ロケットニュース24

【突撃】フランスにも「ラブホ」がある! 一人で “お休憩” しようとしたら地下に連れて行かれて散々な目にあった / 自称マッサージ嬢とのパンツ際攻防戦

2016年6月26日

お金を盗まれた、下痢になった、うんこを漏らした……などなど。海外旅行にトラブルはつきものだ。きっと誰もが海外に行くと大なり小なり何らかのトラブルに遭遇しているだろうが、ここで公開する私のような体験をした人は少数なのではないだろうか。

手っ取り早く何があったのかを言おう。先日、私(筆者)がフランス・パリのラブホに1人で入り “お休憩” しようとしたら……地下に連れて行かれ、パンツを脱がされそうになったのだ! あまりにショッキングだったため、注意喚起の意味を込めて恐怖体験をレポートしたい。

・パリのラブホテル

愛の国と言われるフランスのパリ。花の都、芸術の都と言われる街で、私は偶然にもラブホ、その名も『LOVE HOTEL』を発見した。ド直球なネーミングといい、入り口前のビロードのカーテンといい、そこはかとなく怪しい雰囲気といい、どう見てもラブホとしか思えない建物が目の前に現れたのである。

そんなものを見つけてしまったら、「パリのラブホって、日本のラブホとは違うのかな?」と気になるのは人間の性(さが)。実態を確かめるべく、私が中に入ってみたところ……

そこから先は予想外の事態の連続。「え? そこ?」という角度から連続でパンチが飛んできた。目が回りそうな展開を、ザックリと矢印で示すとこうだ。

・お休憩しようとした流れ

1人でラブホに入る

内部の1Fは大人の “おもちゃ” がずらりと揃っていることを確認

白衣を着た女性に声をかけられる

白衣の女性から「ラブホの部屋はカップル用」と告げられると同時に、60分100ユーロ(約1万2000円)のマッサージを受けるように勧誘される

「マッサージルームの写真撮影許可」を条件にその話に乗る

地下室に連れて行かれる

地下室で待っていると、自称マッサージ嬢がやってくる

マッサージが始まる

マッサージもそこそこに、“その気” になるような攻撃が始まる

私の秘策が炸裂し、予定時間の約半分で終了

解放される(追加料金なし)

──以上である!

早い話、パリの『LOVE HOTEL』は、ラブホテル、大人のおもちゃショップ、そして春を売る場所などが一緒になった “愛の総合デパート” みたいな施設であった。そうとは知らず、1人で中に入った私の姿は、店の女性にとって「カモがネギを背負って鍋の中に飛び込んできた」ように見えたに違いない。

絶好のカモを目の当たりにした女性たちは、何とか私にお金を使わせようとする。もちろん、私はそうはさせまいとする。向こうはまた来る。こっちは守る。という死闘の中で、私のパンツが危機に……。

今思い出しただけでも恐怖でパンツを濡らしそうになるが、戦いの末に悟ったのは「パリでラブホを見つけても、1人でお休憩しない方がいい」ということだ。それだけは覚えておいて欲しい。もしも、好奇心を抑えきれずに1人で中に入ってしまったら……以下のような目に遭うかもしれないぞ。

・ラブホの中に入ってみた

ビロードのカーテンをくぐると、そこにあったのはところ狭しと並ぶオモチャ類だった。棒っぽいモノ、穴っぽいモノ、手錠、ムチ類、ロープ類、浣腸器具まで、多様なニーズに対応できる幅広い商品ラインナップ。

それらを見ながら「さすが……サド侯爵やバタイユらを生み出した国やで」と、私がフランスの歴史ある “技巧的な愛の文化” に感動していたとき、1人の淑女から声をかけられたのである。

「ムッシューーーーーーーーーーーー!」

振り返れば、白衣を着た女性が私を見ながら手招きしている。

この白衣の女性がラブホテルの受付なのかな? とにかくそこに行き、「ここでお休憩できますか?」と聞いてみたところ……今にして思えば最初から失敗だった。大エラーだった。そのために、危険な匂いのする “オプション” を色々と提案され……詳しくは次のページへ!

Report:和才雄一郎
イラスト:稲葉翔子
Photo:RocketNews24.

