最寄り駅まで1km。決して大繁盛の立地ではないのだが、千葉県市川市の古びた中華料理屋『ひさご亭』には、今日も客が代わる代わるやって来る。客たちがテイクアウトしていくのはほとんど餃子。そこで注文してみたところ……
これ本当に餃子かよ! 私(中澤)が見慣れた餃子とは全く異なる姿のものが出てきたではないか。子供の拳くらいあるんですけどォォォオオオ!?
・巨大餃子
6個で皿を埋め尽くすゴロゴロしたその大きさは、私が人生で出会った餃子の中で一番大きい。皮は揚げられているため、新種の春巻きと言った方がイメージが近いかもしれないが、店は餃子と言い張っているため一応揚げ餃子と言っておこう。
食べてみると、皮はカリッと揚げられていながら芯はモチモチだ。そんな皮をかみ切った瞬間、あふれんばかりに餡が飛び出してきてニンニクが先制パンチ。かなりニンニクがきいている。しかし、後から自然かつ優しい甘みが広がって舌を覆うため、豪快でありながら家庭的な匂いもした。
メーカーが作ったものほどカッチリしていないのだが、逆にそこに温かみを感じる。ちなみに価格は、3個で500円、6個で900円。価格だけ見ると安くはないのだが、餡がミッチミチなためむしろ満足感は高い。
・なぜデカくなったのか?
その証拠に、食べている途中も、代わる代わるテイクアウトする常連らしき人が訪れていた。初見の私にはインパクトを残しながら、常連にも飽きさせない満足感があるこの店の餃子。やはり鍵はその前代未聞のデカさだと思うが、店主さんに話を伺ったところ、自身が店を継いだ30年ほど前にはすでにこの大きさだったのだとか。
ネットでのバズ狙いでチェーン店がクソデカイ餃子を発売するのとは訳が違う。ずっとこのサイズって、言葉を選ばずに言うならサイズ感バグッてるだろ。一体この中華料理屋に何が起こったというのか? そこでさらに深く話を伺ったところ、衝撃の真相が明らかになった。
店主「初代は自分の義父なんですが、釣り好きな人でした。そこで作業を早く終わらせて夜釣りに行くために、餃子を大きくしたらしいです」
──え! そんな理由!? でも、なんで餃子を大きくしたら作業が早く終わるんですか?
店主「1個の大きさが大きくなると、餡の量は変えずに包む個数は少なく済むので」
──あ、なるほど。目的を考えると、ある意味合理的ですねそれ。
店主「そうしているうちに、その餃子目当てで来店するお客さんが増えたという感じのようです。この店自体は、67~8年前からやっていて、実は最初は駅前でやってたんですが、途中からここに引っ越してきました。それでもこの餃子についてきてくれる人がいるから、今さら小さくはできませんよね(笑)」
──とのこと。餃子がデカくなったのは、別に話題を狙ったものではなく、むしろ商売以外を重視した結果というのが面白い。世の中そんなものなのかも。
ちなみに、私にこの店の存在を教えてくれた千葉県民の友人は、10年くらい前に行って心に刻み付けられていたのだとか。キッカケはどうあれ、人の心にそこまで深く残る料理をクリエイトしたというのは天晴。大変おいしゅうございました。
・今回紹介した店舗の情報
店名 ひさご亭 市川大野店
住所 千葉県市川市南大野3-22-2
営業時間 12:00~18:30
定休日 水曜日
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
▼メニューは中華
▼食べきれなかった分は持ち帰りOK