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あなたは、自分の上司が好きですか? 2016年4月にイギリスで質問されたこの問いに対し、「好き」だと答えた人は40%以下だったという。好きでもない人間と働くのは面倒なものだが、生きていればそういうこともある。しょうがない。

けれども「人格が破綻した上司」のもとで働くのは、“しょうがない” では済まされないもよう。今回発表された調査結果で、サイコパス・ナルシスト傾向を持つ上司にあたった人は、「うつ状態にある」、「周囲に対して嫌な態度をとる」などの悪影響を受けやすいことが分かったというのだ。

・「嫌な上司」のもとで働くのは、こんなにも最悪

マンチェスター大学の付属組織マンチェスター・ビジネス・スクールの研究チームが、イギリスの心理学会の会議で発表したと伝えられているこの調査結果。

様々な国・職業の男女1200人を対象に、精神的な健康状態、職場でのイジメによる有病率、上司の性格について質問を行った。するとサイコパス&ナルシストの性質を持つ上司のもとで働く人々は、以下のような傾向を示しがちであることが判明したという。

うつ状態にある
周囲に対して嫌な態度を取る
仕事の効率が悪い
仕事の満足度が低い
職場イジメが起こっている

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・職場全体の雰囲気を損なう

では一体、どんな上司が「サイコパス&ナルシスト傾向」にあるのか? 今回の調査チームを率いたアビゲイル・フィリップスさんによると、力を誇示したいという欲求が強く、他者の気持ちを理解しようとしない。他者を利用し、手柄を横取りする。痛烈に批判し、攻撃的な態度をとる……などの特徴が挙げられるそうだ。

またこんな上司がいる職場では、イジメが起こりやすく職場全体の環境も悪くなるとフィリップさんは説明している。

「職場イジメは、ターゲットにされた人間を嫌な気持ちにするだけでなく、職場環境も悪化させます。嫌な上司がいると、仕事に対する満足度が低く、会社に仕返しをしてやりたいと密かに思うような従業員を生み出すことになるのです」

・「嫌な上司」に引きずられないように注意

心理学者ベン・ダットナーさんも、「嫌な上司」に引きずられないように注意すべきだと警告しているようだ。無礼な態度は周囲に伝染しやすいことから、上司に虐げられていると感じる人こそ、自分も上司と同じような態度になっていないか振り返る必要があるのだ。

「おとしめられていると感じている人こそ、自分が所属する団体を良くしていきたいという気持ちが薄くなりがちです。しかし、その誘惑に易々と乗ってはいけません。嫌な上司に引きずられて自分も嫌な人間になってしまえば、あなたのキャリアや将来に傷がつく恐れがあります」

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・「嫌な上司」に当たってしまったときの対処法

では「嫌な上司」にあたってしまった場合、私たちはどうすればいいのか? 海外メディア『Health』は、心理学者らが提唱する対処法を紹介していた。以下で、その一部を見てみたい。

その1:諦める
人格が破綻した上司は、部下を積極的に支援したり、自信をつけさせてくれることはない。そういったことを上司に求めるのは諦め、家族や友人、他の上司などを頼る。

その2:置かれた状況を前向きに捉える
自分が置かれた状況を、前向きに捉えてみる。「性格が破綻した上司でも仕事ができたり、知識があったりするパターンもある。嫌な上司からでも、学べることがあるかもしれないと考えてみては」とダットナーさん。

その3:戦略的な態度をとる
上司に対して、戦略的に接してみるのも一案とのこと。例えばナルシスト傾向にある上司を他の人の前で立てるようにすれば、後々上司から優遇される可能性もある。落ち着いて戦略的に上司と接すれば、余計な攻撃を受けることが少なくなるかもしれないそうだ。

その4:転職を考える
上司から辛辣なことを言われても、自己評価を損なわないようにするのが大切。それでも落ち込みがちになったり、寝不足になったり、仕事に行くのが嫌になってしまったら、上司から離れるべく転職を考えるのも手だろう。

またダットナーさんは、「自身の感情を自覚し、エネルギーを前向きに使ったほうがよい。自身を高め、新しい技術を習得し、ネットワークを強化していけば、他の道が開けるかもしれない。嫌な上司に捕われないように」とも説明している。嫌な上司に負けないように、手を尽くしたい。

参照元:Health[1][2]Personnel Today(英語)
執筆:小千谷サチ
Photo:RocketNews24.