
あのころ女の子はみんなアユになりたかった。「私はアムロちゃん派だったもんね」と否定する人がいようと、そんな時代があったことは紛れもない事実なのである。
浜崎あゆみの波乱万丈っぷりは海外セレブさながらだ。彼女がゴシップネタを提供してくれるたびに「老けた」「太った」などと的外れな批判をする輩もいて、ファンとしては悲しい。「40歳を超えても歌っててスゴイ」と素直に思えないものだろうか。
するとアユの体験を基に書かれた小説『M 愛すべき人がいて』が、昨年の発売から累計発行部数16万部の大ヒットとなった。みんなやっぱり好きなんじゃ〜ん! さらに同小説はドラマ化も決定。昨夜の初回放送を、私はもちろん正座で鑑賞したのだが……。
・事実・小説・ドラマの違い
そもそも書籍版『M 愛すべき人がいて』を “浜崎あゆみの自伝” と思っている人も多いのではないだろうか。正しくは「浜崎あゆみ本人からの聞き取りを元に書かれた小説」である。本の冒頭には「事実に基づくフィクションである」との注意書きがあり、完全な事実と誤認しないようにしたい。
ただし小説では主人公アユについて、本文中に「浜崎あゆみだ」とキッパリ明記されている。また「M」の正体であるマサも「松浦勝人だ」と書かれているし、エイベックス、ヴェルファーレ等々、実在する名称が多く使用されているのだ。
対するドラマ版は冒頭に「小説にドラマオリジナルの要素を加えたフィクションです」とのテロップが流れた。事実を基にしたフィクションにさらにオリジナル要素を加えたフィクション……なんだかややこしいなァ。
・ヤバポイント①アレンジという名の違和感
そして放送が開始すると、すぐに違和感を感じたのは私だけではないはずだ。登場する人物や施設、グループ名など、全てが “微妙に” アレンジされているのである。それどころか「浜崎あゆみの物語である」ということすらも、初回放送では1度も明言されなかった。
また「放送で往年のヒット曲が使用される」との事前情報があり、楽しみにしていた人も多いだろう。確かにglobe、trf、篠原涼子などのヒット曲が多く放送されたのだが、妙なことにアーティスト本人ではなく明らかに別人の声で収録されたもの。楽曲は使用していいけどオリジナル音源はダメよ、というルールなのだろうか?
さらに “名前は変えられているけど実在のモデルが特定できる” というパターンもあり、「こんなん許されるのか」と驚くほどのヒドいアレンジをされている人物もいた。超有名人であるその人物は、初回放送においても間接的な功労者であるはずだが……コレいいんだろうか?
……といった具合に、歴史的真実を知ってしまっているがため、微妙なのか大胆なのか分からない「アレンジの多さが気になりすぎてストーリーどころじゃなくなってしまう」ということが最初の弊害である。
・ヤバポイント②田中みな実登場でギャグ化
設定は若干違うものの、大筋では原作本と大差ない……かと思われたのは序盤までのこと。オリジナルキャラたちの登場により、ドラマは一気に非現実の様相を呈する。
中でもズバ抜けたヤバさを放っているのが田中みな実演じるマサの秘書・姫野礼香だ。姫野の登場で展開は『家なき子』あるいは『ガラスの仮面』と同等レベルのドロドロを迎えるのだが……それが浜崎あゆみ本人の身に起っていると想像すると、ギャグにしか見えなくなってくる。
近年まれに見るプッツンキャラ・姫野を、なぜマサは秘書に任命したのだろう? サッパリ分からないけれど、みな実迫真の演技は必見ではあるぞ。
・ヤバポイント③「見てらんない!」ってなる
原作本にはフィクションも含まれているとはいえ、個人的には「わりとリアリティがあってアリ」という評価だった。しかしドラマ版はあまりにも、そこにドラマ性を追加しすぎている感が否めない。
フィクションを公言しつつも「ひょっとしてアユの実体験かも」と思わせるギリギリのラインを保っていた原作本。それに対してドラマは「そんなことあるかよ」「んな奴ぁいねぇよ」的展開のオンパレードだ。
特にラストシーンは相当キツい。「もう、見てらんない!」となった人は多いはずである。ここまで脚色されていれば、そりゃ実在人物の名前は使えないだろう。いっそ「アユとマサ」の名前も変え、完全な別の物語にすればよかった気もする。
初回視聴後、モヤモヤしすぎて眠れなかった私は本作品を「大河ドラマみたいなもん」と考えることにした。これは実在の人物を使った壮大なファンタジーなのだ。「歴史には諸説ある」という気持ちで臨むことが大切だ。
・ひとつだけネタバレ
……と、戸惑う部分はありつつも私はバリッバリの「あゆ直撃世代」。初回放送には胸アツなポイントも多くあった。特にテンションの上がったのが「マサが7回目の電話で初めてアユに『会おう』と言う」というシーン。
これが99年発売のヒット曲『appears』の歌詞にある「7回目の電話で今から会おうよって……」に通じるということは、アユ世代の99%が即座に気付くところだ。このシーンをむやみに強調せずサラリと流した演出は、粋であり非常にポイントが高い。今後の放送にも期待が持てるというものである。
主演・安斉かれんの単調ともいえる演技だが、 “田舎から上京してきた少女” のイメージとマッチしている気がするし、何より喋り方など含めてルックスが浜崎あゆみによく似ている。最終回を迎えるころには、この子が完全なアユに見えてくるのかもしれない。
また「マックスマサ」ことマサを演じる三浦翔平のカッコよさは異常である。浜崎あゆみが松浦社長に惚れた理由は、外見と別のところにあると個人的には思っているため、ここまでイケメンをキャスティングしなくてよかった気もするけど!
水野美紀演じるトレーナーの登場でますます現実離れした展開になりそうな次回放送。もしかすると心配するまでもなく、製作陣とて「笑ってください」と思っているのかもしれない。ともかくマサこと翔平を毎週拝めるというだけでも、ラストまで視聴する価値はあると言えるだろう。
『M〜愛すべき人がいて〜』の放送はテレビ朝日で毎週土曜23時15分から。abemaTVでの視聴も可能だ。
参考リンク:『M〜愛すべき人がいて〜』公式サイト、abemaTV
Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
イラスト:稲葉翔子
亀沢郁奈



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