2018年6月29日、映画『ハン・ソロ / スター・ウォーズ・ストーリー』が公開される。レビューについてはこちらの記事をご覧いただくとして、今回は本作で監督を務めたロン・ハワード監督に単独インタビューを敢行してきたのでご覧いただきたい。
これまで映画「ダ・ヴィンチ・コード」の監督や、ドラマ「24」のプロデューサーなどを務めてきたロン・ハワード氏。ハリウッドでも指折りの人気監督は、果たして何を語ってくれたのだろうか?
・リスクは考えなかったのか?
ジョージ・ルーカス氏と親交が深く、エピソード1「ファントムメナス」では監督をオファーされたとも噂されるロン・ハワード氏。これまで直接的にスター・ウォーズに関わったことは無いものの、スター・ウォーズへの造詣が非常に深い人物であることは間違いない。
そんなロン・ハワード氏が、本作『ハン・ソロ / スター・ウォーズ・ストーリー』の監督を引き受けた経緯は少々複雑だ。というのも、当初の監督だったフィル・ロードとクリス・ミラーが撮影中に揃って降板、緊急登板したのがロン・ハワード氏だったのである。
つまり、ロン・ハワード氏は少ない時間と多くの制約の中で監督を引き受けたことになるが、果たしてためらいや迷いはなかったのだろうか? まずはその辺りから聞いてみることにした。以下でインタビューをご覧いただきたい。
──監督、お会いできて光栄です。俳優さんのインタビューも楽しみなのですが、監督のインタビューもまた違ったお話が聞けるので本日はとてもワクワクしています。
「どうもありがとう」
──それでは始めさせていただきます。私は本作品の制作が決定した瞬間「この映画を引き受ける人たちは勇気があるな」と思いました。なぜならハン・ソロは多くの人にとって思い入れが強いキャラクターで、制約が多いと思ったからです。
「ハハハ。それは確かにあるかもね」
──ましてや監督は緊急登板しています。とても勇気が必要だったのではないでしょうか?
「僕にとってはそうだな…… “引き受けちゃえ!” みたいな感じだったかな。撮影には後から参加しているし、確かにリスクはあったかもしれない。でも多くの仲間を助ける意味もあったし、ストーリーもとても気に入っていたからね」
──ふむふむ。
「それに今までの経験も活かせると思ったんだ。僕はこれまで多くの作品を手掛けてきたけど、大切なのは “リスクを取ることを恐れない” ことだと思っている。確かに勇気は必要だけど、挑戦しないという選択肢はなかったかな」
──おお、男気ありますね。
「僕は監督業を生涯の仕事だと思っているんだ。だからこそ同じことばかりしていても仕方ないしね。リスクを取らないと自分自身も、そして観客からも興味が失われてしまう可能性があると思うよ」
──めちゃめちゃカッコいいです、監督。
「ハハハ。でももちろんストーリーを信じていたし、きっと多くの人に楽しんでもらえると思ったんだ。この作品は観客へのリスペクトを込めて制作したつもりだよ」
──わかりました。ちなみに監督は元々スター・ウォーズはお好きだったんですか?
「大好きさ。なんて言ったって僕は1977年公開の “新たなる希望” をその週末にチャイニーズシアターで観たんだからね。土曜日午前の上映で、妻と2人で観に行ったことを覚えているよ」
──それは筋金入りですね。
「しかも2時間並んだんだよ。でも上映後も興奮が収まらなくて、妻に “もう1回観ちゃう?”って相談したんだ。それでもう1回2時間並んで観たんだよ」
──それはすごい。
「幸いなことにルーカスとはそれ以来友情が続いていて、僕はスター・ウォーズの裏側を知ることが出来た。ただこれまで監督として携わったことは無かったから、こんなクレイジーなチャンスが来るとは思わなかったよ」
──では大のスター・ウォーズマニアということですね。ちなみに本作で監督がお気に入りのキャラクターは誰でしょうか?
「やっぱりチューバッカさ。ハンとチューバッカを演出するのはとても楽しかったね。さっきリスクの話をしたけれど、確かに本作は観客にとってリスクがあるのかもしれない。でもいいこともあって、その1つが他のどの作品よりもチューバッカの出番が多いところさ」
──なるほどですね。確かにチューバッカの活躍するシーンは非常に多かったです。
「そういう意味で、ハンとチューバッカの関係を描き切れたとこにはとても満足しているよ」
──確かにチューバッカは濃かったですね。では少々違う質問をさせてください。監督は子役でデビューし、その後に映画監督になっていますよね。
「うん、そうだよ」
──それは本能に従ったということなのでしょうか? 特にこの時代は日本だけではなく世界中のスピードが速くて “変わっていくこと” がとても重要だと思っているんですが、監督はどう思われますか?
「監督業というのは少年時代からの夢だったんだ。子役として活動していたけど、自分では “監督が向いている” と思っていたんだよ。もちろん監督としてやっていけるってことは証明する必要があったけどね」
──ふむふむ。
「もちろん当時は “子役が監督だって?” って目で見る人がいたことも事実さ。ただ、チャンスが与えられて大当たりではなかったけど、大コケでもなかったから何とか監督としてのキャリアをスタートできたんだ」
──なるほど。
「君が言った “変わっていくこと” についてだけど、人間というのはそうシンプルじゃないし、極端に言えば1人の人間の中にも多くの性格が共存してることだってあると思うんだ。例えば僕の中には “リクガメ” と “イルカ” がいるんじゃないかな」
──リクガメとイルカですか?
「そう、1つはノロマだけど物事をゆっくりと慎重に進める自分。そして何事にも積極的で飛び跳ねるようにイキイキしている自分さ。生き物としては全く違うんだけど両方とも僕っぽいと思うんだ。だからどちらか1つを押さえつける必要なないと思うよ」
──さすがです、とてもいい言葉ですね。
「この作品も同じさ。ファンが知っているハン・ソロと知らないハン・ソロがいる。きっと楽しんでもらえると思うな」
──監督、非常にいいお話を聞かせていただきました。本日はどうもありがとうございました!
さすがハリウッドでも屈指の人気監督、一言一言に深みがありその都度「なるほど」と感心させられた。ロン・ハワード監督が自信を持ってオススメする『ハン・ソロ / スター・ウォーズ・ストーリー』は2018年6月29日公開だ。
参考リンク:ハン・ソロ / スター・ウォーズ・ストーリー
Report:P.K.サンジュン
Photo:(C)2018 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved. , 堤博之.
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▼これまで会ったハリウッド監督は全員が人格者。人格者じゃないと働けない世界なんだろうなぁ。