【自称マッサージ嬢とのパンツ際攻防戦(その2)】

私を呼んだ白衣の女性(仮名:エドワルダ)は恐らく30代後半から40代。スタイル抜群の正統派美人で、白衣がよく似合う。おまけに、話をして分かったのだが英語も流暢。CAの制服を着れば、それも様になりそうだ。

・危険な匂いのするオプション

こんな人に「1人でお休憩したい」と言うのは気が引けるような、逆にワクワクするような複雑な気になったが、とにかく行くしかない。GOGOGOだ!

「こちらで休憩したいのですが、出来ますか?」

エドワルダ「プランはどうなさいますか?」

「一番短時間のプランでお願いします」

エドワルダ「マッサージが200ユーロからあります。他にも、FFFFFFF(※よく聞き取れず)400ユーロ、SSS(※よく聞き取れず)600ユーロ、AAAA(※よく聞き取れず)800ユーロのプランがありまして、時間は1時間です」

──私が相手の英語をよく聞き取れなくて申し訳ないのだが、何やらエドワルダはとんでもないことを言ったような気がした。なお、エドワルダは自分の口を指差しながらFFFFFFF、股間を指差しながらSSS、お尻を指差しながらAAAAと言っていたことを追記しておきたい。

いずれも私には全く聞き覚えのない単語だったため、意味がさっぱり分からなかったが、会話中にマダムはこの単語を何かと連発。紛らわしいので、以降FFFFFFFはプランF、SSSはプランS、AAAAはプランAと記載しよう。

「折角ですが、マッサージとかは大丈夫です。部屋だけ使わせてもらえれば」

エドワルダ「でも、あなたは1人じゃないですか。ラブホテルの部屋はカップルのためにあります。だからプランを選んで下さい」

「なるほど……。では休憩はナシで、空いている部屋の写真だけ撮らせてもらえないですか?」

エドワルダ「それは無理です」

「う〜ん、それでは今200ユーロの持ち合わせがないので、失礼します」

エドワルダ「カードは持ってないんですか? VISAでもマスターカードでもどっちでもOKです」

「カードはホテルのセーフティボックスに入れているから、持ってないです(※ウソ)」

エドワルダ「わかりました。じゃあマッサージは100ユーロにします! プランFは200ユーロ、プランSは300ユーロ、プランAは400ユーロでいいです。今日だけ特別! リアリー・リアリー・スペシャルプライス!!」

「……では、私がマッサージをお願いすれば、部屋の写真を撮影しても大丈夫ですか?」

エドワルダ「それならノープロブレム! ただし、女性には絶対にカメラを向けないようにして下さい」

「わかりました! じゃあお願いします!!」

エドワルダ「では、300ユーロ(プランS)になります」

「いやいや、そっちじゃないです。ノーマルなマッサージだけで」

エドワルダ「本当にマッサージだけで大丈夫ですか? ここの女性はみな素晴らしいから、マッサージだけの人なんていない。大体のお客さんはプランSです」

「マッサージだけでノープロブレム!」

エドワルダ「……わかりました。では前払いで100ユーロです。すぐに地下に案内するので、少々お待ち下さい」

──なんということだろう。このラブホには地下もあったのだ。エドワルダの話によると、カップルが利用する部屋、いわゆる日本のラブホは『LOVE HOTEL』の2Fより上の階にあり、1Fは先述の通りおもちゃエリア、地下がボッチ男性のための “マッサージエリア” になっているらしい。

そして、この後いよいよ地下室に行くことになるのだが……そこは男女の絶叫が響き渡るシャウト空間だった! 詳しくは次のページ(3ページ目)でどうぞ!!

Report:和才雄一郎
イラスト:稲葉翔子
Photo:RocketNews24.

【自称マッサージ嬢とのパンツ際攻防戦(その3)】

・ラブホ1Fの奥に進む

エドワルダが白衣をたなびかせながら、おもちゃだらけのフロアをずんずんと進んで行く。私も遅れないように後をついて行くと、1Fの奥にラブホテルのフロントを発見。その受付台には、スーツを着た美しい女性が立っていた。

「なるほど! カップルはここで受付するのか!! でも、フロント係が堂々と居るから、日本のラブホみたいにこっそり部屋に入ることは出来なさそう……。そんなこと、フランス人は別に気にしないのかな?」なんて思っていたら、エドワルダはその受付を素通りしてさらに進み、「ここよ」と指差した。

確かに……おもちゃの棚と棚の間に、地下へ降りる階段がある! ラブホの1Fがおもちゃショップになっているのも異様だが、この階段は何より異様。匂うな、こりゃ匂うな!!

・聞き覚えのある声が!

