思わず泣いてしまいそうな入場者特典、最終ポスター掲示など、終幕が迫る『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』。リバイバルはあるかもしれないが、もう彼らの新たな物語を見ることがないと思うと、筆者も惜別の念がこみ上げる。

そんな元・第3新東京市の市民の皆さん、特務機関NERVが配備した防災備蓄品はすでに食べただろうか。全国の映画館でも取り扱っていたので、きっと目にしたことがあるだろう。こんなアイテムである。


・「特務機関NERV指定防災備蓄品 レスキューフーズ」(希望小売価格:税抜1400円)

パッケージを見てもらえれば一目瞭然。なんとこちら「特務機関NERVが第3新東京市に対し防災備蓄品を指定して配備している」という独自の設定をコンセプトにした非常食。ラインナップはビーフカレー、牛丼、ビーフシチュー、中華丼、和風ハンバーグの全5種。

しかも、よくある「見た目だけ」のキャラクターグッズではない。製造しているホリカフーズ株式会社は、戦時中の日本軍への缶詰納入から、自衛隊の非常用糧食の製造まで手がける非常食のエキスパート。

作品の世界観を表現しながら、常温で3年6ヵ月保存可能、水や電気のない非常時でも食べられるというガチな防災食なのだ。

鮮やかなカラーリングにも理由がある。「箱が積み重なっていても、種類がひと目でわかるように」という工夫で、しかも「このパッケージの色は黄」などと文字でも示されたユニバーサルデザインだ。

パッケージのデザインにあたったゲヒルン株式会社では、初号機の紫色などお決まりのイメージカラーにする案もあったそうだが、「NERVが市民に配っている」というイメージを徹底的に追求した結果、現在のカラーリングになったという。(たしかに第3新東京市に初号機カラーがあふれていたらおかしい!)


・実際に食べてみよう

中身は食品のほか、発熱剤やレンゲ、紙ナプキンなど食事に必要なものがすべて入っている。


トレイのデザインまで「どこがどうとは説明できないけど、すべてがエヴァっぽい」のは秀逸!


中澤記者がレポートしたレスキューフーズと同じシリーズなので、詳細は過去記事をご覧いただきたいが、作り方はこうだ。同梱の加熱袋(ビニール袋)に発熱剤を入れて、食品を入れる。

外箱には断熱用のダンボールが組み込まれていて、そのまま調理ケースとして使うようになっている。

加熱袋に発熱溶液を入れると……


すごい勢いでモコモコと泡が膨らみ、蒸気が出てくる。この間、高温になるので箱を倒さないように、また蒸気の吹き出し口で火傷をしないよう注意。

調理時間は加熱20分+蒸らし10分で合計30分。基本的に放っておくだけでよい。

火傷に注意して取り出すと、ホカホカご飯である! 水道水も火も電気も一切使わないから、ライフラインが停止していても温かい料理が食べられる。実際にその立場になったら、どれだけありがたいだろうか。

ご飯をほぐして左右どちらかに寄せ、具材をのせればできあがり。


しかも普通に美味しい! レトルトの白米はどうしても食感に違和感があるものだが、ご飯と混ぜるタイプの主菜のおかげで美味しく食べられる。

こちらは牛丼バージョン。甘く煮た牛肉と玉ねぎ、ご飯がヒタヒタになるくらいの「つゆだく」で、こちらも美味しい。

銀色のトレイは調理の仕組み上、必然的な形状だと思うが、レーション(配給品)の無機質な雰囲気をよく出している! 作中の人物たちと空気を共有できたようで、かなり嬉しい。


・食事は世界を表す

思えば新劇場版にはいくつもの印象的な……もっといえば象徴的でさえある食事シーンが出てくる。手づくりお弁当、アンバランスな会食、ボロボロと崩れて不味そうなレーション、トレイに盛られた人工的なペースト。

シンの荒廃した世界に身を置くと、14年前の家庭的で微笑ましい料理のシーンが鮮やかな対比で思い出される。

食事の描き方がすごく豊かになったのは、監督の結婚が影響しているのでは……と勝手に思っているが、食べ物の描写はそこが「どういう世界か」を示す重要な要素だろう。

作品世界にひたるファングッズとして、さらに防災の実用品として、こだわりの逸品である。1食1400円(税抜)と決して安価ではないが、ぜひ全市民に手に取っていただきたい!


参考リンク:ホリカフーズ株式会社EVANGELION STOREゲヒルン株式会社(開発者インタビュー)
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]