
中華東秀には深い深い思い出がある。これまでの人生で一番貧乏で辛かったころ、家の近所に中華東秀があった。
マジのマジで金がない。マジのマジで稼げない。しかも今は独身(バツイチ)だけど、その当時は家族がいた。一家の主人として情けなかった。
でも、たまには息抜きしましょうと、“たまのごちそう” として行っていたのが、ほかでもない中華東秀だったのである。
理由はひとつ。リーズナブルだから……。
中華東秀に行くのが、いや、「中華東秀に行ける」のが楽しみで仕方なかった。つらい現実を忘れさせてくれたのが中華東秀の店内だった。
何度も何度も、中華東秀にはメンタル的に助けられた思いがある。そして、もちろん一番食べていたのはチャーハンで……。
そんな中華東秀にもう一度行ってみたい。そう思い公式サイトから最寄りの中華東秀を調べてみると、とんでもない事実が判明したのである。
2024年9月時点で中華東秀は……
西武新宿線「田無」にしか、ない。
検索エリアを広げても、ない。何度調べても、ない。他の店舗はすべて「れんげ食堂Toshu」になっていたのだ……。
私はすぐさま
田無に飛んだ。居ても立っても居られなかった。
そして駅から少し歩いた商業ビルにあったのが……
ラスト・オブ・チューカトーシュー……
地球最後の中華東秀だったのである。
懐かしいあの文字が見られるのも、今となってはこの場所だけ。
なんなら日本全国から中華東秀ファンが参拝に来るツアーを催しても良いのではないか……というくらいに、ファイナル東秀はレトロな佇まいを維持していた。
しかも
チャーハンと書いてある!
餃子と並び、チャーハンも自慢のスペシャリテであることを中華東秀は声高らかに誇示していた。
通されたのはカウンターで、
注文したのはもちろん「チャーハン(スープ付)」。価格は490円(税込539円)だ。
とりあえず水がうまい。
絶え間なく聞こえるカンカン音。炒(チャオ)ってる、確実に。間違いなく人間が中華鍋で炒ってる。
そしてオーダーから9分後……
きた!
が!!!
!
!!
!!!
れんげやん!
ここは中華東秀。なのに食器からして「れんげ食堂Toshu」やん!
なんなら、この店も、もう間もなく「れんげ」になりそうやん! いや、間違いなく、なるやん! 今、なりかけの状態やん! だって器がすでに「れんげ」なんだから!
ていうか、ていうか、このドーム型チャーハンに入ったクラック(亀裂)……
以前に行った「れんげ」のチャーハンにクリソツやん!
具も、たまご、ねぎ、チャーシュー、なると……と、まったく同じ。
となると、チャーハンの味も……
れんげっぽい!!!
ド・ストレートなチャーハンの味。
すべてがド真ん中のチャーハンの味。
もしも六角形のグラフがあるなら、すべてが「3」で綺麗な円を描くようなTHE日式チャーハン。
──と、ここで私はハッとした。
いま実際に食べて思い出した「れんげ食堂Toshu」のチャーハンの味。
正直、昔わたしが食べてきた「中華東秀」のチャーハンの味も、“だいたいこんな感じだったよなぁ……” みたいな感じで、おぼろげな記憶しかない。
そう。
中華東秀のチャーハンは記憶に残らない。
その時は「うまい」と思うのだが、決して記憶されない味なのだ。
なぜならば、完全に “やさしい系” の炒飯だからであり、心のどこかに記憶として引っ掛かるような味ではないのだ。
スープもまた優しい。それはまるで、空気のような。水のような。そこにあるのが当たり前の存在のような……。
そんな “当たり前” な炒飯なので「おいしい」のだけど「記憶に残らない」のである。
そのかわり。
かつて私が通っていた東京都狛江市にある「狛江店」の店構え。店内の狭さ。熱気と香り……と、チャーハン周辺の記憶だけが色濃く記憶されるような気がするのだ。
そう考えると、「中華東秀」が「れんげ食堂Toshu」にメタモルフォーゼしていくのも寂しいけれど納得できる。
私は以前に行った「れんげ食堂Toshu」の記事で、こう書き残している。
「内装は中華中華してなくてカフェのように居心地良好」。
そんな場所なら、デートにも使える。もしも恋人と「れんげ食堂Toshu」に行ってチャーハンを頼んだら……きっとチャーハンの味なんかよりも、恋人の顔、恋人との会話、恋人との思い出が色濃く残ることになるだろう。
だからこそ。
「中華東秀」は「れんげ食堂Toshu」になろうとしているのではないか。味そのものよりも、その時の時間、その時の思い出を提供するために。
西東京市・田無の中華東秀にて。
思い出すのは狛江時代の激貧生活。
稼げない漫画家の私に、容赦のない激と喝を入れた元妻。
「漫画で稼げないならバイトでも何でもいいから働いてこい!」
そんな厳しい言葉が、カンカンというリズムと共にリフレインしていた。
