気づけばすっかり春である。部屋の中からぼんやりとした東京の空を眺めるたび私(中澤)は思う。「誰がこんな春を予想しただろうか」と。街から人が消え、店は潰れているという。
外出自粛のテレワーク中である私。必要な用事で外出したある日、昼ご飯に御茶ノ水の立ち食いそば屋『明神そば』に立ち寄ったところ、小さな春を見つけた。
・良心的
飲食店が立ち並ぶJR御茶ノ水駅前通りにあるこの店。学生街でもあるためか、かけそば税込300円をはじめ、多くのメニューはワンコイン以内におさまる価格だ。
『天ぷらそば(税込430円)』を注文したところ、「どうぞ!」と出てきたのは深く大きい丼。しかも、結構なみなみと入っている。さすが学生街、良心的なコスパである。
・優しさに包まれる
だが、優しさを感じるのはコスパだけではなかった。食べてみたところ……
甘めのつゆが舌を優しく包む!
それはまるでカーテンを開いたら静かな木漏れ陽が差し込んでくるような味。ふわふわのかき揚げからじゅわっと染み出す優しさが心の奥にしまい忘れた大切な箱を開く。
・まぶた閉じればそこに
口の中に春が来たかのように。柔らかい光の中で菜の花が咲いているかのように! 目にうつる全てのそばはメッセージ。温かい……。
優しさに包まれたこのそば。一瞬だけだが、春の気持ちを感じることができた。春よ遠き春よ。まぶた閉じればそこに愛をくれしそばのなつかしき声がする。
(※本記事は緊急事態宣言が発令される前に取材したものです)
・今回紹介した店舗の情報
店名 明神そば
住所 東京都千代田区神田駿河台2-6-1
営業時間 月~金6:30~20:00 / 土6:30~15:00
定休日 日・祝日
Report:立ち食いそば評論家・中澤星児
Photo:Rocketnews24.