昔から中華料理店の「お持ち帰りチャーハン」が好きだ。もちろんお店で食べるチャーハンも美味しいし、スープも付いているのでオトクなのだが、そんなスープの恩恵を捨ててでも、あえて「お持ち帰りチャーハン」を選ぶ時がある。
なぜお持ち帰りチャーハンが好きなのかというと、「お店の味を家で食べられるのが幸せ」だからに他ならないが、遠い昔、一度だけ、幸せどころか恐怖のどん底に叩き落されたこともある。チャーハンの中に、ゴキブリが入っていたのだ。
・近所の中華料理店のお持ち帰りチャーハン
あれは小学校の高学年の時。毎週土曜日の夜は父が飲みに行くという事情もあり、我が家の土曜日の夜食は「フリーダム制」をとっていた。ルールはいたってシンプル。「1000円支給、あとはご自由に」だ。外食も良し、貯金するも良しである。
児童の筆者が好んで食べていたのは、近所の中華料理店のお持ち帰りチャーハンだった。こ汚い店だったが、味は確実。色は茶色で香ばしい雰囲気、どちらかといえば「焼き飯」に近いチャーハンであった。
その日も一人で中華料理店に行き、「チャーハンひとつ、おもちかえりで」とオーダー。余ったお金でコロコロコミックを購入し、これからはじまる土曜の宴にワクワクしながら帰宅。そして透明のパックを開封し、パクパクと食べ始めた。
ああ〜っ、美味しいなぁ〜。パクパクパクパク……
ここのチャーハンは香ばしくて本当にウマい! パクパクパクパク……
そしてこの色! こんなに茶色いチャーハンって珍し……
ん?
チャーハンを真ん中あたりまで食べた時、うす茶色の異物がチラリと見えた。チラ見えだったが、私はすぐに「まさか……!」と思った。そして、ソロ〜リソロリとほじくってみると……デデーン!
う、うそでしょ……!?
全長約2.5センチ。触覚まで入れると約4センチ。それは紛れもなくゴキブリだった。種類で言うならチャバネゴキブリ。オスメスまで分析すると、羽が短いので「メス」であろう。ちなみに色は、やや白っぽかった。
そのとき私は、まさか自分の身にこんなことが起こるなんて……と思いつつも、そもそも汚い中華料理店なのだから、ゴキブリ混入が「あってもおかしくないな」とも思った。
さらに、チャーハンに突っ込むゴキブリを見ながら、おそろしく冷静に、以下のようなことを思っていた。
・たしかに、このお店のチャーハンは、チャーハンそのものの色(濃い目の茶色)からしても、調理中にゴキブリが紛れ込んでも気づきにくい。
・逆に考えると、黒くてデカい「クロゴキブリ」が混入する可能性は限りなく低い。もしも混入したら、すぐに気づくはずだから。
・よって、運悪くチャーハンに混入しているとしたら「チャバネゴキブリ」となる。クロゴキブリじゃなくて本当に良かった……。
・今回、どのように混入したのかは不明だが、グデグデ具合から察するに、おそらくチャーハンを作る時に使う「油」に溺れていた可能性が高い。
・なぜそう思ったのかというと、あの色。チャバネゴキブリの色よりも、やや白っぽかった。油に漬かりまくって、ふやけたと思われる。
・となると私が食べたチャーハンは、「ゴキブリ油」で作られたチャーハンとなるが、すでに半分食べちゃったし、そんなことはもうどうでもいい。
・ゴキブリは入っていたが、いつも通りに美味しかったのは事実。今考えるべきは、今後「お持ち帰りチャーハン」と、どう向き合うかだ。
・パックに盛り付ける時に、なぜ店主は気づかなかったのか? それはおそらく、「おたまのマントル(中央)付近に潜んでいたから」であろうと推測される。
・もしも仮に、中華鍋からおたまでチャーハンを掬った時、「おたまの表面あたり」にいたとしたら、店主は気づくはず。よってマントル説が濃厚。
・以上の推理を総合すると、今後、チャーハンにゴキブリが混入している場合は、「パック内のチャーハンのマントル付近に潜んでいる」可能性が高い。
・しかしながら、いちいち真ん中を採掘してから食べるのも面倒。よって、覚悟を決めて食べるしか道はない。それが「お持ち帰りチャーハン道(どう)」だ。
──と、いろいろ考えながら、そっとパックを閉じて、ゴミ箱にゴメンナサイした。ちなみに、もう二度と、そのお店でチャーハンをお持ち帰りすることはなかった。
そんな強烈なチャーハンマントルゴキブリのトラウマを経た今でも、私はたびたびチャーハンを出前したり、お持ち帰りをしている。やはり、家でお店のチャーハンを味わえる喜びと幸せは捨てがたいからだ。
もちろん、今でもれんげがマントル付近に差し掛かると緊張感が増したりもする。だが、もうかれこれ25年以上も前に起きたこの事件以降、どの店のチャーハンにおいても、ゴキブリが入っていたことは1度もない。これって、とても幸せなことだ。
GO羽鳥






















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