階段の先に何があるのか? 写真を撮ろうと思ったが「ここから先は部屋まで写真撮影禁止」とのことなので、カメラをバッグに入れる。惜しいけれど、仕方ない。

それからエドワルダの後に付いて、紫色のライトが照らす階段を1歩1歩ゆっくり降りて行く……と! どこかで聞いたことのある声が耳に飛び込んできたのだ!!

これは……以前に紹介した「札幌での心霊体験」で聞いたのとそっくりなサウンド、レッドツェッペリンの『移民の歌』の有名な出だしを彷彿とさせる叫びじゃないか! しかも、地下に行くに従って、オーイエス、オーイエス、 イェーイ、イェーイといった合いの手的な声まで聞こえてくる! ノリノリかよ!!

・地下の様子

「これがデジャブというヤツか!?」と不思議な感覚に包まれている間に、地下に到着した。地下は長い1本の廊下と、それに面するいくつもの部屋がある。陽気なBGMが響く廊下を歩いて行くマダム・エドワルダと私。

歩きながら耳をすませば……ストリングスの伴奏のようなベッドのきしみ音っぽいサウンドがリズムを刻んでいる部屋まであるぞ! オーケストラ入れてんのか!? 

そうこうしている間に、エドワルダは1つの部屋の前で立ち止まり、ドアを開けた。目的地に着いたらしい。エドワルダの後に続いて私が部屋に入る。すぐに目に飛び込んできたのは、ベッドの周囲にある鏡だ。これは……『鏡の間』!?

・部屋で見つけたイヤなモノ

私はすぐに部屋の写真を撮ったのだが、気になるモノが……。クレジットカードリーダーが、部屋の棚の上に放置されていたのだ。そのカードリーダーを、エドワルダが「あ、忘れてた」という感じで手に取り、そのまま「間もなくマッサージレディが来るから、少し待ってて」と言い残し去って行ったのである。

何なんだ、あのクレジットカードリーダーは! 前払いのはずなのに、なぜそんなものが部屋にあるんだ? もしかして……無理やり「追加料金払え」みたいな展開だった? ……こちらの思い過ごしかもしれないが、不吉な予感しかしない! 

最初に「カードは持ってない」とエドワルダに言ったけど、大丈夫だろうか? 逆に「じゃあ財布ごと置いて行ったらいいやん、ボケが!」みたいにならないだろうか?

・ノックされるドア

イヤな想像で心の中がいっぱいになっていたとき、一番聞きたくない音が部屋中に響き渡った。部屋のドアがノックされたのだ。ヤバい、マジで来た! どうすりゃいい? 恐怖と緊張で言葉が出てこない……。そんなこちらの焦りをよそに、ドアノブが回り始めた!

その動きがやたらスローに感じられる。そしてゆっくりドアが開くと……続きは次のページ(4ページ目)で!

Report:和才雄一郎
イラスト:稲葉翔子
Photo:RocketNews24.

【自称マッサージ嬢とのパンツ際攻防戦(その4)】

「ボンジュール〜〜〜〜〜〜!」

明るい声とともに登場したのは…… 

・整形後のマラドーナ

え? マラドーナ!? 現役の頃のマラドーナではなく、ちょっと前に整形して話題になったあの姿! 「ママドーナ」とか、「キレイなジャイアン」とか言われている中性的なマラドーナを思わせるルックスの女性が現れたのだ

まるでモデルのウォーキングのような歩き方で、部屋に入ってきたマラドーナ。彼女は私にベッドに腰掛けるように促し、自身も私の隣に座った。すごいことになってしまった! 私の隣には、サッカー界の生きる伝説……に似た女性がいる!!

・マラドーナの奇襲

生きた心地がしなかったが、何よりも気になるのは「マラドーナが、エドワルダから『マッサージだけ』とちゃんと聞いているかどうか」だ。確認するつもりで、私が恐る恐るマラドーナを見たら……妙な雰囲気で目が合ってもうた! 「いかん」と思ったその瞬間!! マラドーナが顔を近づけて……え? いきなりのキス?

