街を歩けば『富士そば』に当たる。それほどに東京ならどこにでもあるこの店。そばチェーンと言えば富士そばという人も多いのではないだろうか。一方、関西ではこれが『都そば』になる。
大阪出身の私(中澤)の実家の前にも『都そば』があった。安い・早いで、本当になんでもない味なんだけど、たまに食べたくなるのは大阪生まれ大阪育ちの性(さが)なのか。そんな『都そば』が都心で食べられる唯一の場所を発見したので行ってみたぞ!
・帝劇地下
JR山の手線有楽町駅から皇居に向かって歩くと、お堀が見える直前、大仰なビルがそびえ立っている。入り口にはキラキラした俳優たちが写るポスター、そして看板には迫力ある4文字が書かれていた。「帝国劇場」と。
そう、その場所とは帝国劇場の地下街。ちなみに、地下街の入り口は帝国劇場の脇にあるので、帝劇が閉館していても入ることができる。
・ゆったりした店内
天井の低さに歴史を感じながらも地下街を進んでいくと、地下2階に確かに『都そば』があった。昭和の食堂を彷彿とさせる庶民的なオーラが懐かしい。毎月5・10・15・20・25・30日は玉子1個無料というサービスも良い味を出している。
入店すると、店内は机席が並んでいて結構広い。私の実家前の『都そば』はガチ立ち食いだったため、ゆったりした雰囲気はイメージとは違うが、正直ひと息つける方が嬉しいのは確かだ。
・そば屋でもうどん
ところで、地元の『都そば』ではうどん注文率がかなり高かった記憶がある。みんな当然のようにうどんを注文していた。多分関西つゆにうどんの方が合うんだと思う。
当時のことを思い出しうどんを注文。トッピングは、肉うどんか、揚げと天ぷらの乗った「都スペシャル」が良かったが、いずれもメニューにはなかった。ケースに並ぶ天ぷらも分厚く、私が大阪に住んでいた当時の『都そば』で見られたどん兵衛みたいなペラペラの天ぷらではない。トッピングに関しては東京流のようだ。
・選べるつゆ
そこで、春菊天うどん(税込430円)を注文。すると、店員さんに「つゆはどうしますか? 関東風? 関西風?」と聞かれた。どうやら、関東つゆと関西つゆが選べるようである。もちろん関西つゆ! よりつゆを味わうために今回は玉子を入れないことにした。
すると、東京のそば屋ではあまり見かけない透き通るつゆが登場。さっそく食べてみると、つゆはどこかボーッとした味……なのだが、そのお湯と紙一重の味は猛烈に『都そば』だ。
ひと口、またひと口と。飲めば飲むほどに大阪市内の風景が浮かんでくる。立ち並ぶ雑居ビル、ガチャガチャした商店街、飛び交う威勢の良い声……悔しさを食べて空元気で回っているような大阪の下町で、確かに私は青春を過ごしたのだ。
そんなつゆの味について店主に聞いてみたところ、「関西の『都そば』と同じ製法で作っている」とのこと。色々思い出させてもらいました。
なお、都心部の『都そば』はここのみだが、東京都内だと京成高砂駅にも出店しているもよう。『都そば』という名前に懐かしさを感じる人は行ってみてくれ。
・今回紹介した店舗の情報
店名 都そば
住所 東京都千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル B2F
営業時間 月~金7:30~17:30 / 土・祝11:00〜18:30
定休日 日曜日
Report:立ち食いそば評論家・中澤星児
Photo:Rocketnews24.