集団心理って恐ろしい。大勢の人が右を向いていると、なんとなくつられて右を向いてしまうのが人情だ。今回は私(中澤)が現実に体験した集団心理の話。変なオッサンにつられて見ず知らずの人達と集団自殺しかけた話をしよう

・ぼーっと信号待ちする集団

事件が起こったのは仕事帰りの秋葉原。私は、昭和通り口を出てすぐの横断歩道で信号待ちをしていた。ここを通ったことのある人は知っていると思うが、昭和通りは高速に平行して走る片側3車線のかなり太い道路である。

私は、長い信号待ちに飽き飽きしながら、目の前をビュンビュン飛ばす車を眺めていた。周りには、同じようにぼーっと信号待ちをする人々で20人くらいの集団ができている。この信号の日常的な光景だ。

・突然の黒い影

そんな代わり映えのしない日常に疲れがプラスされ、さらに四散していく集中力。なんとなく信号機の方を向いてはいるが、もはや目に入っていなかった。と、その時! 私の後方から黒い影が突然飛び出した!! 何だあれは!? 鳥か? 飛行機か?

いや、オッサンだ!!!! そのままスタスタ歩いて横断歩道を渡り始めるオッサン。あ、ぼーっとしてから気づかなったけど、信号青になってたのか? それにしてもせっかちな人だなあ。つられて一歩足を踏み出す私

・ふと信号を見上げた

目の前にいたカップルも車道に踏み出す。向かいで同じタオルを持って騒いでた集団も踏み出した。そのオッサンの勢いに引っ張られて、全体的に動き出す信号待ちの集団。みんな信号機が青になってること気づかなかったんだなあ……。ふと車線側の信号機を見上げたところ……


青い……。


車線側の信号機にはグリーンの光が煌々と輝いていた。あれ? この状況で車線が青っておかしくね? そこで、再び横断歩道の信号機を確認してみると……

言い訳のしようもないほどに真っ赤っか。マジか! 踏み出した一歩に力を込めて前のめりになりながら急停止する私。前述の通り、ビュンビュン飛ばす車もいるこの信号。信号無視はガチで事故になりかねない。オッサンはどうなった!?

・止まらない集団

再び前に向き直ると、オッサンは中央分離帯を越えて対向車線を渡るところだった。まだまだ余裕で赤信号である。が、そのオッサンに引きずられるように、タオル集団は止まらず横断歩道を渡り始めた。その集団の移動を見て、止まっていたカップルも再び動き出す。危ねェェェエエエ!

車が来なかったから良かったものの、青信号のみを確認してトラックが普通に走ってきていたら集団自殺みたいなもんだ。あわや大事故の光景に背筋に冷たいものが走った。

・集団心理の恐ろしさ

何よりも恐ろしかったのは、1人の行動に多くの人間がよく考えず反射でつられてしまったこと。さらに、全体が動き出したことで、赤信号を渡る人がどんどん増えたことだ。全員で渡っても赤信号は赤信号。危険であることを忘れてはいけない。

そして、これは何も今回の横断歩道の話だけではない。ネットで大多数の声があふれ返る現代社会。集団心理に右向け右で塗りつぶされ、モラルハザードを起こしている例は多いように思う。あなたは誰かに先導されて赤信号を渡ってしまっていないだろうか。今一度考えてみて欲しい。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.