マラドーナ、お前マジか!! ……でも、こうなったら仕方が無い。やったろうやないか! バッチ来ーーーーーい!! 覚悟を決めた私は、唇をやや突き出して “キス受け” の体勢を整えた。唇が……震える。プルプルいってる。だがしかし……

なんとマラドーナは私の唇の前をスルー。そして私の耳元に口を近づけて、こう囁(ささや)いたのだ。

「リラーーーーーーーーーーーーーックス」

——やられた! これじゃあ、まるでこっちが “その気” みたいじゃないか! ビビリながら気を遣ったことが完全に裏目!! さらにマラドーナは畳み掛けてくる。

・きっとほぼ毎日スペシャルデー

マラドーナ「ユー・アー・ソー・ラッキー!」

「?」

マラドーナ「ビコーズ・トゥデイー・イズ・ベリー・ベリー・スペシャル・デー! ウィズ・ジャスト・50ユーロ、ユー・キャン・<プランS>……」

「ノーー」

マラドーナ「オー、スウィーティー」

・マッサージがスタート

こうして、序盤からこちらの心が折れた状態で、マッサージはスタートした。「服を脱ぐように」とジェスチャーで示すマラドーナの指示に従い、上半身裸になる私。「ズボンも」と促すマラドーナだが、「マッサージは上半身だけでOK」と私が言うと、「じゃあいいからベッドに寝て」とのこと。

言われるがまま、私はベッドの上に仰向けになった。まるでギロチン台に乗った気分だ。マリー・アントワネットよ、今そちらに行きま……ではない! 降りてくる刃をギリギリのところで止めてやる! 諦めている場合じゃない!!

・勝負を分けるパンツ際

恐らく、相手はマッサージだけで終わらせるつもりはないだろう。何とかしてプランFやプランSまで持ち込み、その分の追加料金を要求してくるに違いない。

しかし、何をされようとも私がパンツを守り通せば大丈夫だ。どんな誘いをかけてこようとも、どれだけ強引に先に進められようとも、パンツをはいていれば、マラドーナはそれより先に進みようがない。そして1時間耐え切れば……こちらの勝ちだ! それまでパンツラインを絶対に死守せねば!!

そんな決意を秘めた私の胸の上に、マラドーナがマッサージローションを垂らし始めた。ポタッ、ポタッ、ポタッ……。マラドーナは手を伸ばし、腕や首筋、腕などをマッサージしていく。

撫でるような手つきのため全くマッサージになっていないが、一向に構わない。とにかく、上半身で時間を稼げれば……!

・マラドーナの猛攻

さらにマラドーナは、マッサージローションをドバドバと豪快に追加。うん、いい感じだ。そのまま上半身のマッサージを続けてくれ。と、祈っていたのに……平和は長く続かなかった。 

しばらくすると、マラドーナは困った顔をして「ベルトのバックルが腕に当たって痛い」のジェスチャー。来た! 攻めて来たぞ! わざとらしいダイブ……のくせに、うまいこと審判にアピールして直接フリーキックを得ようとしている!! どうしたらいい? どうやって止めたらいいんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 

この後さらに過激になるマラドーナの悪行は次のページ(5ページ目)で!

Report:和才雄一郎
イラスト:稲葉翔子
Photo:RocketNews24.

【自称マッサージ嬢とのパンツ際攻防戦(その5)】

悪質な因縁としか思えないマラドーナの「ベルトのバックルが腕に当たって痛い」アピール。その解決に頭をフル稼働させていると、さすがマラドーナ。何も言わずにベルトのバックルに手をかけ始めたのである。カチャカチャとわざと大きな音を立てて……。

私は慌てて「ノーーーーー」と言ったが、マラドーナはイタズラっぽい笑顔を見せて止める気配がない。しばらく粘ったものの、結局ズボンはマラドーナに剥ぎ取られてしまうことに。マズい、マズいぞ……!

だがまだアイツがいる。パンツだ。パンツは生きている!! 必死に最後の内堀りを守ろうとする私は、パンツの端を両手でつかみ「そこは絶対に攻めるなよ」の意思表示。すると……マラドーナはとんでもない手を使ってきたのだ!

・意表を突かれた「ふーふー」攻撃

なんとマラドーナは、私のパンツに対して「ふーふー」と息を吹きかけ始めたのである! まるで、接続の悪いファミコンソフトにやるみたいに……。って、誰のアレが接続悪いファミコンソフトじゃい!!

