その数値が出た瞬間、診察室に変な空気が流れた。1分前に「タバコは吸ってないです」と医師に告げたにもかかわらず、検査機器は発言を裏切る数値を弾き出してきたのだから。うん? なんで?

──それは私にとって2回目の禁煙外来でのこと。前回の記事で初回の様子をお伝えした際、約3カ月で5回通院することや、禁煙外来に行くたびに「呼気の一酸化炭素濃度検査」を受けることをお伝えしたのだが……覚えておられるだろうか? その呼気一酸化炭素濃度検査の数値が、明らかにおかしかったのだ。

禁煙外来での呼気一酸化炭素濃度検査を超噛み砕いて説明すると、「タバコを吸っているかどうかが一発でバレる検査」ということになるかと思う。タバコには200種類以上の有害物質が含まれており、有名なニコチンやタールの他に一酸化炭素もある。

つまり、喫煙後の呼気には一酸化炭素が含まれており、機器にフーーーっと息を吹きかけると、数値でバレてしまうのだ。タバコを吸っていない人は大体0〜7PPMらしいが、私がそのときに弾き出した数値は……



9PPM


ちなみに、タバコを吸っていない人でも検査の前に焼き肉屋等へ行ったりしていると、高い数値が出る場合があるそうだ。しかし私は、焼き肉屋にも焼き鳥屋にも寄った覚えはない。じゃあ、一体なぜ……?

念のために言っておくと、私は病院(お茶の水循環器内科)へ行く数日前から1本たりとも吸っていない。私のボケが始まっていて「吸ったことを忘れている」という可能性がゼロとは言えないが、吸った記憶は本当に無い。「記憶は無い」と言うと途端に嘘くさくなるな。しかし本当だ。本当に本当に吸っていないのだ


ここで!


医師の五十嵐健祐先生が教えてくれたのが「受動喫煙の可能性」。受動喫煙というと、「タバコを吸っている人の側にいることで副流煙を吸っちゃうヤツ」くらいに認識している人が多いかと思う。私もそうだった。

しかしながら、受動喫煙はそれだけではないらしい。当編集部の喫煙者・原田たかしを例にとって説明するならば、こんな感じだ。

原田は仕事中に何度か職場の喫煙所へ行き、タバコを吸う。その際、原田がどれだけタバコを吸おうとも、オフィスで仕事をしている人が煙を感じることはない。喫煙所と仕事をするスペースは、ドアで仕切られているからだ。

やがてタバコを吸い終えた原田は、仕事スペースに戻ってくる。

そして当たり前だが、原田は仕事中に呼吸をする。つまり……

息を吐く。


そして、同じ空間にいる私が……

息を吸う。


先生によれば、これも受動喫煙の1つだという。つまり、タバコを吸った後の喫煙者の呼気にも有害物質が含まれているため、たとえ喫煙所がドアで仕切られていても非喫煙者へのタバコの影響がゼロなわけじゃないのだとか。

もう少しだけ言うと、受動喫煙には副流煙による受動喫煙と、喫煙者が吐き出した煙(呼出煙)による受動喫煙の2種類があるらしい。副流煙だけが受動喫煙ではなかったのだ。しかも! その呼出煙から最低8時間も一酸化炭素が出ているという研究結果があるというからゾッとするではないか……。

このような弊害は最近メディアでもよく取り上げられており、たとえば西日本新聞が掲載している「【産業医が診る働き方改革】<14>呼気からの三次喫煙」もその1つなので、興味がある人は確認してみてくれ。


──そんなワケで、私にとって2回目となった禁煙外来は「受動喫煙の弊害」が何よりも印象に残ったのだが、かといって「数値がおかしかった原因は受動喫煙」と断定できた訳ではない。証拠はない。あくまで可能性の1つというだけである。しかしよく考えれば、私の職場は……


喫煙率がめちゃくちゃ高い!


そして、禁煙外来で呼気の検査を受ける20分ほど前まで私は職場にいたということだけ伝えておこう。それから最後にもう1度言っておきたいが、私は本当にその日もその前日も1本たりともタバコを吸っていない。証拠というわけではないが、日記を残しているから次のページで確認してほしい。

協力:医療法人社団 お茶会お茶の水循環器内科
参考リンク:ファイザー「禁煙外来」、西日本新聞NCBI(英語)
Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.