りが出るよう、加熱(ホットプレート)と茶揉みを10回ほど繰り返します

──えええ! 10ターンですか!?

「はい、手で揉んで茶葉から旨味や香りの成分を出してやるイメージですね。これだけやっても、さっき飲んでもらったくらいの色にしかならないんです。最後は、キッチンペーパーの上に茶葉を乗せて、10分ほど乾燥させて完成です」

──気が遠くなりますね。

「とにかく茶葉は鮮度が命なんです。新鮮な茶葉を迅速かつ丁寧に手間を加えて、ようやくお茶が完成するんですよ。その他にもブレンドや火入れ、ペットボトルへの充填など、言い出したらキリがありません。あ、それと、お茶を入れる時は、お湯の温度は80℃くらいがオススメです。甘みがあって美味しいお茶になりますよ」

──お~いお茶、1本700円にしましょう。


・キレていた理由が判明

ご覧のように、茶葉からお茶を作る工程はとんでもないカロリーがかかっていた。しかも乾物だと思っていた茶葉は「鮮度」を意識してスピード感を持って加工されていたとは、知らなかった。お~いお茶もこのような考えの基に作られているから美味しいんだな。メチャメチャ面倒なことは間違いないが、それでも作り方さえ知っていれば、やってやれないことはない。愛を持って、茶葉を扱えば、その苦労に見合うだけのお茶が完成する。お茶、なかなかヤバイぜ。


──ところで、カツノさん。なんでキレてたんですか?

「……」

──あれ、また黙っちゃった。

「いいですか……?」

──あ、はい。


「私、カツノじゃなくて “カクノ” ですから! いつ気付くのかと思ってましたけど、カクノですからね!! カ・ク・ノ!


──え! カツノさんじゃないんですか!? そりゃまた失礼しました!!


・カクノさんだった

本来、カツ……いや、カクノさんはお茶を愛する温和な人であったが、出だしから名前を間違えられてイラっとしていたようだ。それにしても何で俺は「カツノ」で覚えてたんだ? 誰から聞いたんだっけ?


「伊藤園のカツノさんって人が教えてくれるらしいから行ってみれば?」


「伊藤園のカツノさんって人が教えてくれるらしいから行ってみれば?」


「伊藤園のカツノさんって人が教えてくれるらしいから行ってみれば?」


Yoshio貴様ァァァァァアアアア!!!!!


その後、Yoshioをシバき倒したことは置いておいて、なんと伊藤園では生の摘みたて茶葉をプレゼントする狂気のキャンペーン、その名も「#茶畑エクスプレス〜あなたは生の葉からお茶をつくれるか〜」を実施するそうだ。

▼生の摘みたて茶葉をゲットしよう!  キャンペーンサイトはこちら

お~いお茶くんの公式Twitterをフォローして、該当のツイートをリツイートしたら抽選で24名の#茶レンジャーに“茶畑から摘みたての生の葉”をプレゼント! 作り方の説明書も付いてるから、興味がある人はぜひ応募して「おいちい♡お茶」をご賞味いただきたい。超大変だけど「宇宙で1番優しいお茶」を味わう絶好のチャンスだ。

というわけで、初めてのお茶づくり体験は非常に有意義な時間であった。真面目な話、今後、お~いお茶が5億倍くらい美味しく感じそうだ。その1本にメッチャ茶葉使ってますから! とんでもなく手間かかってますから!! カ……クノさん、本当にありがとォォオオオ!

参考リンク:「とどけ!お茶のチカラ」 お~いお茶|伊藤園
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.