このマラドーナの「ふーふー」攻撃、効果のほどは不明だが、意図はよく分かる。マラドーナは無理にパンツをはぎ取るのではなく、私を “その気” にさせようとしているのだ。

もし私がいい具合に “その気” になれば、マラドーナはそこでプランFやらプランSなどを提案するか、もしくは強引に移行。追加したサービス分のマネーを……というのが狙いに違いない。

・助かった「ふーふー」攻撃

が、結果的にマラドーナのフーフー攻撃は、逆にこちらを助けることになった。というのも、マラドーナの吐息によってパンツの奥にある “ファミコンソフト” が完全に接続不良になり、“その気” が今後1カ月ほど生まれそうな余地さえ無になってしまったからである。画面ザーザー。ゲームを始められそうな気配はゼロだ。

強引な仕掛けが裏目に出たな、マラドーナめ! 後は守備をガチガチに固めて、時間が経つのを待てば……こちらの勝ちが見えてきた……はずなのに! マラドーナはそう簡単に諦めるような人間ではなかった。「エクスキューズミー」と言って部屋を出ていったマラドーナ。それから……

全く予想していなかったそのド派手な攻撃は、最後のページで!! いよいよ感動のフィナーレだ。

Report:和才雄一郎
イラスト:稲葉翔子
Photo:RocketNews24.

【自称マッサージ嬢とのパンツ際攻防戦(その6)】

・ラストダンス

部屋に戻ってきたマラドーナは、なんと先ほどの白衣のエドワルダを連れて来たではないか! そして部屋のテレビをつけ、大人のDVDを流し……2人して上半身裸になって踊り始めたのだ!!

清々しいまでの、完全なるマッサージ放棄。ダンスとDVDで “その気” にさせようって作戦だろうが、そうはいくか……いや、いや、待て! もしかして……もしかして……このまま最後までダンスを見続けていたら「はい、ダンス分の追加料金ちょーだい」とか、「2人分だから料金は2倍よ、ムッシュ」となるのか? それが狙いなのか? 

そうだ、数分前に見たクレジットカードリーダー! あれが出てくる布石ってことか? ……はっきりとは分からないが、明らかなのは「やっぱ1人でラブホに入るべきじゃなかったし、なるはやで出た方がいい」ということだ。でも、一体どうすれば早く幕引きできるのか……。

・一発逆転のひらめき

そのとき! 不毛なこの戦いに一瞬で終止符を打つ必殺のクロスカウンターのアイディアが、私の中に降りてきた。これならば、お互いの摩擦を最小にして一時的に麻痺状態を作り出せる……はず。

そこで生まれる “間” をうまく利用すれば……ウォー・イズ・オーバー! ソーディスイズクリスマス!! スーパーハッピー! マンモスラッチー! ごちそうさまでしたーーーーーー!!

──これに賭けるしかない! 

覚悟を決めた私は、ウリャーと気合いを入れて、自分の両手をパチンと力強く合わせた。手にもマッサージローションが塗られていたのでやりにくいが、気にしていられない。さらに続けてパチン、もういっちょパチン! ……つまり、私は拍手をしたのだ。本気でダンスに感動している風を装って。

──要はこうだ。ダンスの上手さに感動している様子で拍手をしているということは、私が全く“その気” になってないということ。「いろいろ仕掛けてきても無駄だよ〜ん」という現実を、なるべく相手の顔を立てる形で分かってもらうのが、ダンス賞賛拍手攻撃だったのである。

相手を活かして自分が勝つ。日本の古武道精神が、パリのラブホの地下で炸裂したのであった。

・風向きが変わる

そして、それはまさに目の間で功を奏しつつある。私の拍手に女性2人は一瞬軽く驚いた表情を見せたが、すぐにニッコリスマイル。艶かしさ全開の部屋に、乾いた明るい空気が流れ込んできたのだ。風向きが変わり、部屋の雰囲気が中和されつつある!

行けるぞ! あとはDVDのタイミングを見計らって、「素晴らしいダンスを見せてくれてありがとう。そろそろ帰るよ」とか適当に言って強行突破! そこが勝負。その際、女性2人が「こちらこそありがとう。さようなら」と言いやすい空気を作り出しておきたい。ってことは……もっともっと拍手&拍手&賞賛しなければ!!

そんな私の気持ちを煽るかのように、隣の部屋から一定のリズムでベッドを打ちつける『たたかいのドラム』みたいな音が聞こえてくる。……負けてられない! こっちは倍の速さでやってやる! ……いや、3倍じゃい!! 

マラドーナ&エドワルダよ、目に焼き付けよ! 東洋武術の奥深さを! 覚悟せい!! 私は一度深呼吸をすると、心の中で「ほわたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた」と絶叫しながら、全身ローションまみれの状態で狂ったように手を叩き続けた。

[完]

Report:和才雄一郎
イラスト:稲葉翔子
Photo:RocketNews24.
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