人は誰でも、自分のことがわかっているようでわかっていなかったりする。例えばファッションひとつとってみても、他人がコーディネートした方がしっくり来たりするものだ。
そこで私(佐藤)は、後輩記者のあひるねこのために、服を選んでプレゼントすることにした。彼は11月15日が誕生日だったこともあり、上から下まで完全コーディネートすることを試みたのである。とりあえず歌舞伎町に繰り出して、彼にふさわしい服を奮発してプレゼントしたところ……。
・可もなく不可もなく
普段の彼は、どちらかといえば控えめな格好をしている。可もなく不可もない。突然髪型を変えてみたり、季節がわりにイメチェンしたり、そういうことをあまりしないタイプの人間である。
面構えは悪くない、むしろイケメンの部類に入るだろう。そんな彼なら、多少派手な服を着ても見栄えするはずである。そう思って、歌舞伎町へと向かった。ここにこそ彼に似合うファッションがあるはずだ。
・大変優秀な男のために
私が訪ねたのは、1軒のメンズブティック。飲食街が立ち並ぶ雑居ビルの一角で、床面積はそれほど広くないものの、所狭しと服が陳列されていた。
せっかくのプレゼントなので、予算は決めずに彼に似合いそうなものを見繕ってみた。思えば、彼が当編集部に入ってからというもの その活躍はめざましく、記事を書くようになってからたった3年の間で高いテクニックを身につけ、主戦力として仕事をしてくれている。
私とは10年以上年齢差があるものの、学ぶところが多いのが正直な気持ちだ。そんな感謝の気持ちを形にしたいと思い、コーディネートを考えるに至った。
・メンズブティックで小一時間
小一時間悩み、ブティックのオヤジさんと相談しながら、購入した品々はコチラだ。かなりタイトなスキニージーンズ。
襟が特徴的なシルバーの柄シャツ。
裏地がセクシーでイカした、ボア付きのジャケット。
ポインテッドトゥ(つま先が尖っている)の白のドレスシューズだ。
・実際に着てもらうと……
さて、これらを携えて事務所に戻り、あひるねこの前で「ジャーン!」とお披露目をした。感情表現が控えめな彼は、いくぶん驚いた様子ではあったが、喜んでくれた。と思う。という訳で早速着替えてみてもらうと……。
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合うやん!
めっちゃ合うやん! 似合うやん!!
夜の街に出てみると、やっぱり合うやん。あひるねこの中に眠っていた、何かが目覚める……。
「あひるねこよ、人生の先輩としてお前に伝えておきたい。自分の限界は自分が決めるんや……」
「あひるねこよ、昨日はうまく行かなかったとしても、明日もそうとは限らないんだぜ……」
「あひるねこよ、自分を信じてやれるのは、自分だけなんだ。だから「自信」っていうんじゃないかなあ……」
「なあ、あひるねこよ。走れ、もっと走れ! もっともっと早く走れ!! お前にはそれができるんや! お前はそういう男やッ! ワシにはわかるんや!!」
という訳で、今回かわいい後輩、あひるねこのために使った金額はコチラ!
4万飛んで86円!!
あひるねこが喜んでくれたらええや。新しい自分を見つけられたら、ええやん! ステキやん!!
と思ったのだが……。あひるねこは真顔で服の入った紙袋を付き出した。
あひるねこ「コレ、大丈夫です」
え? 大丈夫? 大丈夫ってどういうこと?
あひるねこ「大丈夫です」
ヤバい、この真顔の時のあひるねこはマジでヤバい時だ。つまり大丈夫ではない時の顔。一度私は「殺意が湧く」と言われたことがあったな。これは受け取ってもらえない様子……。愛情たっぷりのプレゼントだったのに……。
すると中澤星児が……。
「僕、着ますわ!」
オーバーコートしか持っていない中澤が、すでに嬉しそうに着ているじゃないか。最近見ないほどの満面の笑みを見せている。
という訳で、結局かわいい後輩が喜んでくれて本当によかった。めでたしめでたし。
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24