奈良の鹿たちが、観光客が減ったことでお腹を空かせているという噂は、まあデマですよという話は以前にした通りだ。鹿たちはきょうも元気に、自らエサを求めて市井を闊歩している。あっちをウロウロ、こっちをウロウロ。ウロウロウロウロ……

……ん? いや、待てよ。ちょっとウロつき過ぎではないか?? 「今までこんなところ来たことなかったやろ!」という、奈良公園から離れた場所でたびたび姿を見かけるようになったのだ。もしやエサを求めるあまり、行動範囲が拡大しているのではないだろうか。このままでは、奈良公園から鹿がいなくなっちゃうんじゃないの!? 

・奈良公園化の外に出はじめた鹿たち

鹿の勢力拡大について、そのように感じているのは記者だけではないらしい。SNSをのぞくと「こんなところにも鹿が!」という投稿を、頻繁(ひんぱん)に見かけるのだ。先日なんて、奈良公園から離れた民家の車庫で優雅に雨宿りしている鹿の写真を、知人がアップしていた。ちょっと、そこ人ン家や! 

奈良市民は日ごろから、鹿中心に生活している。鹿が道路を横切れば、例え信号無視することになっても鹿優先。庭の草を食べられようが選挙ポスターを噛みちぎられようが、文句は言わない。だって、文句を言ったってシカたがないからな。鹿は可愛いし、神様を乗せて来たとされる大切な存在だ。

なので、基本的には鹿が何をしていようと何処にいようと、問題ではない。問題ではないのだが、フトしたきっかけに「奈良公園以外の草の方が美味しい」とか思っちゃうんじゃなかろうか。このまま奈良を捨てて、外に飛び出してしまったらどうしよう。鹿のいない奈良なんて、アイデンティティの崩壊も良いところである。

心配になった記者は “奈良の鹿愛護会” に、問い合わせてみることにした。「鹿が奈良公園からいなくなってしまうような可能性は、ありますか」と。以前にも何度か紹介している通り、同会には奈良の鹿のスペシャリストたちが勢ぞろいしているのだ。

・いなくならないよ

電話対応をしてくださった同会職員いわく、やはり鹿の行動範囲は広まっているとのこと。鹿は怖がりな生きものらしく、人が大勢いる場所には積極的に出向かないそうなのだ。コロナ禍により観光客をはじめ、市民も外を出歩かなくなった。そのため、鹿たちは心置きなく出歩いているのだろうという話だった。

奈良公園からいなくなるのでは、という疑問に対しては「そんなことはない」と教えていただいた。そもそも現在の奈良公園は、人が暮らし始めるよりずっと前から、鹿の生息地だったという。人のほうが、鹿の住居に棲まわせてもらってるんだな。

柵がある訳ではないので、もちろん外に出ることはあるだろうが、生息地が大きく変化することはないようだ。それを聞いて、ほっと一安心。とんだ杞憂だったようだ。考え方が、人間目線過ぎたというべきかもしれない。鹿たちよ。どうか今後も人間は大人しくしているので、この地で健やかに暮らしてくれよな! 

Report:K.Masami
Photo:Rocketnews24.
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▼色んな場所でシカの姿を見かける。たいてい人ン家の草を食っている

▼とは言え、奈良公園からいなくなることはないようで安心

▼オマケ・割と横断歩道に忠実な奈良の鹿

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