・宮殿にメールで聞いてみた
そもそもですが、観光地に飾られている絵って、近くに説明のパネルがあることが多いじゃないですか。「作者が誰で、モデルが誰で〜」的なヤツです。しかし、私が発見した絵の近くに、説明は一切ありませんでした。そのためか、ググると絵のモデルは「イエス・キリスト」だと思っている人が少なくないようです。
実際に私もそうだろうなぁと思っていたのですが、本当のところはどうなのか気になって仕方がなかったので、帰国してから宮殿に聞いてみることにしました。持っている英語力をフル稼働し、メールを送ったところ……!
返信が来たではありませんか……!
それを読むと……
絵の人はイエス・キリストではない!
では……
一体誰なのか?
その人物は……
ジョン・ザ・バプティスト!
つまり……
正解は……
ジョン・ザ・バプティスト!
……
……
……
「いや、誰やねん!」
──と、なった人も多いかと思います。私もまさにそうだったので調べてみたところ、日本では「洗礼者ヨハネ」という名前で知られているようです。そう言われたところで「いや、誰やねん」という人も多いでしょうが、Wikipediaを見たら……
あ〜
はいはい!
どことなく絵の人っぽい……気がしなくもないですね〜。そこで軽く調べてみたところ、洗礼者ヨハネのエピソードはキリスト教絡み。というか、キリスト教の歴史の中では割と有名な人のようです。
ただ、大変申し訳ないのですが、私は洗礼者ヨハネについて全く知りません。というか、宗教的なエピソードが絡むと、どこまでが本当でどこまでが “伝説” なのかよく分からないですよね。なので、洗礼者ヨハネについて気になる人はググるなり、知り合いの詳しそうな人に聞くなりしてくださいね。
とにかく、クイズの正解はジョン・ザ・バプティスト(洗礼者ヨハネ)でした〜!
・なぜキャミソールを着ているのか?
ここからは余談ですが、シントラ宮殿のスタッフは、この絵について詳しく教えてくれました。しかもわざわざ、ポルトガルから英語に翻訳して。
その親切な対応に感謝しつつ、超噛み砕いてポイントだけまとめると……こんな感じでしょうか。
「着てる服はキャミソールじゃないですよ〜。現代人はどうしてもそっち系を連想しがちですけど、違いますよ〜。ていうか、絵が描かれた時代(ルネッサンス期)、女性の服はこんなんと違いますし。あの頃の女性の服は、もっと長くてシンプルな感じでしたし。そもそも、絵の洗礼者ヨハネが着てるのは青いラクダの毛皮と赤いマントですし。
あと、服以外もめっちゃ女性っぽいなと思うかもしれませんけど、この時代は絵のモデルに女性を起用することが多かったんですわ。描きたい対象が男性でも、モデルは女性を起用することが多かったくらいで。まぁ、時代的な流行りってヤツですかね?
それからもう1つ。右手が指さしているのは、すごいざっくり言うならば羊ですねん。胸元を指さしているのと違いますからね! で、左手のリボンは、これまた超ざっくり言ったら聖書的なエピソードをアレしてますねん。ヨハネによる福音書1章29節「見よ、世の罪を取り除く神の子羊だ」とか、そんな感じですわ」
──どうでしょ? 当初は「なんでイエス・キリストが女装してんねん(笑)」と思っていた人でも、事情を知るとなんだか荘厳な気分になりませんか?
・牧師さんにも聞いてみた
ついでだからもう1つ余談を。この絵についてシントラ宮殿に問い合わせる前、私は日本の牧師さんにも絵の人物について聞いてみました。理由は単純に、「日本人が知っていたら、英語でやり取りせずに済むかもな〜」と思ったからです。そしたら……
──牧師さんでも「絵の人物 = イエス・キリスト」だと感じたようです。なので、このクイズは相当に難易度が高いと思いますよ。プロでもそう見えちゃうのですから。正解だった人は、美術史にもキリスト教の歴史にも詳しい人ではないでしょうか? 違いますかね?
参考リンク:Wikipedia「洗礼者ヨハネ」
執筆:和才雄一郎
Photo:Wikimedia Commons. / RocketNews24.
▼ちなみに、もらったメールに質問(女性的な特徴って服じゃなくて顔のことですか?)をしても丁寧に答えてくれました。シントラ宮殿の人、オブリガード!
▼そんな親切なスタッフがいる「シントラ宮殿」はこんなところ