私事であるが、3月末に引っ越した。

2月初旬から部屋探しを始めたのだが、思いのほか難航。築浅じゃなくても少しでも広い部屋を……と思い、物件サイトでアタリをつけていても、なぜかサイトで見た希望の物件はぜんぜん内見させてもらえない。

いま都心は投資向け賃貸マンションの建設ラッシュ……。まったく頼んでなくても、とにかくゴリゴリに推されるのが新築マンション。不動産屋はなるべく新築マンションの空室を埋めたい事情があり、売り込みに必死である。

「未公開物件です」などといって、予算を無視した新築物件を紹介されまくった。その中には内見すると「えっ!?」と思うような物件もあったので注意喚起もかねて書いておきたい。

・とにかく焦らされる部屋探し

それが不動産屋の常套手段なのだろうが、ネットでアタリを付けた物件は「ついさっき埋まったようです」などと言って紹介してもらえないことが多い。

結局、希望条件を伝えてカウンターで不動産会社に物件を探してもらう形になるのだが、ことごとく条件とズレた物件を提示される。

こちらが断り疲れ、部屋が決まらないんじゃないかと焦りを感じたタイミングで提示されるのが「新築物件」。

「新築は敷金や礼金が安かったり、家賃が1ヶ月タダになるところも多いから」などと言われて強引に勧められ、断りきれず内見に行くことになった。


・オシャレ、だがしかし……

その新築物件は、オシャレな店が並ぶ人気エリアにあった。

いちばん上の5階にあって、広いロフト付き。しかもデザイナーズマンションだとか。希望条件より狭いが、ロフトを入れると希望の広さに近くなるという。

エントランスは小さいが、マンションの外観も洗練されている。ワクワクしながら足を踏み入れると……まずエレベーターがなかった。新築マンションで5階まで階段しかないとは。

しかたないので、階段で5階まであがるのだが、非常階段のような狭さで人ひとり通るのがやっと。手に持っていたバッグが手すりにガンガン当たって音を立てていて、この時点で嫌な予感がしたのを覚えている。

ちなみに同行した不動産会社の担当者も「エレベーターがないのは想定外でしたね」などと言っていた。いや、お前知らんかったんかい!


そうしてヒイヒイ言いながらたどり着いた部屋は……めちゃくちゃオシャレだったが、なんとなく違和感があった。ここで生活することを考えて部屋を見渡してみると不便そうなことだらけなのだ。

部屋の広さのわりに狭いキッチン、小さすぎる流しや洗面台、浴室のドアを開けたら居場所がなくなりそうな狭い脱衣所……。とにかく全部のサイズ感が妙だし、部屋の中にやたらと段差がある。

それより何より気になるのが部屋の圧迫感だった。その原因は紹介時にこの部屋のウリだとされていた4畳の広いロフトだった。


このロフトが中腰というより匍匐前進でもしないと奥に進めないような高さなのだ。

果たしてこのロフトをどう使えばいいのか……。ベッドを置いたら頭をぶつけそうだし、物置にしようにもハシゴしかないのでロフトまで荷物を上げるのが難しそう。布団を敷くか、匍匐前進の練習をするくらいしか思い浮かばない。


後から調べたところ、5階まで階段しかないと引っ越しや大型家具の運び込みの料金が上乗せになるほか、宅急便も上まで持ってきてもらえないことがあるらしい。というか、あの狭い階段で冷蔵庫やベッドを運ぶのは無理そうだ。オシャレさに全振りした結果、とんでもなく不便な生活を強いられるところだった!

ちなみにこのオシャレマンション、いまだに募集中の物件だらけであった。


・条件はいいのに空室だらけのマンション

そしてもうひとつ、立地も間取りなどの条件もいいのに、なぜか空室だらけのマンションがあった。1年半ほど前に建ったばかりなのだが、5割近くが空室だという。事故物件か?と思ったが、そうではないらしい。

気になるポイントがいくつかあった。まず、マンションの名前がめちゃくちゃダサくて「こぶとり爺さんハイツ」みたいな名前だった。反社会的な勢力が事務所を構えたりしないようにわざと変な名前を付けたりする……と聞いたことがあるが、それだろうか。

さらに通常、Webに掲載されているはずの部屋の内部写真がなぜかない。半分以上も空室なのに内装写真が載っていないとは、これいかに。ならば内見に……と思ったら管理会社が早めに営業終了してしまうところなので、今日は無理だという。


それでも不動産屋は強気で「3月は物件の取り合いなので、先に申し込みだけしちゃいますか?」「遠方に住んでる人は間取りだけ見て即申し込む人も多いですよ」などとまたしてもグイグイこられる。

なんとなく嫌な予感がして申し込むのはやめたのだが……。数カ月後にやっと公開された内部写真を見て、頑なに内装写真を載せない理由がわかった。


壁紙がめっちゃくちゃダサい英字新聞柄だったのだ。

100均で売ってるゴミ箱か、通販サイトで激安で売られているシャツのような、妙としか言いようがない英字新聞柄。そしてトイレや洗面所の壁紙はなぜか花柄。とにかくすべての部屋の壁紙が統一感のない柄物で、目がチカチカする……。

マンションの名前だけならまだしも、壁紙までダサいんかい……!

まあ貼ってはがせる壁紙でDIYもできるのだが、できればそんな面倒なことはしたくない。知人に話したところ「建材は高いからケチって安い余り物の壁紙とか使ったんじゃないか」と言っていた。


・部屋探しは大きな買い物

焦らせ攻撃に負けて、希望よりも高い家賃のうえに条件の合わない物件に決めかかっていたのだが、妙な部屋ばかりを紹介してきたチェーン系の不動産屋とは最終的に手を切った。

その後、専任物件をたくさん持っている地元密着型の不動産屋で紹介してもらえて、今は快適に過ごせている。

部屋探しは大きな金額がかかるもの。不動産会社との攻防は本当に疲れるが、妥協せずにいい物件を探してほしい。不動産屋は何件かまわってみること、そして物件は実際に見ることをオススメします。


執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.