新型コロナウイルスの影響で、各方面に多大な影響が出ている。学校は突然休校になり、トイレットペーパーをはじめとする紙製品の一部は売り場から姿を消し、テレワークで普段の業務を行う企業が増えている。実際当編集部でもテレワークを実施し始めてから1カ月が経過している。私(佐藤)はさまざまなコワーキングスペースを渡り歩いているのが現状だ。

音楽や演劇など、ライブ活動をしている人にとっては公演できないことが切実な問題となっている。会場であるライブハウスは予定がキャンセルとなり、それこそ死活問題だ。そんななか、東京・六本木のライブハウス「バードランド」は、3月初めの段階でお店をライブ配信・ライブ撮影用に時間貸しすることを発表。しかも無料で使えるというのだ。その決断に至った訳を聞いてみた。

・2020年3月3日、バードランドの発表

「生ライブ配信やライブ配信動画撮影をお考えのアーティスト様 六本木バードランドが無料でステージを提供いたします。政府からの「新型コロナウイルス感染拡大を防ぐためのイベントの開催自粛要請」について、弊店におきましても公演中止や延期等の影響がございました。

しかしこんな時こそ、弊店の役割を考え、今までご利用頂いた方々や全てのアーティスト・ミュージシャンも含め表現できる場としての提供を考えたいと思います。早い終息を願いつつ、皆様方の不安払拭も考え是非ご利用頂きたくご案内申し上げます。取り急ぎ3月の空き日程に限りとなりますが、ライブ配信(無観客)で、ぜひ今後のPR活動などにご利用下さい」(バードランドホームページより)


知人を通じてお店に連絡をすると、お話を聞かせてもらえることとなった。お店は六本木交差点から少し入ったところ、比較的新しいビルの5階にある。


のちに聞いた話によると、お店は創業46年。六本木から赤坂へと移転した後に、3年前に再び六本木に帰ってきたそうだ。建物もお店も新しく見えるが、老舗ライブハウスであることに間違いはない。


余談だが、今回のライブ配信について、私はちょっと他人ごととは思えなかった。というのも自分自身がバンド経験者であり、ライブ会場には随分お世話になった思いがある。そして、地元でライブやクラブイベントをやるお店で勤めた経験もあることから、予定がすべてキャンセルになるという事態に、背筋が凍るような怖さを感じるからだ。

「いつ終わるともしれない、この状況を、どうやって生き抜いて行こうか?」、そう考えているお店の人も多いはずである。そんななかで、無観客とはいえ、ただでお店を貸す。どうしてそういう判断に至ったのだろうか?


・なぜ無料で?

出迎えてくれたのは、お店のブッキングマネージャーと音響担当のお2人だ。ご挨拶もほどほどに、失礼と知りながら、いきなり質問をぶつけた。


佐藤 「現在とても大変な状況だと思います。無観客のライブ配信を無料で貸し出す、そのご判断はかなり早かったと思うんですけど」

音響担当 「2月末の段階で、3月前半のスケジュールが次々とキャンセルになってまして、正直なところ、戸惑いましたけど、半分思いつきでやってみようということになりました」


佐藤 「有償ならわかるんです、1時間いくらとかだったら。ただでさえ、スケジュールがキャンセルになっているなかで、無償は相当覚悟がいると思うんですけど」

音響担当 「そうなんですけど、表現する場を欲している人たちも大変だと思っているんです。それなら、無観客で配信する場として使ってもらいたいと思ったんですよね」

佐藤 「やっぱり勇気のいることだったと思います」

ブッキング担当 「不安ではあったんですけど、結構反響があって、予定は結構埋まってるんです」

佐藤 「おお! それはよかったです。利用されるのは常連さんですか?」

ブッキング担当 「いや、7割くらいは初めての方で」

佐藤 「それは意外ですね。じゃあPRにも一役買ってますね」

ブッキング担当 「そうですね。早い段階で決断できてよかったと思います」


佐藤 「音響環境・ネット環境ともに整っていると思います。お店ではライブ配信を積極的にやっている感じですか?」

音響担当 「それが正直なところ、そっち方面はちょっと疎くてですね。これを機に勉強しないといけないと思っています」

佐藤 「じゃあ、お店を利用される方々は、皆さん各々のYouTubeチャンネルや配信アプリのアカウントを利用されているんですね」

音響担当 「そうなりますね」


佐藤 「ちなみになんですけど……、自分もライブ配信やっても大丈夫ですか?」

ブッキング担当 「もちろんです! お店のスケジュール空き日はホームページに公開しています。1枠3時間(搬入撤収込み)、14時〜17時、17時〜20時、20時〜23時の3区分で利用頂いてます。空いている時であれば、いつでも」

佐藤 「マジっすか! じゃあ、ライブ配信やらせてください!」


という訳で急きょ決定!


佐藤英典完全ワンマントークライブ

~佐藤に関する10の事柄~


2020年3月17日18時頃から ロケットニュース24YouTubeチャンネルにて。会場六本木バードランド(無観客)



音響・照明以外はマジで1人。誰もいません!


そもそも楽器を演奏する訳でもないし、配信は自分のパソコンを使うので、音響を利用する意味さえないかもしれない。


当編集部のメンバーにも、誰1人として相談してない。いいんだ、いいんだ。どうせ普段から「うるせえジジイだな」くらいしか思われてないから。


そもそもテレワークで1番ノビノビしている時点で、自分でもわかってるんだ。協調性ゼロだから、人といると息苦しくて仕方ない。誰の助けもいらんのですよ。1人はイイ! 1人最高ッ! 誰に気兼ねすることもないのが1番じゃないか。やったるで~!!


…………でも、だいぶ心細い…………


何をやるか全然決まってないけど、絶対見てくれよなッ! なお、バードランドの空き状況については、ホームページを確認すると共に、お店に問い合わせをして欲しい。それから利用に関する注意事項を事前に良く読むことをオススメする。


取材協力:バードランド
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24