日本語では「精神病質者」とも訳されるサイコパス。パッと見は大胆で魅力的だが、徹底的に不誠実で冷淡。罪の意識に乏しく、衝動を上手く抑制できない人……などとも定義されている。

そんな性格なら、噓をつくのだって上手そう。実際に今回行われた調査にて、サイコパス傾向の強い人は、噓のつき方を学ぶのが得意であることが判明したようだ。あれ? サイコパスって “生まれついての大嘘つき” って訳ではないの?

・サイコパス傾向の強いグループ&弱いグループを調査

香港大学のタティア・リー教授とロビン・シャオ教授が、同大学の学生52人を対象に行い、電子ジャーナル『Translational Psychiatry』で発表したこの調査。性格診断テストによって、学生は「サイコパス傾向が強いグループ」29人と「サイコパス傾向が弱いグループ」23人に分けられている。

調査方法はこうだ。まず学生たちに “知っている人” と “知らない人” の写真をいくつも見せながら、「この人物を知っているか?」と質問をしていく。それに対して学生は、チームが出す指示に従って「本当の回答」か「噓の回答」を述べていく。

その後、学生は「噓を早くつくためのトレーニング」を受けてから、再び写真を使った同様のテストを行った。

・トレーニングで噓が上達

トレーニング前には、2つのグループの “噓をつくときの反応時間” に大きな差はなかったそう。しかしトレーニング後には、「サイコパス傾向の強いグループ」のみ、この反応時間が格段に短縮されたというのだ。一方の「傾向の弱いグループ」は、トレーニング前後で反応時間に違いは見られなかったとのこと。

「傾向の強いグループ」は、トレーニングを通じて噓のより上手なつき方を学び、そのスキルを上達させたのである。

・嘘をつくとき脳内で “作業” が行われる

リー教授によると、嘘をつくとき、脳の中では “本当の情報” を抑圧・変更する作業が行われるので、事実を述べるよりも、反応に時間がかかってしまうのだとか。

サイコパス傾向の強い人は、トレーニングによってその作業プロセスを短縮することができる。つまり「生まれつき噓をつくのが得意」という訳ではなく、「嘘をつくスキルを学ぶのが得意」だと考えられるようだ。

ただし、今回の調査の噓は認可されたものであって、緊張感や罪悪感を伴って自発的につく噓とは別物だ。後者の噓でも、同じような結果になったのだろうか?

参照元:Translational PsychiatryEurek Alert! Science NewsAol.(英語)
執筆:小千谷サチ
Photo:RocketNews24.