「物忘れ」、それは歳を重ねるごとに加速する、 “記憶のクリーンアップ” 現象ではないだろうか? 思い出す頻度の低い事象は、脳内の効率化を図るために、自動的に削除される。そんな気がしてならない。まったく老化とは恐ろしいものだ。
40代も後半に差し掛かった私(佐藤)は、随分前に失くしたと思っていたものを最近意外な場所で発見した。タバコを自販機で購入する際に使用する成人識別ICカード「taspo(タスポ)」である。見つけたので使ってみようと思ったところ、思わぬ事態に陥ってしまった……。
・もう1枚のカード
私がタスポを見失ったのはいつのことだろうか? いや、そもそもいつ作ったのかさえも忘れている。覚えているのは、JR新宿駅の南口、甲州街道の交差点に窓口があり、そこで作った。そのことだけは覚えている。それ以外のことは完全に忘れていた。
ある日のことだ、Suica(スイカ)を入れているパスケースを見ると、もう1枚カードが入っているじゃないか。
あれ? なんだコレ。スイカのほかに何か入れてたっけ? そういえば、このパスケースは当編集部のYoshioのハワイ土産だったよな。2014年だっけ、その頃にもらってスイカしか入れていなかったと思ったが。
あれ? これは。見覚えがあるぞ、もしかして……。
タスポじゃねえかー! お前こんなとこにいたのかーーーッ!!!!
驚いたことに、私は持っていた。毎日持ち歩いていた、タスポを。ずっと昔に自然消滅した彼女と、知らない間に一緒に生活していたくらいの衝撃だ、こんなことってあるのか!? あえて言わせて頂こう、奇跡であると。
しかも、有効期限は2020年11月になってる。なんてことだろうか、2人(佐藤とタスポ)の関係は終わっていなかった、ドラマやな。
これはもうタバコを買いに行くしかねえ! ちなみに私が現在愛喫しているのは、アイコスのヒートスティック「ヒーツ ディープ ブロンズ」である。
・コンビニで買うのは地味に手間
もう1度言おう、アイコスのヒートスティック「ヒーツ ディープ ブロンズ」だ。非喫煙者の人にとっては、「その名前はなんだ?」と思うはず。私も喫煙者でなければ、そんな長い名前を覚えられる気がしない。
実際、普段タバコを買う時に、コンビニで銘柄を伝えるのが面倒で仕方がないのだ。最近は取り扱い銘柄も増え、加熱式タバコはアイコスだけでなく、グローやプルームテック、パルズなどが登場している。それらの製品に加えて、従来の紙巻きタバコまであり、コンビニの品ぞろえは大変なことになっている。
タバコ取り扱い店舗では、レジ裏に100種以上のタバコが陳列されている。大抵は番号が振られていて、「○番を1個ください」という具合で注文する訳だが、行き慣れないお店だと、自分のタバコが何番なのかサッパリわからない。
さらに不慣れな店員だと、うまく意思疎通ができないこともある。きっと非喫煙者の店員の皆さんも、タバコの数の多さに面食らっていることだろう。気の毒に思いながらも、タバコを買わない訳にはいかない。
・自販機で買える!
タスポを発見した今、私はそのわずらわしさから解放される! なぜなら自販機で買えばいいからだ!! やったぜ、自販機でタバコ買っちゃうぜ! ということで近隣の自販機に行ってみると……
ない……、ヒーツのディープブロンズがない……。
ここにもない。メーカーによって取り扱い銘柄が異なるので致し方のないことだが、これだけ加熱式タバコの市場が広がっているのに、紙巻きタバコばかりじゃないか。
3つ目の自販機でようやく、アイコスのヒートスティックを発見した。
だが、私が普段吸っているものではなく、マールボロだ。でも、まあいいか、もう何でもいいや。吸えれば。
・完全に思い出した
よ~し、買っちゃうぞ~! まずはタスポをカードリーダーにかざす。
ピピ! と鳴って商品を選ぶことになるはずだが、ピピ! と鳴らない……。
すると、自販機はこう言った。
「このカードはご利用になれません。センターにお問い合わせください」
ハッ! 思い出した。完全に思い出したよ、タスポよ。
………私は思い出した………
………カードを失効していることを………
………3年間使ってないカードは、その効力を失うんだった………
………失効していたから、使わなくなったんだ………
………そのことをすっかり忘れていたよ、タスポよ………
私は改めて、冒頭に綴ったこの言葉を皆さんに送りたい。
「物忘れ」、それは歳を重ねるごとに加速する、 “記憶のクリーンアップ” 現象ではないだろうか? 思い出す頻度の低い事象は、脳内の効率化を図るために、自動的に削除される。そんな気がしてならない。まったく老化とは恐ろしいものだ。
~ 完 ~