子どもの心を失わない大人へ贈る工作キット『大人の科学マガジン』シリーズ。当サイトでも何度か取り上げているが、人気のふろくの復刻版「ベストセレクション」から二眼レフカメラを作ってみた!

カメラって素人が作れるの? と疑問に思うが筆者には経験がある。過去にピンホールカメラを作ったからな。感光紙に像を結んで光をあてる、この基本さえできれば写真は撮れるはずだ。たぶん。というわけで挑戦してみよう。


・『大人の科学マガジン BEST SELECTION2 二眼レフカメラ』税別2980円

ふろくつきマガジンによくあるボックス型の書籍で、雑貨店や大型書店で購入できる。

読み応えのある冊子と材料のセット。冊子は組立説明だけでなく、エッセイ漫画家こいしゆうか氏のイラストで「二眼レフ撮影のコツ」が載っていて参考になる。それでは作業開始!

組み立ては、基本的にネジを締めるだけ。ドライバーまで付属していて、自分で用意するものはなにもない。しかも先端が最初からマグネットになっているドライバーで驚いた。至れり尽くせりで、これが一流のキットというもの。

素材はプラスチックなのだけれど、アンティークカメラ風に皮革っぽい模様を施しているのがニクい。

シャッター部分はあらかじめ組み上がっている。バネの力で、肉眼では見えないくらいの高速で窓が開閉する。

本体を押さえながらネジを締めていって、箱形にしていく。組立説明では「絞り板」「暗箱」「ファインダーフード」などと聞き慣れない単語がポンポン出てくるのだが、写真つきの部品一覧があるのでカメラの知識がなくても大丈夫だ。

画像を反射するミラーを取り付ける。全体を通して、慎重さが必要な作業はここくらい。ホコリや指紋がつかないように注意だ。

裏ぶたを取り付ける。カパッと開いてフィルムをセットする部分だ。だいぶカメラらしくなってきた。

最後にファインダーレンズと撮影レンズを取り付けて終了。難しいところはなく、作業時間は30分もかからない。キットとしては「超簡単」の部類に入るだろう。

手のひらサイズの二眼レフカメラが出来上がった。組み上がりの精度はばっちりで、ガタつくところもない。黒くてかっこいいな。

シャッターボタン……ではなくシャッターレバー。ここを押し下げると、一瞬だけ光が取り込まれて風景が焼きつく。


・撮影してみよう

別売りの35mmフィルムを用意。20年ぶりくらいにフィルムというものを扱った。先端を引き出して、ツメに引っかける。

そういえばデジカメの普及前は、必ずこの作業が必要だった。撮影の途中でうっかり裏ぶたを開けて感光させてしまう、というのもフィルムカメラあるある。フィルムの扱いを可能な限り簡単にして、誰でも失敗しないようにしたのが「写ルンです」だ。

カメラ上部の「ファンダーフード」が立ち上がって箱形になる。ちょうど水中をのぞく「箱メガネ」のような形だ。

のぞき込むとカメラ前方が映っている。ミラーを通しているので、左右反対の鏡像だ。ここでピントを合わせるのだけれど……なかなかに難しい。そもそもスクリーンに映っている画像もそれほど鮮明ではないので判断がつかない。

1枚撮影するごとに、手動でフィルムを巻く作業も必要。あえて巻かずに多重露光にもできるらしいが、単なる巻き忘れだと狙ったものが撮れていないことに……。

どれくらい巻くかも自分次第なので、目盛りを見ながら慎重にノブを回す。空回りしているな、という瞬間もあったので指先に力を入れて調整する。

そう、フィルムカメラには「やり直しがきかない」要素がたくさんある。ちょっとしたミスで写真をダメにしてしまうことになるのだ。緊張感があるな……。


・現像に出す

撮影が終わったら、写真屋に現像に出す。あまりに久しぶり過ぎて「現像ってどこでやってくれるんだ?」と検索してしまった。ビックカメラ、カメラのキタムラなどデジカメプリントを扱っているところなら、たいがいOKのようだ。40分ほどで受け取れるとのことで、そのスピードにも驚いた。

そうそう、写真屋が見るので、かつては「人に見せられない写真」は現像できなかった。明らかに失敗している写真も、写真屋はいちいち笑ったりはしないが、ちょっと恥ずかしかったものだ。


今回は現像・プリント代を合わせて1500円ほど。枚数が増えると倍々になっていくので、写真とは本当にお金のかかる趣味だった。今ならモニターで確認して上手く撮れた写真だけプリントすればいいし、なんなら自宅でプリントもできるもんなぁ。

さて、どんな写真になっているだろうか。仕上がりがわからないから、どきどきしながら受け取る。出来上がった写真は……


ピンボケだー!!!!


やはりピントは合っていなかった……


さらに室内で撮影した写真は、暗すぎてほとんど撮れていない。ちなみに使用フィルムはFUJIFILMスペリアプレミアム400(ISO400)だ。

けれども、けれども、なんともいえない “味” があるんじゃないだろうか。ふんわりと優しい感じがあるし、周辺部が暗くなるのもまたいい。あえてピントを外したアートに見えなくもない。


・難しいけれど楽しい

付属の冊子には「アウトフォーカス」「フィルター」「横向き構図」「モノクロ写真」「スクエア写真」など撮影のアイディアがたくさん。極めるとちゃんとピントが合った上で雰囲気のある写真が撮れるようだ。お手本写真はどれも独特のボケ感があり、少し色あせたようなノスタルジックな風合いだ。

失敗もまた味になる。フィルム二眼レフ楽しい! ただし「めちゃくちゃ金がかかる」ということを除けば。いずれ真面目に写真を勉強してみたいというのが筆者の目下の目標だ。


参考リンク:大人の科学.net
Report:冨樫さや
Photo:RocketNews24.