ハロウィンの起源はヨーロッパで、仮装やカボチャの風習はアメリカ生まれ。それをコスプレして大騒ぎするイベントへと昇華させたのは日本……というのが今のところ定説であるらしい。

欧米におけるハロウィンとは、日本より断然奥ゆかしいイベントだと伝え聞く。おそらく民家にはカボチャのランタンが飾られ、コウモリの帽子などをかぶった子供が「お菓子をくれなきゃ怒っちゃうぞ」とか言うのだろう。想像しただけで「素敵やん」となる。

今年の10月31日、私は奇しくもポルトガルを旅行中であった。渋谷は大騒ぎしているらしいが、こっちだって負けていられない。ハロウィンの元祖をレポートするため、お菓子を買い込み街へ繰り出してみたぞ!

・ポルトガルの渋谷

私のいるリスボンはポルトガルの首都なので、日本でいう “東京” とみて問題ないはずだ。ならばリスボンの “渋谷” はどこなのか? 下宿先の住人でポルトガルギャルのダイアナさんにきくと、リスボンで若者が集まるエリアはそう広くないとのことである。

ダイアナさんに「ハロウィンのイベントはどこで見られるか」と尋ねたら、「アンタも好きネ」とばかりにスマホで情報を教えてくれた。しかし……それらは “ハロウィン” の名を冠したライブやクラブイベント。俗にいう “パリピが騒ぐやつ” だ。

「そういうんじゃねぇんだよ。もっとこう、子供がパレードしたりとかさ」ときくも、「この日本人は何を言ってるのかしら」という表情である。仕方ないのでこれ以上のリサーチをあきらめ、 “リスボンのハチ公前” こと『ロシオ広場』周辺エリアを目指す。


・何も起きない

小さな路面電車でおなじみのリスボンは “ザ・ヨーロッパ” という街並みでありつつも、ロンドンやパリよりは庶民的な雰囲気が漂って気負わず散策できる。

日本と同様に “ハロウィンセール” を行ったり、ハロウィングッズを扱う店もあるにはあるのだが、日本より断然少ない印象。

ハロウィングッズを買った人たちはどこにいるのだろう……。

メインどころを1周し、3時間ほど経過しても街ゆく人々にはハロウィンの「ハ」の字も見当たらない。もちろん軒先にランタンなんか置いていない。平日だからと子供が下校する時間を狙ったが、やはりメインは夜なのだろうか……。


・起きない……何も起きない

ポルトガルの名物は焼き菓子だ。硬いパンがスタンダードなヨーロッパにおいて、ここでは柔らかい “菓子パン” が多く売られており、日本人には非常に嬉しい。特に有名なのは “エッグタルト” 。1ユーロ(約120円)前後で購入できる。

それにしてもハロウィンっぽいことは何も起きない。このまま『エッグタルト食べてみた』の記事に変更するプランがふと頭をよぎる。

“リスボンの渋谷” を抜けて “リスボンの新宿” まで足を伸ばしたがハロウィンの面影はない。時刻はもう夕方である。

裏道を歩いてみても何もない。


・そして誰もいなくなった

「パリピでいいから登場してくれ」という願いも虚しく、時刻は22時を回ってしまった。のべ7時間リスボンの中心をグルグル歩いた結果、ハロウィンっぽい光景は、商店のディスプレイにわずかに見られた程度であった。

いや……スマン。正確にいうと、ハロウィンの仮装をしている人もいた。とんがり帽子をかぶった子供や、ツノのカチューシャをつけた高校生。7時間で10人ほどと、私は確かにすれ違った。

しかし、彼らはみな家族と楽しげに手をつなぎ、どこかへ食事にでも出かける様子である。その仮装は決して “すれちがう他人” に見せるものではないことが、明らかに分かるのだ。そんな子供に「取材のため写真を撮らせてくれ」と、あなたは言えるだろうか? 私には……言えなかった。

ちなみにロシオ広場周辺には大道芸人の方が多くおられた。今回思いのほかハロウィンっぽい光景を拝めず少しガッカリした私であるが、考えてみれば一般人が大道芸人並みに仮装する日本のほうがちょっと「変わってる」のかもしれない。

薄暗い夜道を下宿先へ歩きながら、なんとなく周囲の民家から楽しげな団欒の声が多く聞こえる気がした。もちろん国によると思うが、ヨーロッパのハロウィンとは、日本のそれより『家族で楽しむイベント』なのかもしれない。現場からは以上だ!

Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

▼大道芸人と思われる『真っ白い女の人』は複数人おり、話しかければ答えてくれるが決して笑わないし動かない。『Mana様』っぽい存在なのだろうか