みんな「ドラッグ」が危険なことは知っている。うすうす「最悪、死ぬ」ってことも知っている。だが、「どれがどれだけヤバイのか」は、実はよく知らないのではないだろうか? なぜなら日本という国は、どのドラッグもごちゃまぜにして、漠然と「危険!」「ダメ絶対」と警告するだけで終わっている感があるからだ。
さらに言えば、「実は危険なドラッグ」なのに平気な顔して社会に蔓延していたりもする。その逆もしかり。ということで今回は、世界50カ国11万人以上が参加した『世界最大のドラッグ調査2017年度版』による「ヤバイことになって救急病院に行くハメになったドラッグ」のベスト9を紹介していきたい。
・世界最大のドラッグ調査とは
まずは、通称「GDS」こと、『世界最大のドラッグ調査(GLOBAL DRUG SURVEY)』について軽く説明しておこう。GDSとは、英ロンドンを拠点とする調査会社が毎年実施している世界規模のアンケートで、今年は50カ国以上から11万9846人が参加したもよう。調査の目的は「薬物をより安全に使用すること」だ。
・酒はもちろん、カフェインもドラッグ
で、どんな調査結果が発表されているのかというと……たとえば「参加者たちが使用したドラッグのパーセンテージ」を見ると、上位からアルコール(酒)98.7%、大麻77.8%、タバコは63.1%ときて、カフェイン入りのエナジードリンクは57.5%……といった具合。カフェインですら「ドラッグ」なのである。
・ヤバイことになって救急病院に行くハメになったドラッグ
以上をふまえて今回注目したいのは、数ある調査結果のうちのひとつ「ヤバイことになって救急病院に行くハメになったドラッグ」のランキングだ。病院送りになるということは、最悪の場合、死ぬ恐れもあるドラッグということである。
ここからは、これまで何度も何度も危険ドラッグの使用に警鐘を鳴らしてきた正義のドラッグ事情通・ボブ麻亜礼(まあれい)さんの解説付きでどうぞ。
・第1位:覚醒剤 / メタンフェタミン(Methamphetamine)
──こちらの結果、「1年以内にどれだけの人が使用したのか」や男女比率もポイント制でバッチリはじき出されているのですが、覚醒剤の使用人数は約1400人。男性は3.7ポイントで女性は8.2ポイント。総合は4.8ポイントで第一位に輝きました。
ボブ「メタンフェタミン、当然の結果だな。日本における覚醒剤の定義は、メタンフェタミンとアンフェタミンの2種類なんだけども、アンフェタミンの数倍ヤバイのがメタンフェタミン。シャブとかS(スピード)とか呼ばれているのがコレだ。
海外ドラマ『ブレイキング・バッド』の「メス」もコレ。かつて日本でも普通に売られていた『ヒロポン』もコレな。女性が多く担ぎ込まれてるところにも注目してほしい。まさに「ダメ、絶対」なドラッグだぜ」
・第2位:危険ドラッグ(Synth. cannabis)
──これはまさに今の世の中を反映した結果になりました。直訳すれば「合成カンナビノイド」、つまるところ危険ドラッグです。使用人数は約1200人で、女性2.2ポイント、男性4.2ポイント、総合3.2ポイントで世界規模での第2位です。
ボブ「あのな、これ系の調査って昔からあるんだけども、毎年ビミョーに結果が変わるのよ。何が変わるのかっつーと、「昔には存在しなかったドラッグ」がいきなり上位に入ってきたりするわけ。今回の危険ドラッグもそのひとつさ。
名前こそ「合成マリファナ」とも呼ばれるけども、これ、ぜんぜんマリファナじゃないからな。クソみたいな雑草に、正体不明のヤバいケミカルを染み込ませてハイ完成。マジで下手すりゃ死ぬからな。日本だけでなく、海外でも気をつけろよ」
・第3位:酒(Alcohol)
──さすがは使用人数は最多の10万人。調査に参加したほとんどの人が飲んでいましたが、なんと「覚醒剤」「危険ドラッグ」に次ぐ「救急病院行きドラッグ」部門の第3位です。ポイントは女性1.4、男性1.25、総合1.3でした。
ボブ「実は酒がヤバイって、みんなも薄々は分かっているはずなんだよな。だってよ、下手したら死ぬんだぜ? アル中とか壮絶だぞ? そもそも飲み過ぎたらゲロ吐くとか、二日酔いとか、記憶なくすとか、冷静に考えたら相当にヤバイぞ?