あの時代は、現実から逃げた。私にとってのサンクチュアリー、それが中華東秀だった。
しかしその鬼のような叱咤があったからこそ、ナニクソ根性で今現在に至れているので感謝している。
私はもう、逃げない。
さらば、東秀。
地球最後の中華東秀。
参考リンク:中華東秀
執筆:チャーハン研究家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24
▼最新行脚はインスタをチェック
GO羽鳥

























【チェーンのチャーハン行脚】第12回:私は見た。幸楽苑のチャーハンが過去最安370円(税込)で出せる理由を
【チェーンのチャーハン行脚】第10回:紅虎餃子房で一番安い「玉子レタスチャーハン」(968円)で泣いた
【チェーンのチャーハン行脚】第5回:れんげ食堂Toshuのチャーハン(539円)でエモい気持ちになった
【チェーンのチャーハン行脚】第6回:人生初の「福しん」で、連載史上最安500円チャーハンを食した感想は…
【チェーンのチャーハン行脚】第15回:中国ラーメン揚州商人の「揚州炒飯」は完全に「中国チャーハン」だった
ハマり注意「日清カップヌードル シーフード」×「S&B 李錦記 豆板醤チューブ」【カップ麺カスタマイズ選手権4】
贅沢な海鮮丼がお刺身付きで1350円! 訪日外国人に大人気の「日本橋海鮮丼 つじ半」が日本人にとってもコスパ良すぎた
【食べ放題1280円】ガチ中華の聖地にランチバイキングが新オープン! 池袋「小河帮川菜」が20種類以上のビュッフェで名店の予感
伝説の「荻窪・丸長」の味が新橋に? 大行列でも食べたい『中華そば 喜長』のつけ麺がノスタルジーにしてTHE・王道
渋谷のモヤイ像が私たちに突き付ける『モヤイ』の本当の意味 / 今の世の中にこそ必要な言葉ではないのか?
【食べ放題1200円】非常階段の裏口のようなドアの先に広がるガチ中華ビュッフェ! コスパもハードルも高い新大久保「龍勝」
90分食べ放題導入でパンの楽園と化した『ベーカリーレストランC』 / ご覧ください! 珠玉の美味そうなパンを
【コメダ】注文時に一言「よく焼きで」 シロノワールのデニッシュの美味しさを最大限に引き出す頼み方
【4コマ】魔王軍はホワイト企業 1958話目「春の足音(余談)」
【4コマ】魔王軍はホワイト企業 1957話目「春の足音㉑(完)」
【青切符】4月から自転車新ルール! ヘルメット9種比較
【体験談】テレビで曲が流れたら印税はいくら? ミュージシャンである私がTBSで使われた際の著作権使用料の明細を公開する
【ご報告】ロケットニュース24を少し離れます / 10年間ありがとうございました!
【検証】10年間ほぼ毎日飲んでる「コーヒー」を1週間断ってみたらこうだった
【雑草対策】カインズで598円「撒くだけで防草できる人工砂」の効果がヤバ過ぎた / お財布にも環境にも優しい超画期的アイテム
【検証】「スタバはどのサイズを頼んでも量は一緒」という動画が出回る → 実際に試してみた
オニヤンマのフィギュアが虫よけになるってほんと? 2週間かけて試してみた正直な感想
何も期待せず「カメムシブロック」ってスプレーを窓に吹いたら後日ヤバイことになっていた【100万円の古民家】
【チェーンのチャーハン行脚】第19回:元祖泡系「博多一幸舎」のチャーハンは、意外な具の存在感が際立っていた
【チェーンのチャーハン行脚】第16回:人生初の「来来亭」にして本誌独占スクープ(隠された秘密)をGET!
【チェーンのチャーハン行脚】第17回:天下一品のチャーハンが劇的な進化を遂げた! 以前のと比べてみると…
【チェーンのチャーハン行脚】第20回:ららぽフードコート内「久留米ラーメン 清陽軒」にて『焼きめし』を食す
【チェーンのチャーハン行脚】第18回:ミスタードーナツのチャーハンを食べてみた結果 → ドーナツを買った
【チェーンのチャーハン行脚】第9回:中華ファミレス「バーミヤン」のチャーハン(598円)で見えた国は…
【チェーンのチャーハン行脚】第14回:埼玉に「珍来」あり! あまりのハイレベルさに悟りが開きそうになった…
【チェーンのチャーハン行脚】第7回:満を持して「餃子の王将」登場 / 初体験の「炒飯」(627円)を食した感想
【仙台】エビの量と大きさが「信じられない」。中嘉屋食堂 麺飯甜(ミンパンティン)の豪華すぎるエビチャーハンに驚いた話 / チェーンのチャーハン行脚:第22回
【チェーンのチャーハン行脚】第8回:ついに「ロボ調理人」見参! 中華食堂一番館の炒飯は圧倒的安さ450円!!
【マネするな】れんげ食堂が『ペヤング味のリアル焼きそば』を発売!! 安易に本家と比較した結果 → ペヤングを見失った