ピクサーの最新作『ソウルフル・ワールド』がDisney+(ディズニープラス)で絶賛配信中だ。この作品、結論から言うと大・傑・作です! しかも、過去のピクサー作品とは一線を画す稀有(けう)な映画でもある──にも関わらず、世間ではいまいち話題になっていない。

その理由は恐らく劇場公開されていないから(※2021年1月12日現在)──しかも、Disney+会員でないと視聴できないからだろう。だがしかし! 会員でない人であれば本作を無料で視聴できることをご存じだろうか!? まずは本作の魅力をネタバレなしでご紹介しよう。

・【あらすじ】

ニューヨークに住むジョー・ガードナーは、ジャズ・ミュージシャンを夢見る音楽教師。ある日、ついに憧れのジャズ・クラブで演奏するチャンスを手に入れた直後に、運悪くマンホールへ落下してしまう。彼が迷いこんだのはソウル(魂)たちが暮らす世界で、彼自身もソウルの姿に……。そこは、ソウルたちが生まれる前に、どんな性格や興味を持つかを決める場所だった──。


『リメンバー・ミー』では “死後の世界” を描いたピクサーだが、本作では “生まれる前の世界” ──文字通りスピリチュアルな世界を描いている。ブッ飛んだ設定のように思えるかもしれないが それはあくまでも「舞台装置」の話で、本質的なテーマは別にある。


・「生きる意味」って?

ここで突然だが、読者の方に問いたい。「自分は何をするためにこの世に生まれてきたのだろう」と思ったことはないだろうか? あるいは「この社会で自分にできることはなんなのか」と考えたことは? 「何者かになりたい」といった上昇志向や、「他人から認められたい」という承認欲求を抱いたことは? 

自慢ではないが筆者は全てある。そして こういうマインドをこじらせまくると最終的に行き着くのが「私の生きる意味って何なのさ?」という疑問だ。

良い言い方をすれば「哲学的な疑問」かもしれないが、うっかりメンタルが弱っている時にこの疑問と向き合うのは危険だ。自分に自信を持てなくなってしまったり、人によってはよからぬ考えが頭をよぎったりする恐れもある。

そこで「考えるのやーめた!」とうまく現実逃避しても、この疑問はこびりついた天井のシミのように、いつまでも頭の片隅に残り続ける。「生きる意味」は、人生最大のミステリーと言っていいだろう(少なくとも私にとっては)。

ここで『ソウルフル・ワールド』に話を戻すが、本作はまさに「生きる意味・目的」をテーマに描かれている。……というか、1つの「答え」を提示している。しかもそれを言葉(セリフ)ではなく、映像だけで見事に表現しているのだ。

本編の内容についてさらに深掘りしていきたいところだが、ネタバレになるのでここまでにしておこう。しかし、コレだけは強調しておきたい──『ソウルフル・ワールド』は、この世に生きること全ての人々を全肯定する素晴らしい映画である──と。

ありがとうピクサー。私はもう、悩まない。


・感動のピークは「本編終了後~現在」まで

「なんだかムズかしくて重そうな映画だなぁ」と思った方もいるかもしれないが、笑えるシーンもたくさんあるので安心していただきたい。決して派手さはないが、ピクサーらしい遊び心があふれた楽しい作品だ。

また、即興で感情を表現する「ジャズ・ミュージック」も本作の重要なキーワードであり見どころでもある。演奏シーンはアニメーションであることを忘れるほど美しいので必見だ。

だが筆者が個人的にもっとも感動したのはジャズの演奏シーンではなく、ましてやクライマックスでもなく、不思議なことに「鑑賞後」だ。つまり本編が終わってから、である。

もっと言うと、映画を見終わってからこの記事を書いている今に至るまで「感動」がジ~ンと染み渡っているのだ。まるで漢方薬のように。何を言っているんだと思うかもしれないが、本作を見ればきっと筆者の言っていることの意味が理解できるかと思う。


・「子ども」より「大人」向き

1つだけ忠告をしておくと本作は決して子供向けではない。完全に大人向けの作品だ。なので『トイ・ストーリー』や『ファインディング・ニモ』と同じ感覚で子どもに見せるのはオススメしない……が、「教養」として見せるのはアリかと思う。子どもの人格形成にも良い影響を与えるかもしれない。


 

・無料で見られる

さて、本作はDisney+で配信中だが、同サービスを利用するには月額700円(税抜)を支払う必要がある。しかし! はじめて利用する人なら、初月は無料! とりあえず登録だけして初月無料期間中に退会すれば、その間に『ソウルフル・ワールド』を合法的に無料で視聴できるのだ。

まぁDisney+は超強力コンテンツが充実しているので退会せずそのまま継続利用することを個人的にオススメするが、それはまた別の話。ともかく、コロナ禍で気分が沈むことの多い今こそ多くの人が本作を通して希望を見出してほしい。きっと目の前に映る景色が変わるから。

参考リンク:ソウルフル・ワールド(Disney+)
執筆:ショーン
Photo:(C)2021 Disney/Pixar.