去年、チケット転売サイトの最大手「チケットキャンプ」が、突如サービスの停止を発表し話題になった。もちろんこれだけで転売問題が解決するわけではないが、転売行為への世間の風当たりが年々増しているのは事実だろう。それでも、転売ってのはなくならないな……と痛感する出来事が先日あった。

JR東日本が毎年開催しているJRスタンプラリー。今回、私(あひるねこ)は全65駅を1日で回るという過酷な企画に挑戦した。始発に乗り込み、かかった時間は14時間以上。まあとにかく苦労したのだが、そのチャレンジ中に目にしたのは、景品目当てと思われる大勢の転売屋たちの姿だったのである。

・全65駅を回るスタンプラリー

今年のJRスタンプラリーのテーマは「機動戦士ガンダム」。参加者は各駅を回り、そこに設置されたスタンプを1つずつ集めていく。65駅もあるのでかなり大変な作業だ。また、集めたスタンプの数に応じて景品がもらえるのだが、数が限られているため のんびりはできない。

このスタンプラリーを1日で制覇するため、私は朝、というか深夜3時台に起きて始発電車に乗り込んだ。とは言え、平日の早朝からスタンプラリーを回る人間なんてそうはいないだろう……。と思いきや、意外や意外。どの駅でも見かける参加者と思われる猛者たち。ただ、中には様子がおかしい者もチラホラと紛れ込んでいた。

・現れる転売屋たち

基本的に、スタンプ帳は1人1冊と決まっている。JR東日本がそう呼び掛けているのだ。にもかかわらず、1人で何冊もスタンプ帳を持った輩が、そのすべてにスタンプを押しているではないか。私には、彼らが転売屋であることがすぐに分かった。あらかた、景品のグッズをネットで売るつもりなのだろう。

忙しいなか時間を作り、数日かけてクリアした参加者が本来もらえるはずだった限定グッズ。それを彼らに不当に奪われているかもしれないことを考えると、怒りを感じずにはいられない。実際、オークションサイトには大量のグッズが出品されていた。が、私が暗澹(あんたん)たる気分にさせられたのは別の理由がある。

・崩れる “転売屋像”

私は、転売屋とは楽して金を稼ぎたい連中だと思っていた。しかし、どうやらそうでもないらしい。自分でやってみて分かったが、このスタンプラリーを1日でクリアするのは容易ではない。ほぼ休憩なしで、朝から10時間以上も常に動きっぱなしなのである。正直、仕事じゃなかったら絶対にやりたくないと思う。

それを、JRやガンダムのファンでもないのに始発に乗り、丸1日を費やして全駅を回り、やっと手に入れたグッズを転売する。そこまでする人間が、あんなにも大勢いるなんて。きっと彼らには、自分が悪いことをしているという認識すらないのだろう。苦労して一仕事を終えた、という達成感を味わっている可能性だってあるはずだ。

・転売はなくならない

もちろんこれは私の勝手な想像ではあるが、もしそういう人間ばかりなら、この先も転売行為がなくなることはあり得ないのではないか。なぜなら、彼らはそれを立派な仕事だと考えているからだ。この認識のズレは、いくら厳しく規制したところで簡単には埋まらないだろう。

何やらクレームがあったらしく、JR東日本は特設サイトにて、スタンプ帳の所持は1人1冊であると改めて強調。グッズの転売等を固く禁じる旨を掲載した(2018年1月11日)。つまり、転売行為は “悪” だとハッキリ言っているのだ。しかし、それでも転売屋たちにこの言葉が届くことは、おそらくないのである。

参考リンク:JR東日本 機動戦士ガンダムスタンプラリー 行きまーす!
執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.