商店街を歩いているとフワリと漂ってくる、あの幸せな香り。その香りに誘われて、別に買う気もなかったのにパン屋に入ってしまうのは自然の摂理である。あの決して広いとは言えないスペースの中には、考えられるだけの幸せが詰まっている。

さて、パン屋が最高な場所であることは疑いようのない事実なわけだが、私(あひるねこ)はしばしば疑問に思っていることがある。疑問というか、もし自分がその状況に陥ったらどうしよう? という恐怖というか……。あなたは、もしもパン屋で急にくしゃみをしたくなったら、一体どうする!?

・パン屋は基本ノーガード

自宅付近の商店街には、いつ行っても混んでいる人気のパン屋がある。それでも、広さ的にはコンビニの半分以下といったところで通路も狭い。壁際と店舗の中央にバラエティー豊かなパンが並べられているという、ごく一般的な作りだ。ただ、パン屋は他の食べ物を扱っている店と決定的に違う点が1つある。

パン屋において、パンは包装されずにそのまま陳列されているのである。つまり、“裸(ら)” の状態だ。もちろん1個ずつビニール袋に包んでいるお店もあるが、多くのパン屋ではパンはむき出しで並んでいて、それを客はトングで取り、レジで店員さんがビニールに包む。よく見る光景だと思う。

・くしゃみが怖い

しかし、よく考えるとこのシステムは、かなりデンジャラスとも言えるのではないか。食べ物をそのまま置いておくわけだから、そこには衛生面での様々なリスクが生じる。咳をした時、しゃべった時の唾、虫、ほこり、などなど。中でも、私がもっとも恐れているのがくしゃみである。

・予想不可能な天災

いま、パン屋でパンを選んでいるとしよう。片手にトング、片手にトレイを持ち、パンを吟味しながら店内をウロウロと徘徊している。その際、咳や唾はある程度自分で防げるように思うのだ。咳が出そうになっても、それなりに我慢できるためその間に何かしらの対応をとれる。風邪ならマスクをしていればいい。

が、くしゃみはヤバイ。アレは、いつその時が訪れるのかまったく予想ができないからだ。「あ、くる」と思った次の瞬間、もう放出は免れない。万が一パンを見ている最中にエクスプロージョンが起きた場合、汚物でも見るような周囲の視線が容赦なく襲ってくることは必至。考えただけで恐ろしくて夜も眠れない。

・防ぎきるのは困難

仮に炸裂する前に手で口を覆ったとしても、手だけではきっと防ぎきれないだろう。それに、多くの人はトングとトレイで両手を塞がれているはず。使えたとしても片手のみだ。心許ない……! くしゃみと一戦交えるには……!! 神よ、この危機をどのように回避せよというのか。あなたはあまりにも残酷な試練を我々に与えたもうた。

・くしゃみが出そうになったら

私の足りない頭で考えられる対抗策はただ1つ。まず「あ、くる」となったら、まずコンマ数秒落ち着く。自分を落ち着かせる。自らが纏(まと)う時間を圧縮するのだ。そして、考え得る最短のルートでトングをトレイに置き、片手を自由にする。ここまで、可能なら2秒以内に収めたいところ。

片手が空いた時点で、次の行動を開始している必要がある。トレイを落とさないよう気を遣いながら、空いた片手で着ているシャツの胸元を引っ張るのだ。そのままシャツで顔をスッポリ覆う。最低限、鼻は完全に隠れるようにしたい。おそらく時間的にこのあたりが限界だろう。よくぞ我慢した。放て……!

・解放されたい

被害を最小限に抑えるには、この方法がベストであると私は考える。というか、これ以上に考えつかない。そこでお願いだ。何か別の優れたソリューションがあるなら、私に伝授してくれないだろうか。私はパン屋で、常にこの行動をシミュレーションしているのである。そろそろ解放されたいのだ。ぜひあなたの意見を聞かせてくれ。

執筆:悩める男・あひるねこ
Photo:RocketNews24.