でもよ、みんな気軽に「飲もう」ってなるだろ。単にアルコールにキマってるだけなのに、「酔っ払ってる」って言葉でホンワカしてる。実は相当ヤバイのに、「ヤバイ」ってことを忘れてる。それはなぜか? 合法だからだよ。それだけさ。
実は超危険なドラッグなのに、身近にも危険な目にあってる人が大勢いるってのに、ただただ合法だから「大丈夫」って思ってる。ぜんぜん大丈夫じゃねえから。こんな状態を何て言うか知ってるか? 「洗脳」って言うのさ」
・第4位:合成麻薬MDMA / エクスタシー(MDMA/Ecstacy)
──ちょっとボブさんがアツくなってしまったので、ここからはチャッチャと進めます。第4位は通称エクスタシーことMDMA。使用人数は約2万人、女性1.8ポイント、男性0.9ポイント、総合1.2ポイントという結果になりました。
ボブ「2009年、押尾学がホステスを死なせた時に使っていたのが、このMDMAだ。この世界調査でも、病院送りになっているのは女性が多い。なんと男性の約2倍だ。ケミカルのオーバードーズ(過剰摂取)は本当に危険。絶対にやめとけ」
・第5位:覚醒剤 / アンフェタミン(Amphetamine)
──日本ではこれも覚醒剤に入りますね。使用人数は約1万1000人、ポイントは女性1.8、男性0.8、総合1.1で第5位となりました〜。
ボブ「日本の法律的には「覚醒剤」に入るやつだな。もっとも、日本では1位のメタンフェタミンが主流なんだけど、アンフェタミン文化が盛んなのは欧米なんだとさ。なぜそうなったのか? 実はな、覚醒剤を作り出したのは日本人なんだ。
簡単に歴史を説明すっと、1885年に薬学者の長井さんがエフェドリン抽出に成功。その2年後、エフェドリンからアンフェタミンがドイツで合成されて、そのさらに6年後、再び長井さんらが覚醒剤となるメタンフェタミンを生み出したのさ。
戦時中、日本は「ヒロポン」に代表されるメタンフェタミンが蔓延していた。ドイツも同じで、メタンフェタミン入りのチョコレートなんかが配布されていたそうな。対して、連合国軍はアンフェタミンを使用していたそうな。その名残りかね。
ちなみに、数年前まで普通に薬局でも買えた喘息の薬「ヱフェドリン ナガヰ」は、まさにこの長井さんのエフェドリンよ。よからぬ目的で購入する人が多かったからなのか、2009年からは処方薬になっている」
・第6位:コカイン(Cocaine)
──意外と低かったのが、よく映画とかで「鼻からストローでスーッと吸うヤツ」としておなじみのコカインでした。使用人数は約2万人。女性1.5ポイント、男性0.8ポイント、総合1.0ポイントでの第6位です。
ボブ「つい先日、「実は結婚していた!」と報じられた元タレントの高部あいさんが過去に所持して逮捕されたのがコレな。あとは成宮寛貴くんがフライデーに「吸引疑惑」と報じられたのもコレだ。中毒になりがちなドラッグだけど、実際の救急病院送りランキングではこの程度。危険なことに変わりはないけどな」
・第7位:LSD
──なにかと怖いイメージのあるLSDですが、病院送りランキングでは思いのほか低かった! 使用人数は約1万人、女性1.0、男性1.0、総合1.0での第7位です。
ボブ「幻覚剤だな。推奨するわけじゃないけど、iPhoneを生み出したスティーブ・ジョブズの有名な言葉に「Taking LSD was a profound experience, one of the most important things in my life.」ってのがある。直訳すると「LSDをキメたことは、私の人生において最も重要な経験のひとつだ」ってな」
・第8位:大麻(Cannabis)
──ついにマリファナこと大麻の登場です。使用人数は、さすがの多さで約6万人。女性0.9、男性0.5、総合0.6での第8位でした。どうして病院のお世話になったんだろ?
ボブ「バッドに入って錯乱でもしたのかな? まあでも、順当な結果だろう。アメリカはガンガン合法化に進んでいるし、来年の春にはカナダでも嗜好用大麻が合法化。つい先日の2017年10月19日には、ペルーでも医療用大麻が解禁されたばっかりだ。本当に危険なドラッグは何なのかを、あらためて考えたほうが良いかもな」
・第9位:マジックマッシュルーム(Magic mushrooms)
──大麻が8位なら9位は何……と思ったら、なんとまさかのマジックマッシュルーム。使用人数は約1万人、ポイントは、女性、男性、総合いずれも0.2でした。
ボブ「いつぞやかマジックマッシュルームの記事でも書いたけど、ちゃんと使用方法を守ってたら、こうなるのは当然だろうな。もっとも、世界的にもこんなに病院に運び込まれる人が少ないというのに、まだ合法の時代に日本でキノコ食べて病院送りになった俳優の伊藤英明という男は、世界トップクラスの大バカ野郎だよ。
ただ、最後にこれだけは忘れないでくれ。たとえこのランキングがあったとしても、「すべてのドラッグは安全ではない」ってことを。たとえば最下位のマジックマッシュルームだって、酒と一緒に摂取したらヤバイことになったりもする。
もちろん1位の覚醒剤や2位の危険ドラッグは論外だけど、3位の酒についても、よ〜く冷静になって考えてみてくれ。病院送りにならないためにもな。オレが何を言いたいのかというと、「正しい知識を身につけろ」ってこと。それだけさ」
参照元:GLOBAL DRUG SURVEY 2017(PDF)、Time、Business insider(英語)
執筆:GO羽鳥
協力:ボブ麻亜礼
Screenshot:GLOBAL DRUG SURVEY, used with permission