本日9月23日は「不動産の日」である。これは1984年に「全国宅地建物取引業協会連合会」が制定したもので、秋は不動産取引きが活発になること、そして「ふどうさん(2・10・ 3)」の語呂合せから来ているという。

そこで今回は「不動産の日」を記念し、不動産のプロに「賃貸物件にまつわる疑問」をぶつけてみることにした。敷金や礼金など、我々一般人には理解しがたいことも多い不動産業界だが、知っておくと得をする “裏ワザ” も判明したので、ぜひ最後までご一読いただきたい。

・不動産のプロに聞く

話を聞かせてくれたのは、数年前まで不動産会社に勤務していたAさん(40代・男性)である。仲介業やオーナー業に10年近く従事していたというから、不動産のことを聞くにはうってつけの相手だろう。それでは以下でAさんとのやり取りをご覧いただきたい。

・家賃を安くする方法ってあるの?

──単刀直入にお伺いしますが、家賃を安くする方法ってありますか?

「ありますよ。それを理解していただくために、まずは不動産業界の構造を説明しますね」

──はい、お願いします。

「一口に不動産会社と言っても、大きく分けて3つの会社があります。1つは物件を所有するオーナー会社、もう1つは入居者をオーナーに紹介する仲介会社、そしてオーナー会社から依頼を受けて物件の管理をする管理会社です」

──ふむふむ。

「基本的に家賃を決めるのはオーナー会社です。なにせ物件の持ち主ですから。仲介会社に相場などを聞いて家賃決めの参考にすることはありますが、決定権はオーナー会社にあるんです」

──なるほど。

「つまり、家賃に関してはオーナー会社が安くすると言えば安くなりますし、NOといえば安くならないんです。賃貸契約する際、多くの人は仲介会社を利用すると思いますが、彼らに決定権はありません。オーナーと交渉してくれるだけです」

──では、オーナーと直接交渉しろと?

「それが出来たらベストですね。オーナー会社と言っても、何百棟も物件を所有しているオーナーさんもいれば、アパート1棟を所有していてもオーナーさんです。小規模な物件であれば、挨拶がてらオーナーさんにお会いして、直接値段交渉してもいいのではないでしょうか?」

──なるほど。オーナーに裁量があるんですもんね。

「その通りです。ただ、家賃を積極的に値引いてくれるオーナーさんはあまりいません。そんな時は空室が多い物件に狙いを定めるといいかもしれませんね」

──というと?

「例えば1棟10部屋の物件があるとします。そのうち9部屋が埋まっていたらオーナーとしても積極的に割引きには応じてくれないでしょうが、7部屋しか埋まっていなかったらどうでしょう? オーナーとしては空室にしておくのが一番もったいないので、少々安くても決めてしまいたいハズです」

──なるほどですね。

「その物件に何部屋の空きがあるかは、仲介会社に言って調べてもらいましょう」

──参考になります。

「あとは、仮に家賃が安くならなくても、エアコンや風呂、キッチンなどの設備については、比較的要求が通りやすいかと思います」

──どういうことでしょうか?

「部屋の中の設備はオーナーの資産なんです。入居者が退去した後も設備には資産価値があるので、オーナーとしては投資しやすいんですね。家賃を割り引いて実入りが少なくなるより、設備に投資して資産価値を高めたいと考えるオーナーさんは多いです」

──なるほど。設備に関しては入居を決める前にリクエストしてもいいかもしれないですね。他には何かありますか?

「あとは “フリーレント” ですかね。簡単にいうと家賃0円のことで、フリーレント1カ月なら1カ月家賃無料、2カ月なら2カ月家賃無料になるシステムのことです」

──ほうほう。

「フリーレントをウリにしている物件もありますが、とりあえずは入居の前に “フリーレントはつきますか?” と聞いてみるといいでしょう。先ほども言いましたが、オーナーからすると空室にしておくのが一番もったいない。1カ月後から家賃が発生すると考え、フリーレントを付けてくれるオーナーさんもいらっしゃいます」

・敷金、礼金の謎

──大変参考になりました。ちなみに入居の際、敷金と礼金ってかかるじゃないですか? あれって必要なんですかね?

「それも家賃と一緒ですね。オーナー会社が必要だと言えば必要ですし、必要ないと言えば必要ありません。ただ、礼金はともかく敷金を預かりたいオーナーの心情はわかります」

──敷金は返ってくるんですもんね?

「はい。オーナーからすると入居者の賃料未払いは頭が痛い問題です。そのために保証人もつけるんですが、実際のやり取りにはかなりのカロリーがかかります。万が一のために敷金だけは預かっておきたい、と考えるオーナーさんが多いのは理解できますね」

──それはわかります。ただ礼金はちょっと意味がわかりません。だって、こっちがお金を払うのにお礼っておかしくないですか?

「おっしゃる通りです(笑)。そもそも礼金は、昔の風習の名残りとも言われていますね。例えば上京する子供が借りる部屋のオーナーに対し、親が “どうか子供をよろしくお願いします” と渡していたケースも多いようなんです」

──あぁ、なるほど。

「なので、最近は礼金がない物件も増えていますよ。そもそもはお礼の気持ちなのに、最初から額が決まっているのも変な話ですよね。どうしても礼金を払いたくなければ、オーナーに交渉してみるといいでしょう」

──よくわかりました。他に入居の際、抑えられる費用はありますか?

「最近多い “保証会社” の加入料金も、やりようによっては抑えられます」

──おお、素晴らしい。

「簡単に言うと、保証会社はオーナーに代わって家賃の取り立てをしてくれる会社のことです。特に保証人が付かなかったりする場合、保証会社への加入を義務付けるオーナーさんも多いですね。相場は賃料の1カ月分です」

──ただでさえ金がかかるのに、さらに賃料1カ月分は大きいですね……。

「そうですね。ただ、これもあくまでオーナーの裁量なんです。例えばかなりしっかりした保証人が付いていれば保証会社への加入を免除するケースもありますし、極端な話、家賃を1年分前払いしてもらえれば、オーナーとしても取りっぱぐれの心配はなくなりますよね?」

──確かに。

「なかなか100万単位のお金を前払いできる人はいないと思いますが、例えば敷金を提示額より多く積んだりして交渉はできると思います。また、レンタルボックスなどの賃料が安い物件の場合は1年分前払いしてしまうのもありでしょう」

──月額5000円のレンタルボックスなら、僕でも払えそうです。

「月払いにして1年で実質13カ月分払うよりも、一括払いで12カ月分の方がお得ですから」

──そうですよね。

「とにかく、賃料や敷金、礼金、保証会社への加入などは、オーナーに全ての決定権があることは覚えておくべきでしょう。多くのケースでみなさんの窓口となる仲介会社には何の裁量もありません」

──ふむふむ。

「細かく言えば、オーナー業と仲介業を両方やってる会社もありますし、専任契約している仲介会社もあります。ただ、基本的に不動産業はオーナーが強い業界なんですね。特にお金に関する部分はオーナーの意向が絶対です。だって持ち主ですから」

というわけで、総合すると賃貸物件のお金にまつわる部分は「オーナーの意向が絶対」とのことであった。逆に言えば細かい決まりなどはなく「オーナーがイイと言えばイイ」とのことなので、できればオーナーと直接交渉を試みたいところだ。

多くの人が経験しているハズなのに、契約した回数が絶対的に少ないため、我々一般人からすると謎が多い不動産の世界。もし賃貸契約をする機会があれば、もう1度この記事を読み返しててから交渉にあたってみよう。

参照元:今日は何の日
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.